魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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10章 魔法少女と王都訪問

302話 魔法少女は計画を練る

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 今日も今日とてもフィリオの家。勝手に失礼いたしてます。

 メンバーは私、百合乃、ツララ、ロア、サキ、ネルの計6人。

 今回の王都旅行はネルとのお別れ会も兼ねると言うことで、3泊4日となった。移動時間は片道約1日、その後の開店準備も含め、フィリオの言う通り休暇は7日。

 商業ギルドには休暇願提出完了!
 全てテレスさんには話なんて通してない!怒られるの覚悟だ!

 こんな時だけオーナー権限フル活用する私を見て、ネルはどう思うだろうか。

「ネル様、王都の学園に行かれるんですか……」
「大丈夫ですよ、たったの6年です。夏と冬の長期休暇には帰ってきますので、安心してください。」
ネルはロアに笑いかける。ロアは少し安心したように息を吐く。

 ロア学園入学事件で色々なことが発覚した。

 まずネルの年齢。12歳だったらしい。びっくり。ちなみにロアは9歳、サキは5歳らしい。

 だいぶ差があるね、これ。

 行く学園は王都の国立の小中高専一貫校(この世界では初等部・中等部・高等部・専門部)で、国王の家名からとって『アングランド国立学園』というところらしい。

 名前、なんか響きがかっこいい。

 で、ネルが通うのは中高。専門はその道のプロになるためのところらしい。騎士なら騎士の、研究職なら研究職の、って感じ。

 全国の領主の子どもや有力貴族の子どもが集う学園で、入学、転入、進学。共に全て難しい。

 まぁ詳しいことは分からないから聞きたいならフィリオに。

「ソラさん?」
「……あ、ごめん。計画ね、計画。」
回想に集中しすぎて現実が見れてなかった。ネルに指摘され、話を始める。

 今日ここに集まった理由、それは旅行の計画を立てるためだ。

「主。」
「はいツララ。」
「バッと行ってバッと帰る!」
「却下ぁ!」
急にボケたツララに盛大に応答し、しゅんとなる。

「一応決まってるから。ツララは特にすることないけど。」
「あたし、役立つ?」
「いや、いるだけでマスコット。」
頭を撫でると、嬉しそうに喉を鳴らす。

「わたしは?」
「んー、置物。」
「酷いっ!」
さすがにボケが多すぎる。私はなんとか軌道修正し、素早く話を始めた。

「まずロアは、テレスさん達に話を伝えてほしい。長期休暇の話と、旅行の話。大丈夫そう?」
「う、うん!頑張る。」

「ネルは……」
「私は転入願を提出したら転入試験があるので、勉強を……」
「うん、頑張って。」
私には戦力外以外の文字がないので、とりあえずファイト!と言う。

 テストとか、一夜漬けのタイプだからね……私。

 1番役に立たない人間がここにいたことに気づき、体育座りの姿勢に移行したところで話を続けた。

「旅行は知っての通り6日。王都2日目以降はネルも参加できるから、そこからはまぁお別れ会。」
「最後、ではないですが、楽しい思い出が作れそうです。あ、ソラさん。もしお仕事で王都にいらっしゃったら、顔を出してくださいね。」
ダメですか?と目を潤ませてあざとポーズと上目遣いが炸裂する。

 かわいいな、ちくしょう!
 なんだこの歳で世渡りの仕方を知ってるだろう。英才教育が過ぎるでしょ。犯罪巻き込まれるよ、一歩間違えたら。

「行くよ。これで行かない選択肢とったら殺されそう。」
「誰にですか。私、そんな酷いことしませんよ。」
頬を少し膨らませ、ブーブーと文句を言う。

「お嬢様。そろそろ。」
すると、お手伝いさんがやってきてそう一言。ネルは振り返り、軽く息を吐いて髪をポニテに縛った。

「作戦会議は続けていてください。私は、皆さんがお別れ会をできるように勉強を頑張りますから。」
「いいのか悪いのか分からない言葉になってるけど頑張って。」

「ネル様、頑張ってください!」
「頑張れ。あたしも手伝うか?」
「がんばれー!」

「みなさん、ありがとうございます。ツララも、ありがたいですけど、勉強は自分でしなければ意味は無いですから。お気持ちだけ。」
軽く手を振って、踵を返した。優雅に小走りし、家の中に戻っていった。

「昔より、何倍も大人になったなぁ。」
昔、遠足に行った時走ってこけていたのがなんだったのかと思えるほどだ。

「ソラお姉ちゃんがネル様の世界を広げたんですよ。ネル様はソラお姉ちゃんと出会ってから、私みたいな一般人とよく会話をしますし、困っていることを聞いたりもしています。ネル様を大人にしたのは、ソラお姉ちゃんじゃないですか?」
「……そう言われてみると、堅苦しいだけじゃなくなったような?」

「それは酷いと思います。」
なんて言っていると、本題からどんどん離れていく。

 計画立てると言っても、私王都なんて知らないんだよね。

「とりあえず名所を現地で聞いて観光!ハプニングも思い出のひとつだからね。そこで頑張ってふたりをくっつける。できるだけ2人きりに。」
「おとうさんと一緒にいちゃだめなの?」
軽く話してると、サキが首を傾げた。

「そうじゃないけど……いい雰囲気だったらそっと離れるくらいで。」
「わかった!」
「空空、具体的にはどうくっつけるんです?」

「知らないよ。恋愛経験ゼロの私に聞く質問じゃない。」
「わたしにだけ冷たくないです?!」
いつも問答が始まる。

 なんでだろう。どうして百合乃と話すとこうもネタになるんだろう。私は不思議でたまらない、マル

 思考も完全にネタに走ってる。どうやら私は体も脳も病気なようだ。

「旅行のこと伝えてくれたら、私がテレスさんにプロポーズするよう助言というか後押しするよ。その場合ロア、かるーく関係に触れてみて?その返答によって言葉変えるから。気があるなら、私の言葉で動くはず。多分。」
「すごい自信ですね。」

「ソラお姉ちゃんは、1回お父さんに説教してますから。それであのお店ができたんです。」
「お姉ちゃんかっこよかったぁー!」

「わたしも、あの時の空の凛々しい姿には震え……」
「あ?」
「ぃえ。」
百合乃がそっぽを向いて縮こまる。そんなにこの恐喝が怖いのかな、と正直思う。

「あの、空……?」
「ん?どうしたの?」
「ここに来る必要ってありましたか?」

「……ほら、ネルのこと。」
「ネルちゃん、ぶっちゃけあんまり必要なかったですよね?」

「心のケアを……ね。」
「そんな余裕があるとは思えませんでしたけど。」
百合乃の連続ブローが炸裂!私の腹部にクリーンヒット。そのまま後方に吹き飛び、KO。

 あれ?なんで私、試験勉強で忙しいネルを呼んでここに来たんだろう。少しでも勉強させた方がいいのに。

 あれ?なんでだろう。なんか私が頭悪い人に見えてきた……

「落ち込まないで、ソラお姉ちゃん。きっとネル様も分かってくれてます。人の優しさが、1番心に効く薬ですら。」
ロアの優しさが沁みる。思わず抱きしめた。

 なんで優しいんだろう。
 そうだ、私、ロアと結婚する。

 なんて幻想を心で呟く。

「私が不安でいっぱいな時、ソラお姉ちゃんが助けてくれたことがありました。私は、とっても嬉しくて、ありがとうって言う気持ちで一杯で……」

「あたしも、そう……だと思う。反抗するあたしに、優しく手を差し伸べてくれた。奴隷なのに、逃がしてくれた。」

「わたしも、突然現れたわたしに……」
「百合乃には優しくしたときなかったと思うけど。」
百合乃がとうとう口から血を流した。言葉の刃が百合乃の胸に貫通しているのを幻視し、グハッと手を伸ばす。

 まぁ幻覚だけど。

「いや、ごめんって。血拭いて。」
「あ、はい。」
ハンカチを取り出し、ポイっと投げる。百合乃は器用にキャッチし、血をふきふき。

「……まぁ、互いに頑張ろう。ふぁいおー。」
「ふぁいおー!」

「主、なにそれ。」
「ふぁいお、ふぁいお~。お姉ちゃんも。」
「これ、なんですか、ソラお姉ちゃん?」
こうして今、計画の全貌が見えた。(?)

———————————————————————

 幻肢痛のことですけど、描写はあまりしません。暗い話になりがちになる可能性があるので、幻肢痛や腕の喪失、魔壊病は設定としてあったなぁ、という程度に覚えといてくれればいいです。

 幻肢痛は精神描写で、不安に陥った時とか、たまに入れ込むくらいにするつもりなのですが、まぁその辺はなんとなくになります。

 coverさん、本日とても気を病んでおります。結構やばいやつです。
 文脈に現れる可能性もあるので、その辺も含めてこれからもよろしくお願いします。

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