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10章 魔法少女と王都訪問
299話 魔法少女は知ってしまう
しおりを挟む百合乃がフィリオに啖呵を切ってからすぐのこと。私は最後の1つに顔を出そうと歩を進めていた。
「百合乃って、あんな自主性あったっけ。」
「何気にひどいこと言わないでください。傷つきますよ、泣きますよ?」
「分かった分かった、だからマジ泣きしようとしないで?」
軽く鼻をすすり、目に軽く力を集中させる。小さく欠伸をし、目が湿り始めたところで待ったをかける。
即座に泣く演技できるとか、将来女優になった方がいいんじゃない?まぁこの世界にそんな職業ないけど。
まず見る人がいないし、とかそんなことを思ってるうちに、木々に囲まれた舗装路を抜け、市街地にやってきていた。
「確か空のお店でしたよね?」
「東京にありそうな頭おかしい色彩のカフェ。そんな感じ。」
「どんな感じです、それ。」
「静岡にそんなもんないんだよ。」
全静岡県民に総ツッコミされそうなセリフで一蹴する。
「静岡と山梨、富士山はどっちのものとかそんな話聞きますけど、空はどう思います?」
「突然どうしたの。」
ちょっと眉を顰めて百合乃を見る。興味本位ですって顔をしてたので、減るものでもないし答える。
「どうでもいい、としか言いようがない。」
「静岡県民の誇りは!?」
「そんな殊勝なもの幼稚園の頃に川で捨ててきたよ。」
心の中で小さな私が「県民の誇り」と書かれた球体を川に沈める姿が現れる。やってやったぜみたいな表情がいかにも私っぽい。
「明治のき○この山とた○のこの里戦争とかも、別に両方美味しいんだから食べ分ければ良くないって思うし。」
「全てを一刀両断するようなこと言わないでください。ちなみに私はきのこ……」
「聞いてない。」
話がずれたので、この話は切り捨てる。百合乃の言葉を添えて。
「ぶっちゃけ山梨。アニメの影響。」
「えぇ……」
百合乃がジト目で私を見つめた。仕方ないさ、私の主観ではそうと言っているのだから。
そもそも富士山なんて見に行ったことないし。見えるは見えるけど、わざわざ行くほどでもないかなって。
そんなジャパニーズトークに花を咲かせていたら、一際目立つお店があった。1階はカフェ、2階は従業員の部屋。
「空、異世界になんてもの作ってるんです?」
「知らない、私は知らない。勝手にやられた。」
「……そういうことにしときます。」
入り口から入ると利用者の邪魔になりかねないので、従業員専用の扉を使って厨房に入る。
「お久しぶりでーす……」
「お邪魔します。」
小声で挨拶し、辺りをキョロキョロと見回す。見覚えのある調理道具と匂い。間違いなく私の店。
「……オーナー。どうされました。」
「うおっ!……レインか……」
「誰です?」
「後で紹介する。1人1人とかめんどくさいし。」
ネトラーさんの様子は見えないので、レインから聞くことにする。
この店で一番の大人って言ったら、レインだしね。
オーナー(笑)である私は、乾いた笑いをこぼす。
「店長も、母さんも、心配していました。オーナーは、どんな御用が。」
抑揚はないけど、しっかり言うべきことは言う。コミュ障でもない。本物のクールだ。
クラスの陰の人気者って感じだね。
「私がいなかった間のことを聞きたくて。」
「そうですか。では、見たほうが早いかと。」
そう言って指を差す。
見たほうが早い……?え、何かそんな重大なことが起こって?テレスさんなら大抵のことは……お酒が入ってなければ、なんとかなるはずなのに。
一抹の不安が拭いきれない中、私はその方向を見る。
「…………………………………大事件、発生。」
「え?何がです!?仲良し夫婦にしか見えませんけど!?」
百合乃が困惑した顔で叫ぶ。もちろん店内の、しかも厨房なのでボリューム抑えめだ。
目の前で起こってる状況。それは、百合乃が凄く分かりやすく伝えてくれた。
指差す先にあったもの。それはテレスさんとネトラーさん。
そして百合乃の言葉と照らし合わせて出てくる答えとは……
「あの2人、デキてる?」
「母の再婚も、近いかもしれませんね。」
今、1人ホールで接客をしているティリーが「はへ?」って感じの顔をしてるのに、気づいた者は誰もいなかった。
「え?はい?どういうことです?」
「百合乃。簡単なこと。あそこにいるのはネトラーさん。この店の従業員。バツイチ子持ち、その子供。」
ネトラーさんからレインへ、指を動かす。
「で、あそこにいるのがロアの父親。奥さんは亡くなってる。」
「あー、はい……そういうことですか。」
微笑ましそうに2人を見る。仲睦まじく、身体を寄せて食材を切っていた。
これは……ロアとネルを交えて家族会議をしよう。もちろん2人は除いて。
「レイン、どのくらい進んでる?」
「70パー、くらいかと。」
「もう一押しか……ロアとサキはいいとして、レインはどう思ってるわけ?」
2人の再婚についてどう思っているか、ちゃんと聞いてみる。もちろん、聞こえないように細心の注意を払って。
2人の押しがあれば、いける!確実に。
テレスさんはそろそろ幸せになっていい頃だし、2人にも母親は必要だと思う。
「母は、見知らぬ土地でも不安にさせまいと、からぶることもあるけど頑張っています。幸せになれるなら。」
「うん、オッケー。じゃあロアとサキの兄になる覚悟をしといて。」
「あ……はい。」
「これ、星テーブルにお願いしますー!」
「あ、はい。店長。」
テレスさんに呼ばれたレインはホールに戻っていく。
「オーナー。」
「テレスさんまでその呼び名はやめて?せめて空か妥協してさん付け。」
「ソラさん、戻っていらしたんですね。」
「心配してなかったみたいだね。まぁ、お酒の呑みすぎはやめてね。」
「あはは……同じ轍は踏まないようにします。」
あの頃を回想したのか、少し申し訳なさそうに呟く。
「ソラちゃん、久しぶりね。」
「久しぶり、ネトラーさん。元気?」
「元気よ、ソラちゃんのおかげね。」
含みのあるような言い方で私にぱちこんとウインクを決めてきた。
わー、すごい。これが溢れる母性。
テレスさん、ナイス。
心の私はテレスさんにサムズアップし、ロアとネルへの説明文でも考えようかと専用出入り口に向かう。
「オー…ソラさん、もう少し居てもらっても……」
「別にいいよ。邪魔しちゃ悪いしね。私も私でやることあるから。」
後ろを振り返ってネトラーさんにウインクする。私は下手くそなので、片目半目だ。
「あぁ………ふふ。私も頑張るわ。」
両腕を胸の前に持ってきてキュッと拳を握るネトラーさん。
あ、気づいた。……大丈夫かな。
よし、私達の方でも頑張ってくっつけよう!
「え、ソラさん?ネトラーさん?」
「あ。言うの忘れてたけどこの子私の友達。今後ともよろしく。」
「空、人の挨拶をとらないでください。」
私達が何言ってるか分からなさそうにするも、「よろしくお願いします」としっかり挨拶はした。
その辺、プロだね。
「じゃあ、お互い。」
「えぇ。」
「………?」
三者三様。私は2人のその姿を一瞥し、微笑む。
いつもならリア充は共に地獄に沈めと思う私も、2人の声は応援するよ。
え?身内に甘いんじゃないかって?そりゃ身内だし当たり前じゃん。
あと、2人の恋愛とその辺のリア充とは格が違う。ああいうちょっと痛寒いやつじゃなくて、ほんわかするタイプ。
「空、あんまり人のそういうデリケートな部分には触れないほうが……」
外に出ると、百合乃がそう耳打ちしてくる。
「大丈夫、私がやると言ったら不可能などない!」
「どこから出るんです?その自信。」
「百合乃には言われたくない。」
決め台詞の途中で止められた。なんか冷めてきたので常套句で言い返す。
「逆に私に嘘つかせたらすごいよ。私がイエスと言ったらそれはイエス!今こそ、称号神殺したる所以を見せつける時っ!」
「なんかテンション高くないですか!?」
そんなことで、知り合いの初めてのそういうのにテンションが上がり切った私を止められるはずもなく、百合乃の叫びは誰にも聞かれることなく消えていった。
あれ?なんか空高くに凶器を握った女性が……
———————————————————————
一言言わせてください。今回なんの話ですか?序盤から変なこと口走って、話がめちゃくちゃになってます。
まぁそんなことは置いといて、今期やっている某きらら作品のアニメにハマってます。
全話終わってから一気見したかったんですけど、耐えきれずに観てみたらハマりましたねこれが。
私、コミュ障拗らせた超が付く陰キャなんです。知らなかったでしょう。(みんな知ってる)
なので共感できる部分とかあったり、元の作品の良さとかも合間って……
あれ?私って異世界もの書いてるのに割と日常系が好き?
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