魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

292話 魔法少女は質問する

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「キュー!?」
「キュッ!」
キューは女性の腕の中で気持ちよさそうに鳴き、女性はこちらを向く。

「聖獣様になんという名を。」
「いや、それは知らないって。勝手に名前決まってたんだから。」

 そこは否定したい。だって無実なんだもの。

 心でみつをを読み、精神統一をする。

「良いとしましょうか。それでは、私めがここに参じた理由を話しましょう。我が神がここに顕現することは可能ではないので、代わりに私が代理を務めさせていただいております。」
それはそれは懇切丁寧に、可愛いゆるキャラ片手に語る。全くもって緊張感がない。

 キューがいるだけでシリアス半減だね、これ。

 心で笑う。

「えっ、つまり……なんです?神が神で、キューちゃんが聖獣で、性獣?」
「………消しますよ?」
「ひぃっ!すみません!」
話を遮った&キューを性獣呼びしたため、大人しかった女性は一気にゴミを見る目をして更に威圧を飛ばす。

 この娘、できるっ!

 それでも気は落ち着かないようで、百合乃の口を縛る。「むー!むー!」と叫んでいたけど、もう1度心ばかりのガンを飛ばす。

「仕切り直しましょう。我が神が礼を述べるなど、代理だとしても許されてはなりません。ですので、代替手段を提案します。いいですね?」
ノーとは言わせぬ謎の圧力があった。絶対重力操作できるよね?ってレベルの威圧だ。

 重力操作って、空気自体にも圧力を加えて重苦しくできたりするけど、まさにそれ。
 この人、絶対怒らせたくない。

「あ、はい。」
「よかったです。」
「ぅー!」
「あ?」
この短い会話で、完全に主導権は女性が握った。百合乃に関しては喋ることすら許されない状況。涙目だ。

「できる限りの質問に答えましょう。」
「え、いいの?」

「我が神はこの世界に直接干渉することは難しいのです。逆に、間接的にはどうとでもなるということですが。その気になり、お力を揮えば四神など簡単に転がせますが……いかんせん、お気持ちはそうともいかないようです。」
何かペラペラと喋りだす。

「そんな喋っていいの?結構弱点なんじゃ……」
「あ゛?」
「ュ……」
キューが縮こまる。女性は慌ててキューの頭をなでなでして機嫌を取り、もう1度「あ?」と少し抑えめで恐喝する。

 え……なにこれ。威圧的には余裕で龍神超えてるけど、言い直すのは……ねぇ。なんか萎える。

 それでも普通に怖いものは怖いので大人しくしてる。

「我が神はその程度で弱点になると思われる方ではない。逆に、勝てると思うなら挑んでみればいい。同じ舞台に立つことなく、精魂尽き果てるだろうと予測します。」
ギラギラと目に炎を宿し、食い気味に語る。

「我が神に不可能はなし!この程度知られたところでハンデになるとでもお思いで?その浅はかな考え、今から矯正してあげましょう。我が神の素晴らしさは……」
「分かった、分かったって!謝る!悪かったって!」
長くなりそうだから切る。ほんとに、こういう人には喋らせちゃダメだ。

「質問、質問!…………………よし。創滅神……」
「あ?」
「様って、どこにいるの?」
半ば言わされた感高めだけど、仕方ない。私の命がかかってる。

「無答です。」
「じゃあ創滅神の能力について……」
「無答です。」

「何が答えられるの!」
質問に答えてくれると言いながら、まともに返してくれない。一体何しにきたんだろう。

 え、自分からはあんなペラペラ喋るくせして、こっちが聞くと無答一択ってなに?
 そもそも言い切る前だったよね!?

 文句を言いたいけど、何が問題でも?と言いたげな表情の彼女にそんなことを言えるはずもない。

「質問は以上でしょうか?」
「何も答えてもらってないけど?」
「そうですか。早くしてください。」
なんか段々雑になってきた。

「じゃあ……最初に現れた私をぶん殴ったやつ。私未だにちょっと根に持ってるからね、あれ。」
ムカつく男の顔を思い出し、ちょっとイライラしてくる。握る拳が1つ足りず、はぁ、と脱力した。

「あぁ。ウェリーのことですか。あれは少し地獄お仕置きを与えている最中です。あなたのことは、くれぐれも丁重にと釘を刺しておいたのですが、勝手に行動してくれて。我が神は寛容なお方なため、笑って許してくださいましたが、私はそうともいきませんから。」
ふふふ、とあまりにも恐ろしい笑みを浮かべる。流石の私も、同情の念を禁じ得ない。

 お仕置きとか1回死んだ方がマシなくらいやばそうなんだけど……

「ちなみにそのお仕置きとは……?」
「千切って捏ねてかき混ぜて、潰されて焼かれ、食われ溶かされ死にゆく夢を1000回ほど。もちろん魔法は使用できませんし、痛覚はあります。」

「……おぉ……う、まぁ、ほどほどに?」
なかなかにえげつないことをしていた。

「何か付け加えましょうか?そのくらいなら手間でもありませんし。」
「い、いや……まぁね。」
「私の顔に泥を塗ったあげく、我が神にまで迷惑をかけた。あの程度当然でしょう。追加してくださいますよね?」

「……はい。」
心の中でごめんと一言謝り、ゆっくり口を開く。

「時折知覚能力倍増させて、ゆっくり痛みを味わってもらう……とか?」
「………いいですね、採用しましょう。」
胸ポケットから手帳を取り出し、魔法かなんかで文字を書いていく。

 この人だけは、絶対敵に回さないようにしよう。うん、そうしよう。

「次の質問はありますか?できれば早く終わらせてほしいですね。お仕置き機能を強化させなければいけないので。」
「よくこの人に逆らえたな」と逆にウェリーという人?神?まぁ使いさんに感心する。

「とりあえず……私が戻されるのっていつぐらい?時間軸的に。」
「そのままです。過去で1ヶ月過ごしたなら、現在でも1ヶ月経った状態で送り返します。その方が、世界への影響が少ないので。時間移動自体、抜け道を使ったものなので。最低限に抑えたいわけです。」
淡々と説明する。普通に分かりやすかった。

「じゃあ……その抜けた間は何してたって聞かれると思うから、どういう言い訳したらいいと思う?」

「私は相談係ではないのですが。まぁ、良いでしょう。普通に、過去に転移していたと言えば良いのでは?しかし、神に関連する話は禁句です。神殺しなど、聞く人が聞けば大罪。もし少しでも神殺しを語ろうものなら、あなたの命はその瞬間潰えるでしょう。」
「怖っ!」
この人が言えばほんとに聞こえるので、余計に怖い。私は右手で左肩押さえ、ブルっと身震いをする。

「終わりですか?」
「まぁ、はい。」
軽く頷く。縛られた百合乃は解放され、「ぷはー」と声を上げる。声抑えめなところ、威圧効果は有効なようだ。

 私も使ってみようかな。……その場合、どこがとは言わないけど百合乃、震えそうだね。やめとこうかな?

 一瞬で考えがまとまる。慣れたものだ。

「それでは、お返しいたします。場所はあなたを迎えたあの丘の中腹。あなた方2人、まとめて返しますがよろしいでしょうか?」

「うん、ありがとう。百合乃、こっち来て。」
「ん?なんです?帰るんです?やった!」
「はいはい、喜ぶのは後……というか、百合乃はここも向こうもただの異世界、というかこっちの方が故郷でしょ。」

「まぁーまぁー、細かいことは置いておいて。」
百合乃が腕にギュッと抱きついてくる。若干、というよりだいぶうざい。主に腕に当たるソレが

 知ってる?胸って、ただの脂肪の塊なんだよ?人は、なんでそんなに脂肪の塊が好きなんだろうね。同じ脂肪の塊でもデブは嫌いなのに。

 ここは人の謎ポイントだ。

 太ももとか、胸とか。何故人は脂肪がついた方がいいのだろう。他の部分に脂肪がつくと、嫌われるのに。

「我が神の願いを叶えてくれたこと、私自身、個人的にお礼を申し上げます。それでは、良い旅を。」
くるっと踵を返した。キューも、バイバーイというように、小さな手を振った。

 色々あったけど、案外短かったような気がするなぁ、過去の世界。
 今度あの古本屋行って過去についての文献とか見に行こうかな。

 あー、その前に百合乃かぁ。百合乃の説明と冒険者登録。

 そんなことを考えていると、本当に慣れきった白い光。そして消える思考。
 どうしてこういう時は絶対、意識消されるんだろうと思う。

 今度は、安心して眠りについた。

———————————————————————

 過去編完結———
 と言いたいですが、まだエピローグ的な部分が残っているので、そこを消化します。

 全く関係ないですけど、Ama○onさんのプライ○ビデオで、11月4日から某きらら系キャンプ漫画の映画、無料配信されてましたね。
 色々あって観に行けてなかったのですが、こんな早く見られるとは……

 本編の話しろ、ですか?
 ア、ハイ。

 次章は戦いとか少なめの楽しい章です。百合乃はまぁ……少し置いておいて、久々のネルやロア、サキやテレスさんなど、カフェメンバーの話も増やすつもりです。

 言っていいか知りませんけど、(おい作者、しっかりしろ)次は王都編です。

 こんな頭も名前もイカれた私ですが、今後もどうぞよしなに。
 それではまた。まぁ明日ですけど。
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