魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

288話 魔法少女は真意を知る

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 顔を驚愕に染める龍神。それに追い打ちをかけるように、龍神の皮肉を皮肉り返して言う。

 これはそもそも確信なんだよね。
 人が神を殺せる時点でまず気付かなきゃいけない。

「ねぇ龍神。あなた達は本当の神じゃない。そうだよね?」
「……何のことかわからんな。」
驚愕の表情をすぐに取り繕い、惚けてみせる。

「まず創滅神という、創造と破滅っていう別次元の神がいる中、ただの種族としての神がいる。まぁそこはいいけど、その感じだと相当な差があるみたいだね、2つには。」
龍神は無表情。私は拙い国語力を頑張って捻り出し、なんとか頑張る。

「私、あなたの神らしいところ見たことないんだよね。例えば、私の重力操作みたいに、直接世界に干渉する真似はできない。脈は別としてね。違う?」
「何を言ってるかさっぱりだ。」
逃げはしない。龍神も一応の覚悟は決めてるはずだからかな、と想像する。

「それができるのは本物の神たる創滅神だけで、この世界の一員であるあなた達にはできずに、逆に私は別世界の、それプラス創滅神の力を持ってるからできる、と。」
「………………」

「んー、私達のせいで龍が滅ぶとかいう設定にしてるけど、違うよね。ただ創滅神の遊戯に付き合いきれなくなったんじゃないの?そもそも人のせいで絶滅とか、龍弱すぎだろって話じゃん。」
文字にしたら「w」が沢山つきそうな感じで笑う。手でも叩きそうになるけど、「あ」と左手がないことに気づく。

 ……気にしないように、しようかな。
 うん、オッケーオッケー。

「あー、分かんなくなってきた。まぁ簡単に言うと、あなた達は本当の神じゃなくて、種族のリーダー的な立ち位置。だから世界そのものには、世界のルールに沿って魔法を介してじゃないと触れられない。……ってことは私、実力不足だけど才能的には神になれるんじゃない?」
「……神とは、そこまで簡単なものじゃない。」
龍神が呟く。

 これって肯定?肯定でいいよね?うん、いい。

 1人2役、自問自答。勝手に肯定と捉える。文句を言われても、返事をしない龍神(笑)が悪い。

「別に新世界の神とか目指してないよ。」
「なんの話だ?」
「なんでもない……」
余裕ができたせいで、なんかノリが軽くなる。案外私も百合乃のこと言えないかもしれない。

 あ、痛いのは普通に痛いよ?普通に腹パンまだ響いてるし。

「神というのは全てを創り出した者のこと。お前の言う通り、四神と言われる神は全員神ではない。神の名を借りた、種族間の頂点であり、創滅神の遊戯に取り込まれないようにするためのストッパーでもある。」

「急によく喋るね。」
「お前に意志を継いで欲しい、そう言ったら継いでくれるか?」

「え、嫌。」
普通に首を横に振る。

「四神が死ねば、その種族は遊戯の駒とされ、実質的な死を意味する。今、魔神は長い間寝こけている……いや、正しくはいた期間。だから、魔物を操って戦争をさせた。」
「ん?それじゃあどうしてそっちは私を?」

「常に危険と隣り合わせな状況で、辺りをチョロチョロと動く虫がいたら潰すのは当然のことだと思うが。」
「いや、私は虫かっ!」
鋭いツッコミを決め込む。今は死も感じないし、と言うか頑張れば倒せる自信が、あるようで……ある。うん、そういうことにしておこう。

「そう思ったのだが、中身は化け物だったみたいだな。」
「どっちにしろ人ですらないんだけど?」

「本当の敵は創滅神だ。転生者を呼ぶ理由は特異者を呼んだ方が盤上が面白くなるからであり、今お前にこうして殺されそうになっているのは、禁忌を起こしたからではなく、こうも堂々と動く反乱分子は邪魔になるからだ。」
「じゃあなんで動いたの?」

「跳ね返せる自信はあった。創滅神自身が姿を見せることはない。到底のことがない限り、危うくはならないだろうと高を括っていた。」
ため息を吐く龍神。

 ってことは、龍神はそこまで悪い奴じゃ……いや、悪い奴だ。完全にそうだ。
 私を殺そうとしたのに、されないなんて思わない方がいい!

「もうすぐお前は殺しに来るだろう?当然足掻かせてはもらうが、最も神に近い才能を持つお前に聞いてほしい。」
「頼みは聞かないけど?」
「聞くだけでいい。聞いてくれ。」
種族のリーダーらしく、強い口調と覇気で口を開く。

「諸悪の根源である創滅神を滅してほしい。そのためには世界に触れ、四神の技術を受け継ぎ、なおも壁を越えなければならない。お前には、それができる。龍神の技術を、最後に叩き込もう。」
その言葉を出した途端、龍神は更に若く変化する。高校生程度の青年くらい。

「えぇ!聞くだけでいいって言ってたじゃん!」
神速で突進してくる。私はいつの間にか手に入れていたスキル、重力魔法によって十全に使えるようになった重力操作をフル活用し、抑え込む。

「世界を越えろ。神を越えろ。今この瞬間、神に勝利し元の時空に戻れ!その手土産は、龍神の技術にするといい。」
魔法陣が浮かぶ。よく見ると、私が知る冒険者さんの使う魔法陣や式とは違い、どこか芸術性を感じるものだった。

「龍法陣。脈に触れられる龍にのみ扱える、特殊な技法。」
いつの間にか私の四方を囲む。

「重力変換!」
重力操作の1つを叫ぶ。私に向く攻撃は、エネルギー方向を変えて真逆に飛ぶ。銀を纏った球だった。

「脈を通し、その上に生み出す。触れずとも意識で生み出せる。」
上下に突然の現れた魔法陣……じゃなくて龍法陣。銀色の炎が現れ、圧力操作で攻撃を通さないように見えない結界を張る。

 マジで授業してきてる……というか、私に使えるの?その龍法陣とやら。

 などと考えていると、今度は物理の殴りがやってくる。

「うおっ!ちょ、マジで何?」
「脈の力を直接受け、肉体強化をする。龍は、その空間にいるだけで最強となり得る!翼は吸収口だ。ローブは代替となるだろう。」
加速される拳は、重力を別方向に向けて受け流す。左腕がないからめっちゃむずい。

「最後だ。龍化。」
ブワッと魔力光が瞬く。銀が内で荒れ狂うような、制御できなきゃ危なそうな感じがする。

「龍になるわけではない。安心しろ。」
「そこは今どうでもいい!」
余裕だったはずの時間は何処へやら。防戦一方で泣き言を吐きたくなる。

 重力操作もできるとは言っても、それなりに集中は必要だからね?
 だからいちいち喋らないで!?

 そんな願いは無視され、どんどんと解説を始める。

「小規模な魔力暴走を起こさせ、エネルギー生む。上手く制御すれば、魔力消耗のみでお前のステータスには影響はない。」
「覚醒の危険のない下位互換的な?っていうか早くして。覚醒の効果どこまで続くか分かんないから!」
ドンッ!と、衝撃を放つ。軽く受け流すと、バックステップで退いてくる。

「後は霊神と魔神だ。霊神からは精神を、魔神からは魔法を。龍神の身1つで奴が死ぬならば、死んだとしても悔いはない。できることなら、龍も気にかけてくれればありがたい。」

「それは断るよ!」
ラノスを引き抜き、パァァンッ!といつものを送る。龍神を重力で固定し、神速で近づく。

「燃えろ。」
銀炎が3つ重なり、私を焦がそうとする。これも圧力を生んで回避し、ラノスを収納する。

 結構片手も慣れてきた。幻肢痛とかって感じるって聞くけど、特にそんな兆候もないし。
 これって戦闘の興奮のせいとかじゃないよね?

「どうした?殺されたいか?」
「どの状況で言ってんの。そもそも、今同じくらいの見た目だから怖くない。」
取り出したのは、黒塗りのとても長い銃。重いけど、重力で補正をかけて立て直す。

 対物ライフルである、トロイ。

 銃弾を1つ創り出し、そこに圧力を纏わせる。触れればその対象自体が勝手に分離してくれるというチートだ。
 銃弾自体を重力操作で重くし、重力変換で下へのエネルギーを射出エネルギーに変換させる。

「大炎陣。」
床に巨大龍法陣が現れ、超密度の炎が生まれる。軽く圧力が覆う。

 なんか……不安。とりあえずなんか魔法を……って、魔力少ない。魔力譲渡切れたまま?いや、この炎が遮断してるのかな?

 とりあえず……キューは無事だ。奥に盾と一緒にいると思う。魔導法の指輪が感じる。

「結局殺そうとするんだね。最後まで。」
「できればこの手で殺したいからな。当然だ。」

「もし勝っても、あんなヨボヨボのジジイになるまで待たなきゃいけないんじゃない?」
「フッ。その前に、この世界の生物がこの世界のルールを逸脱はできない。」

「なら意味ないじゃん。」
「それでも、ということだ。」
「なにそれ。」

「龍は、良かれ悪かれ欲深いんだ。」
炎に包まれた空間で、トロイの銃口がそっと額に当てられる。

「じゃあ、あの世で。」
「いずれ這い上がってやろう。その時は、お前と共に創滅神を滅ぼそう。」

「そんな歳まで生きとらんっての。」
友達同士で喋るように、敵同士語り合う。

「……………」
もう言葉はない。引き金を引くと、魔力がスゥッと入っていく感じがする。何か、膨大な経験も一緒に。

 龍神の最後の贈り物、か。はぁ。厄介なものもらっちゃったよほんと。
 限界値とか大丈夫?ステの限界とかあるんじゃない?

 気にしながらも魔力を込める。銀色の魔力、金色の魔力、そして瑠璃色の魔力。3つが混じることなく交わり、バアァァァァンッ!と轟音が鳴る。グチャリと肉が潰れる。

 銃身を脇に挟み、銃弾を詰める。少し下、胸あたりにそのままノータイムで射撃。あまりの威力に銃身が上がりそうになるも、重力で支える。

 それも同じく、肉を潰す。

 残るは、貫通した銃弾が床をも穿ち消え去って、肉塊が倒れ、その床を血と臓物で汚した音だけ。

 その後には、静寂が訪れた。

———————————————————————

 はい、言いたいことは分かります。なんで完全に悪役だった龍神を善人?善神?にしたのかですね。

 そのまま倒せばよかったじゃんって?

 執筆中、私はこう思いました。「あれ?創滅神と出会った後、どうやってオチつけよう」と。

 創滅神と出会う、というのは初期段階からの目標です。で、もちろん出会ったらこの物語は終わります。
 で?って感じです。ここまで続けといて、最後は会って終わりとか馬鹿じゃねぇかとキレられてしまいます。

 ではどうオチを付けようか。そして思いついたのは戦闘。

 ネタとネタと勢いとノリで詰め合わせたこの話ですので忘れているかもしれませんが、この作品は一応、一応異世界転生チートファンタジーです。

 ですので、やっぱり終わりは激しい戦闘!

 でも、ラスボスは悪でありたい……ということで、龍神はいい神にしました。そうすれば、今までの攻撃は甘かったという考えもできます。
 死闘をとっておくことができました。

 よし、そろそろいい感じに文字数を稼げましたね。

 つまり!創滅神と戦うため、龍神は悪であってはいけなかったのです!戦う理由が無くなる前に、なんとか引き止めたのです!

 はぁ。次は百合乃回です。向こうも終わります。

 その次は色々ステ確認とかあります。空、ファイトー。百合乃、ファイトー。
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