魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

273話 魔法少女は上に参ります

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「腹拵えも終わったし、そろそろ行こうかな。」
洗い終わった食器たちを仕舞いながらそう言うと、百合乃がおずおずと手を挙げる。

「今、夜ですけど行くんです?」
「まぁこういうのはさっさと行っておくのがいいかなって。ていうかさっき寝たせいで寝れない気がするし。」
百合乃が「ほへぇ」と適当に返してきて、なんかうざかったけど、それを堪えてバイクを取り出す。

「んじゃ、多分今夜中には目的地の直前まで行けると思うから。ゆっくりめに行こうか。」
「了解です。」
言葉を聞いてから魔力を流し、アクセルを踏む。魔力循環が開始され、バイクはみるみるうちに加速して道を走っていく。

 このまま直線でちょっと曲がる。その先直線でまた曲がって、少し戻って向きを変えて後ろへ……
 いや、どこのなぞのばしょバグよ。ポ○モンじゃないんだからこんな手順いらなくない?

 ……待って。まさか、龍神いるところってそんなバグ起こさないとダメな場所にいるの?
 目の前で存在感を放っている何かでもいるのかな。

「ちょっとバグ起こすけど、ついてきてね。」
「なんです、いきなり。バグとか急に怖いこと言わないでくださいよ。」
ジッと私を見つめる百合乃。ただやりたいだけにしか見えない。

 龍神ってくらいなんだから〈神山〉みたいな感じの山頂が雲で隠れてそうな山とか、天空にいるのかな。
 ……性格悪い可能性に賭けて宇宙空間とか、逆に地中とか?
 いやいや、情報によると空だから問題はない。ない……はず?

 心配になりつつも、やらないことには始まらないのでとにかくアクセルを踏む。

「ひゃっほー!あ、魔物です。今回はわたしが…………っと!」
ウキウキらんらんから一転、冷静にサーベルを引き抜いて飛翔刃を喰らわせた。その瞬間、突然魔物の死体がこっちに吹っ飛んできた。

「わぶっ、なっ!」
なんとかステッキに収納でき、今の不可解な動きに眉を顰める。

「ふっふっふぅ~、どうです?わたしの最高の機転を。」
「ちょっと何言ってるか分からない。」
「漫才師じゃないんですから!」

「いや、ほんと分かんない。」
「衝波です、しょ・う・は!understand?」
「おぅ、オーケーオーケー。」
適当な返しをして、目の前の運転に気を移す。といっても、特にすることはない。

 ま、技の応用が効けるようになったってのはいい情報だね。
 重畳重畳。

「空空、この先はどうなるんです?」
「どうとは?」

「どの道を行くかなと。」
「だからバグ技やって上。」

「だからそのバグ技を教えて欲しいんです!」
久しぶりのボケにウキウキしながら会話を進め、バイクの車体を横に傾ける。

 万能感知があるっていいね。あの森の中ではストレスしかなかったから。
 魔力が見えるって、素敵。

 脳内の私が、少女漫画の女の子のようにキラッキラした目で手を組み、空を見上げている。

「そこ上から鳥が降ってきます。横通った方がいいと思いますよ?」
「えっ?」
そういうより早く、百合乃が無理矢理車体を「えいやっ!」と傾けてくる。そのまま危うく転倒事故が起こりかけたけど、なんとか私の対応能力で処理した。

「ちょっ、危ないって!操縦はしちゃダメって前言ったよね。」
「だって、魔物が降って来るほうが危険じゃないです?」

「……まって。一応聞くけど、あの試練で何か変わったことは?」
思わぬチート能力に、疑問を持つ。ほんとは結論なんてとっくに出てるけど、そのチートは看過できない。

 百合乃の特殊能力筆頭、軌道予測。あらゆる『もの』の軌道、動きの道。それを大雑把に予測することが可能であり、それを頼りに進んだ道も多い。
 もしそれが、進化してるとしたら……

「……ステータス見てみます。」
空中に指先を添え、視線を虚空に向ける。その3秒後。

「はぇ?」
「えっ?マジ、マジで!?」
その反応で、私の仮説がほとんど立証された気がして声を上げる。

 運転中?気にしない気にしない!そんなことより、今は百合乃のスキルのことだ。

 チラッとステの共有をして確認したところ、そこにはいつも通りのスキル欄とスキルが並び、軌道予測が跡形もなく別の名に変化していた。

「仮定、未来眼……」
その言葉に頬がひくつき、一応……と右目に鑑定眼に染めて見つめる。

 仮定未来眼
自身の眼に『仮定』を付与し、現在の状態での未来を仮定し見ることが可能。

「んー、つまり……なに?」
「分かりません。未来がなんとなく分かるなー、って感じです。」
そんなバカっぽい回答をよそに、なんとなくの能力を把握しようと試みる。

 えっと、『仮定』っていうのは状態異常というか、付与効果かな?
 『仮定』で見た未来はただの『仮定』であって、確定ではない。『仮定』の未来は今現在何もしなかった場合に起こる未来って感じかな。

 つまり、今現在、何もしなかった時に起こる未来を見ることができる。それを元にその先の未来を仮定できる。それが仮定未来眼の本領ってとこかな。

 結構いい線行ってるんじゃない?

「まぁ、百合乃は本物のチーターってことでオッケーね。」
「化け物みたいに言わないでください。空の方がよっぽどですって。」

「ねぇ、百合乃。魔力が無い代わりに攻撃力が2000越えって、バランス取れてるようで取れてないからね?そのレベルでとんでもない火力だよ?」

「え?」

 まさか百合乃、自分の有能さに気付いてない?今のままじゃまだ弱いけど、このままいけば確実に私を超えて主人公になるはず。

 ……負けてられない。何かいい魔法、作らないと。

 スキルとか魔法とか、補正強化とかできたら強いんじゃない?
 あのコピーも、強化コピーとかしてたし。補正で強化すればさらにワンランク昇華できるんじゃ!?

 そう思い立ち、すぐに全振りの補正操作を生成する。

 補正操作
魔法、スキル問わず補正をかけることが可。加重補正や同時補正、補正変換など様々な姿がある。

「SP6万きちゃったかぁ。」
だいぶ減り始めたSPにため息をつきつつ、新しい魔法にまんざらでもない笑みが浮かぶ。

 SPって、レベル上げれば上げるほど手に入れるのが難しくなるんだよね……
 チート量産不可にしようとしてるのかな。

 考えて作らないとそろそろヤバめかも。

 そんなこんな考えていると、自然と会話は減る。百合乃もそこら辺は弁えてるみたいで、無理に話をしようとはしなかった。
 あれだけ眩しかった夕日の光も今や宇宙の彼方。真上には綺麗に輝く星の数々、そして三日月が覗いている。

 バイクは循環してる魔力を使ってライトを光らせ、その分の消費魔力を注ぐ。休憩分含めてなかなかに回復した魔力も、これでだいぶ削られそうだ。

 ライの調合した薬ってまだ残ってたっけ。それ使えばいっか。

 右へ左へ、戻って前へと繰り返していると、だんだん脳内地図が近くなってくる。それに合わせて脳内が軽く痛むけど、車酔いということにしよう。

「空、あれ…‥光ってません?」
「ん?あ……うん。UFOが攫おうとしてるシーンを目撃した気持ち。」
どこからどう見ても星明かりのはずなのに、太さやら明るさがそれを思わせない。

「これを上に、だってさ。」

「空は分かんないんです?」
「上に昇るしか情報には載ってないね。」

「どう行くんです?上なんて不可能じゃ……」
そう心配そうに言う百合乃。

 もしダメなら1日回復を待つ、あるならあるでいい。今行こう。

 ゴソゴソと見えない手で収納の中身を漁ってると、お目当ての品物があった。そのことに「おっ」と声を上げて喜びながら、ステッキから取り出す。

「なんです?それ。」
「ポーション的なやつ。結構美味しいよ。私の知り合いが作ったやつなんだけど、魔力回復用だから百合乃には関係ないけど。」
コクコクと試験管に入ったそれを飲み干し、軽く準備運動をする。

 いっちにーさんしー、ごーろっくひっちはち。
 にーにーさんしっ、ry

「な、何する気です?!そんな準備体操して、え?どうするんで……ひゃっ!」
辺な声を出す百合乃。自分から責める分にはいいけど、されるのは弱いタイプということが分かった。

「は~い、上に参ります。」
「なっ、うぅぅ!?」
私にお姫様抱っこの要領で抱えられた百合乃は、空中歩行で空を跳ばされるのであった。

———————————————————————

 3000字でも、書くのは大変んです。文字が3000字とか少なく見えますけど、結構多いんすね。

 確か文庫本が15万か20万文字あたりだった気がするので、60話くらい必要ってことですかね。
 本物の方々は、大変ですね。
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