魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

271話 軍服少女は断ち切る

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「「え?」」
光はわたしたちを覆うように放たれ、一瞬で意識が途絶えた。抵抗の余地すらなく、思考を回す暇さえなかった。

——————

 どれだけ経ったか分からないけど、目を覚ました。どこか硬いところに寝かされていて、目を開けると真っ暗な視界が見えた。

 ちょっと語弊があるかな?
 天井も、壁も……見てみれば床すらも、真っ黒。それなのに、視界は明るい。夜目でもあるみたい。

 警戒モードをオンにしながら立ち上がる。そこに現れると思う敵の存在を意識する。

 ペタペタペタ。明らかに何者かの素足の音が、この漆黒の部屋に響き渡った。

「えっ……?」
その視線の先にいたのは、紛れもない〈わたし〉。でも、全裸だった。黒髪の女の子だった。でも、完全に〈わたし〉自身がそこにいた。そっと、目を逸らした。自分の裸をまじまじと、それも客観的に見るのはなんとなく、憚られた。

複製失敗コピーアウト異常イレギュラーを排除するため、自動編成オートセットにより適切な能力を設定します。」
でも、そこから出た声はわたしとは全く違う機械のそれだった。

 コピー?イレギュラー?どういうことです?
 そもそもあれはなんだろう。なんで全裸?それに体が……肺が動いてない。

 普通呼吸する度に胸は勝手に動くはず。なのに、全くもってそれは動いてない。

「っ、倒すしかないんです?」
自分を目の前に、いきなり斬りかかるなんて出来なかった。そんな状況に手一杯で、どうしてここにいるかという思考は消去される。……人はいつまでも、生存本能に逆らえないらしい。未来のわたしは、皮肉たっぷりに人間の構造にこう毒付くだろう。

「打ち斬れ。」
「うわっ!」
無機質な音が聞こえたと思ったら、突然ムカデのようで、黒色の何かが〈わたし〉を中心に這い寄ってくる。

 キモいっ、これは流石にキモ過ぎです!

 ってうわっ!?登って、登って!

「あqswふぇdrgthyじゅきぉくぁwせdrftgyふじこlpぃぃぃぃぃ!!!」
なんともいえない絶叫をあげる。理由はもちろん、キモいムカデが這い寄ってきたから。

 無理無理無理無理無理!もうダメ。あれはもうわたしじゃない。
 今すぐ斬ってやらないと気が済まないくらい怒りが溜まってますねぇ!わたし!

 内心怒りは大爆発、わたしご乱心。

「舞え、月華!月華!月華!」
剣姫に収録されている『猿でも分かる全剣技集!!!~上級剣術網羅版~』(勝手に名付けた)の1つの能力で、切り裂きまくる。

「キモいっキモいぃぃ!」
甲高い悲鳴を響かせ、透明化した金色の花を撒き散らすサーベルを振り回す。金色の花はヒラヒラとその黒いムカデに触れると、まるで蒸発するかのように消えていく。

 はぁ、はぁ、はぁ……2度と、こんなの来ないで、欲しい……無理かなぁ……

「……接近戦へ移行。」
縮地とでも名付けられそうな動きでわたしの目の前まで来て、〈わたし〉同じサーベルで斬りかかる。

「うっ、……でも、剣術ならわたしの本分。そこまで上手くなくとも、やれないこともないんです。」
見よ!とでも言いそうな勢いでわたしはサーベルを上段で構え、迎撃体制をとる。

自動戦闘オートバトル。」
そう呟くとともに、力強くサーベルが振り落とされる。カキンッ、小気味いい金属音の次に、足が蹴り出される。

「っ、卑怯じゃないです?」
そんな言葉は聞こえないと言わんばかりに引き離された距離が縮まり、横へ斜めへ剣筋が向かう。それをグッと握ったサーベルを用いてなんとか弾く。

 剣姫でも防戦一方……実力不足も相まって、結構やばいです?

 状況把握をしてる暇もなく、わたしへ次なる攻撃が来る。

「わたしだって命かかってるんです!こんなとこで負けてたら、空が……あっ。そうだ、わたしは空のたまに負けられないんですっ!」
キンキンッ、と激しい剣戟が続く中、ようやく目的を思い出す。およそ30秒ほど剣を交えて睨み合い、隙というのを見つけた。

「そこですっ!」
それは、ガギイィィンッ、という金属が震えた時の特有の音が広がった。〈わたし〉の腕にサーベルが刃を立てた。

 手が振動して、うまく動か……

「ぐっ、ぅ……」
またも蹴り飛ばされ、その途中にサーベルの先端がわたしの軍服に引っ掛けられ、持ち前の耐久性を利用されて引き付けられた。向こうの空いた左手がわたしの右頬に思い切り触れ、じんじんとした痛みがやってくる。

「ぁあああああああっ!」
突き出されたサーベル。それを渾身の力を引き絞って、身を捩って回避する。その回転の勢いのままに、新スキル、天震を纏わせる。

「察知。回避を優先。」
その切っ先は〈わたし〉を捉えたまま、回避はさせないと軌道を予測する。その有能スキルは、この危機的状況でより磨き抜かれる。

 わたしを狙っていたサーベルを戻す勢いにて右足を後ろに、そのパワーを跳ぶことに集約させ、約2メートル後方、バックステップと左に重心を傾けて右に跳ぶ。右中心の動き。

 1秒もたたずそんな正確な未来を覗き見れ、自分自身でも驚きを隠せないまま、サーベルにサーベルを叩き込み、とてつもない震動を送る。

「ッ。機能障害確認———」
目の焦点が一瞬ズレた。その一瞬の時間で切り返し、衝波を真後ろに放って突進するように〈わたし〉の元へ飛び込む。

「魔断!……これで、お願い!」
サーベルを逆手に持ち、思い切り胸部に突き刺す。そして、吸魔を同時に発動させる。吸収しても、貯蔵できる魔力はないので意味はない。けど、相手から魔力を引き出せる。

 コピーと言っても能力は違う。その体も、力も、魔力感知に引っかかる!

「やったれぇぇぇぇぇい!」
機械な叫び。その言葉と時を同じくして目を覚ました〈わたし〉が、するはずもないのに、苦しそうに顔を歪めた。

「魔力枯渇を確認。生命活動に必要な最低量まで、あと………」
この状況でもまだ機械的に自分自身の解析を始める。

 舐めないで欲しいんだけど、やっぱ無理です?機械はムカつきます!

「衝波!」
〈わたし〉の胸からドゴォッと、聞こえてはいけない破壊音が聞こえ、その勢いでサーベルが排出されることもなく、自然と抱き合うような姿勢になる。

「そろそろおしまいにしましょうか!ふぅ…………断絶っ!」
ゆっくりと気合いが溜まり、数秒後にそれを真横に振るう。

「おりぁぁぁぁぁぁぁ!」
わたしの雄叫びが響き、ついでに〈わたし〉の体もその上半身に横半分の亀裂ができた。

「やっ……」
「魔力完全枯渇を確認。機能を停止します。………なお、この機体はおよそ10秒後、再利用可能なようスクラップに変化します。」

「え……?」
今度は焦りを半分含み、呟いた。

「危ない予感がするけど、これ。爆発とかしないです?しないですよね?大丈夫ですぅ?!」
どうにか魔断や衝撃断を使おうとするも、焦りでなかなか使えない。そして、初めてここまで綱渡りな戦闘をしたことによる疲労で腕が動きにくい。これすなわち……

「Somebody help me‼︎」
いつもの英語が炸裂し、その直後巨炎を纏った爆風が頬を撫でる。その1つ1つが超小型ナイフでも仕込まれてるようで、何やら痛みがあったのは覚えてる。でも、それ以降の記憶は何故か、本当に何故かなかった。

 不思議ですねぇ。

———————————————————————

 これはギリギリ3000字!セーフ、セーフ!

 百合乃回だし、仕方ないんですよ。これからも百合乃回は増えますけど、仕方ないんです!

 次回はまぁいつもの空視点に戻るので、字数の問題はないと思います。
 何故かって?それは会話ができるのからさっ!(何キャラ?)
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