302 / 681
9章 魔法少女と天空の城
282話 魔法少女は辿り着く
しおりを挟む徐々に、視界から抜けた色が戻ってくる。まるでパズルのピースみたいで、ゆっくりはまっていく感じがする。
「百合乃。気、引き締めて。」
「分かってます。何のために尊値をためたと思ってるんです?」
視界はほとんど全てが元に戻った。そこにあるのは、巨大な宙に浮く闘技場(?)的なものだった。
いや、闘技場というか、神秘的な闘技場?全く分からない。
ま、とりあえず飾りなんてひとつもない丸い床の空間とでも思っといて。
「空!」
突如突き飛ばされる。こんな時にふざけるはずはないので、仮定未来眼にでも何か映ったんだと思う。その瞬間、ゴゴォォウッ!と方向と共に巨炎が舞った。
「え?」
ゴロゴロと数回前転をし、振り返る。そこには真っ黒に焦げついた床があった。
こっっっっっっわ!なにこれ怖っ!初撃で殺すつもり?
脳内で必死に文句を並べる。特に意味はない。
「………これも、避けるか。」
奥からスッと現れた。それは、見るから人間じゃないオーラを放った……老人だった。
「龍神?」
「………よく来てくれた。ここは、お前の墓場だ。」
そう言って手を前に上げる。
「空っ!……魔断!」
隣に龍がいた。とぐろを巻いた、赤い龍。その龍は咆哮をあげ、もう1度巨炎を撒き散らす。
「ぐ、ぅぅぅっ、あぁぁぁぁぁぁ!」
サーベルを両手で抑え、なお拮抗する。触れる先から消滅するものの、次の瞬間からは倍の量の炎が舞う。
「……龍を容易く殺すお前には、死んでもらわなくては、いけない。」
ボソボソと語る老人。龍神で間違い無いだろう。
「目的はそれ?」
「…………概ね。龍は死んではならない。滅んではならない。この世の均衡を保つ。………………必要な、存在。」
「だから?」
「生きねばならない。……………代表たる神が、信仰がなくなり死ぬなど、あってはならない。」
「つまり保身と。」
私は膝立ち状態から、パパッと埃を払って立ち上がる。
「私はあなたを殺さなきゃいけないんだけど、そこのところどう思う?」
「………不可能。人である限り、神を殺すなど………特異者は、許されてはならない。」
「ちょ、さっきから意味分かんない。」
「……分からずとも良い。……冥土の土産に神の殺し方でも教えてやろうか?」
「えっ、いいの?くれるなら欲しいんだけど。」
「………断る。」
隣の龍を撫で、無表情で呟く。
うっわ、性格悪。そっちが教えてやるとか言ったのに、それで断るとかゴミじゃんゴミ。
教えろー!ついでに自滅しろー!
強かな魔法少女だった。
「らあぁぁぁっ!」
そんなやりとりの間に入ってきた叫び声。さっき退場した百合乃だ。
「人を勝手に死んだことにしないでください!」
「心読まないで?」
「わたしは、空が死ぬまで死にませんから。」
「なにその責任重大。何で自分の死に他人の死を上乗せされなきゃいけないの?」
「ファイトということです。」
百合乃がきてから一気にムードが崩れた。シリアスな展開は一気にドタバタ日常ものに変化する。
「………お前は、試練を突破していたか……?」
龍神が目を細め、百合乃を凝視する。俺、こんなの知らね?的な表情だ。
あー、確かに。最初は私が吹っ飛ばしたし、その後もかなり手伝った気がする。
というか時間かかりすぎな気がする。
「…………うるさい!ここにいるんだからクリアしたんですぅー!」
「……まともに突破したのは自身との見つめ合わせか…………特異分野だったか?」
「みんな揃って、わたしをチート扱いして……」
ぐすぐすと泣きまねをする。ほんとに、シリアスブレイカーすぎて怖い。
「………ここにいるべきでは無い。お前に、用はない。」
酷く冷酷になった。その声音は、全てを滅び尽くしそうなほど。
……龍神は、まだ遊んでるだけだよね。ここに私を引き止めるため、とかは考えにくい。
私も、簡単に……いや、違う。私にはこの十八番(兵器群)がある。
自身を取り戻し、ステッキを握りしめる。
「…………相手を、してやれ。」
そう言って龍を軽く叩く。その龍は軽く「ギュ」と返事を返し、空間が歪んだ。その後ろの龍神をは目を光らせるだけで、何もしない。
「空間伸縮の感覚に近い……?百合乃!多分、引き離される!死なないように頑張って!えっと、これ!」
「えぇ!?なんです?それぇ!えっ、ちょ……えぇーと、これ終わったら一緒に美味しいもの食べましょう!」
「何でこんな切羽詰まった時に死亡フラグ立てるの!」
ギャーギャーと騒ぐ間に空間が切り離されるように消え、百合乃の声は届かなくなる。
「…………場は整った。あとは、お前を殺す。」
手には杖が握られた。古びた杖。先には黒い物体が浮かんでおり、意志を持ったように動き回る。タールみたいな感じだ。
「はぁ。なら、私もあなたを殺すよ。」
「……できるものなら。」
「私の方こそ、簡単には死んであげないからね?」
そう言った瞬間、互いの攻撃が始まる。まず聞こえたのは、パァァンッ!という発砲音。神速を付与したこのにより、さらに威力は増した。
これは速度も増しただけで、魔法を消しても速度は落ちない。やったね!
「ふむ………これは、ディー坊の言う通り、厄介かもしれない。」
「ディー坊?」
パアァァンッ!立て続けに発砲し、会話を始める。殺し合いと書いて会話だ。
「………お前も、よく知る人物だ。」
「っ、あ゛っ!」
これが本当の神速か。鳩尾に強烈な痛みを感じる。こんな痛みは、人神や地龍以来か。
そう、か。ディー坊ってエディレン?人神かな?……つぅ~、1発でこれかぁ。結構きついなぁ。
殴られ、吹き飛ばされた先から2度の発砲を浴びせる。
龍神は、それを首を折って動かずに回避する。ほとんど直接撃ち込んでるはずなのに、先に軌道を切らない限りできない芸当だ。
「………本当に、厄介。」
杖を掲げ、次の瞬間には黒い何かが私を覆おうと迫り………
「魔力超化!人神魔力!サンダーサークル!」
バチィッ!と金色に変化した魔力が雷を発生させる。黒い覆いは、何とか阻止する。
「…………それは、ディー坊の魔力。」
少し苦しそうに呻く。
よし、効いた!
どこぞのポケ○ンみたいにドラゴンにはドラゴン、神には神だね。
内心で、私はにっこりと笑顔になる。
1つ、気になったんだけど……何で龍神は銃を避けたんだろう。
参考になるかは分からないけど、私が人神に与えられた攻撃といえばアースアイスによる転倒。予想外を突いた。
それ以外は意味をなさなかったけど……ん?
「神は、この世界にない攻撃のダメージは受ける?」
可能性を呟く。
確かに、創滅神がやりそうなことだ。
人が神に勝つために、私の世界にしかない力で、神を倒す。
いける、いけるかもしれない!
希望が見え、ラノスを再び構える。
「……爆ぜろ。」
「ぅっ!」
地面が急に破裂する。咄嗟に飛び退き、4度引き金を引く。重力操作でマガジンをセットし直し、宙返りをしつつトール。
「……消えろ。」
「えぇ、魔法消されんの?」
まるで龍の咆哮でも浴びたかのように、跡形もなく消えていく。
やっぱ本物の神はやばいね。ちょっと希望を持った瞬間破壊してくるとか。
んー、特殊体質は後に取っとくとして、とりあえず………
「ぶっ壊す!」
第五使徒(骨組みバージョン)のようなものが浮遊する。
追尾放射レーザー、ペネット。骨組み部分は私の知る限り最も魔力返還率が高い脈を通したもので、要所要所で核石の関節っぽいのを設置した。
脈っていいね。魔力の強化がしやすいし、魔力が貯まりやすい。
そんな細かいことはどうでもいいとして、私は取り出した瞬間レーザーを速射する。
6つの核石から放射レーザーが乱れ撃たれ、その場はレーザーで満たされた。
———————————————————————
兵器に関しては超適当です。とりあえず、何となくそうなんだなぁ、って感じで見てくれると助かります。
後の16個の兵器も全部そんな感じです。よろしくです。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる