魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

279.5話 魔法少女は撃ち壊す (前編)

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「むぅ。」
「いや、いつまで拗ねてんの。」
霧に覆われた世界。百合乃が頬を膨らませてリスみたいになる。

「逆に百合乃は、偽物の私とイチャコラして楽しいの?まぁイチャつける偽物と殺される本物なら前者か。」
「何しれっとわたしを殺そうとしてるんです?」
ようやくツッコんだかと思ったら、いきなり「うぉー!」と叫んで私を殴る。

 ……痛くない。

「これ、さっき蹴られた分です。」
「んー?誰のせいだったけぇ?私、忘れちゃったなぁ。」
ニタニタと煽る。それはもう、煽る。百合乃はぐぅの音も出ないというような表情で歯をぎりぎりと鳴らし、恨みがましく睨む。

「おーっと、誰を睨んでるのかな?」
「空です。」
「……そういうの、返しづらい。」
そうこうしているうちに、ようやく戻ってきた現実世界からまた引き離されるような感覚になる。

「あっ、空と話しすぎたせいでもうこんな時間です?」
「せいぜい頑張って。今度は私の手を煩わせないでね。めんどいから。」
「薄情ですぅ~!」

「そう言われてm———」
別の場所に転移するように、私の声はそこで途絶えられた。

————————————

「で、なんで私はまた私と対峙してるんだろうね。」
ここ最近ずっと自分の偽物を見てるせいか、もう動揺も戸惑いも混乱も、何1つしない。

「私は今までの私とは違う。本物のあなた。あなたが隠した影の部分を、私は知っている。」
「ふーん、それが?」
だんだん自分の対応に慣れてきて、適当になる。

「ほんとに、?」
「……っ!?」
核心を突かれたように、一瞬たじろぐ。

「あなたは、私は、ほんとに、本当に勝てると思う?人神にすらボコボコにされて、龍の神なんてものに勝てると思うの?」
「ぅ………」

「創滅神、だっけ?会うとかいう目標も、日本とここを行き来するなんて目標も、本当にできるなんて思ってる?」
「………」
嫌悪を剥き出しにし、眉を寄せる。本当に、ここの試練は意地が悪い。

 ねちっこい、ねちっこい……なんだこの精神的攻撃。

「あなたは気にしてないだろうけど、あなたは人殺し。法治国家日本において、殺人が許可されるのは一部の人間が、死刑囚のみにできること。あなたは日本に帰ってどうする?そもそも、あなたの応用力のかけらもない魔法で、そんなことができるとでも?」
マシンガンのようにウザいセリフが飛んでくる。

 人殺し?私は大切なものを守っただけ。それの何が悪いの?
 郷に入っては郷に従え。私は、この世界のルールに則っただけ。

 確かに、魔法の応用力はないけど……

 地味に気にしてることを突かれるのが一番うざい。軽く拳を握る。

「ねぇ?諦めたら?ほんとは嫌なんでしょ、こんなこと。ここで暮らしちゃえばいいじゃん。」
煽り口調で、さっきまでの百合乃相手の私以上のウザさで絡んでくる。私は俯き、向こうはニヤリと笑った。案外、私の心は弱いのかもしれない。

 ま、演技は終了として、そろそろ反撃開始かな。
こういう人は、先に言いたいこと全部言わせてそれ以上反論できなくするのが定石だよね。

「……そろそろ言いたいことは終わった?」
「ん?諦める気になった?」

「なわけないじゃん。」
「は?」
今度は私がニヤッと笑って見せる。向こうと顔が同じだから、絵面に代わり映えはない。

 じゃ、そろそろ私のターンかな。

「ひとつひとつ返してくね。龍神に勝てると思ってるかって?」
ふっ、と笑い飛ばし、前向く。

「勝てるかどうかじゃないよ、勝つんだよ。ここまでしてやんないとか選択肢、流石にないって。」
「それができないって……」

「はぁ。分かってない、分かってないよ。私、こう見えても情熱的な女だよ。嘘だけど。」
真顔で言う。

「神相手にするって言うのに、勝てるか勝てないかで迷ってたらいつまで経っても勝てないでしょ。創滅神?まぁ物のついでだって、もう。今更どうでもいい…‥わけではないけど、大切なものはできてるし。」
今度は私のマシンガンで、向こうは怯む。

「魔法の応用力とか殺人とか、そんなのどうでもいいって。こっちの世界のことじゃん。応用力の方は、まぁ……見つめ直すきっかけ的になったからプラスかな。」
「え?は?え?」

「私は本当の私を知らないってことだね。ま、私はノリで生きてるような人間だし、知らないこともあるよ。」
手に、黒塗りのラノスが握られる。その銃口は、迷いなく私自身、大切なものがなかったらこうなっていたであろう私に、向けている。

「ま、取り敢えず試練クリアってことでいいかな?」
パァァンッ!いつも通りの発砲音が、全てを斬り裂いて視界を開けさせる。

 なんか、今回の試練いつにも増して適当だったような……?
 まぁいいや。

 次第に霧は落ち着き、目の前に道が現れた。

「ここを進めってこと、でいいよね。まぁそれ以外道も方法もないし、仕方ない。」
歩き続ける。すると、その先に何かが見えてくる。

 光ってる?紫色、建物みたいな形……

 訝しげに見つめながらも、ゆっくりと歩を進める。

「神殿、かな?」
紫色に発色する、立体型の神殿が浮いていた。なんというか、クリスタル的な四角の枠組みをいくつも重ねたみたいな形の中に、神殿らしきものがある。

 ここで百合乃でも待とっかな。

 そう思い、無機質な地面に座る。

「枯れ地。そりゃそうか。魔力しかないし。」
ボーッと地面を見る。だんだん暇になり、そうだ!と立ち上がる。

 魔法の応用が苦手なら、数で押せばいい。魔法を増やすのは難しいけど、代わりに銃とかの兵器なら、作れるかもしれない。

 幸い、技能系の魔法はめっちゃある。これを使えば、十分な火力枠が務まるはず。

 善は急げと、魔法とスキルの見直し、それと兵器の種類や内容を考える。どれだけ時間がかかるかは分からないけど、まぁ取り敢えず頑張る。

 ここは、はあるからね。

———————————————————————

 ほんっっっっとうに申し訳ありません!今回と次回は、内容がペラッペラなので3000字、どうしても越せませんでした!

 この首一つで終わるのなら……いくらでも差し出します!
 え?差し出したら誰が執筆するって?知りません、後のことなんざ!私は、今ここで首をき……

空「ちょ、やめろ!」
c「空!?止めるな、止めるんじゃない!」
空「そんなことされたら、私達も実質的に死じゃん!?今目の前で、自分すら死にかけてたらそりゃ助けるよ!」

c「でも空、偽物の自分には銃向けまくってたよね」
空「それは言わないお約束」
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