魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
295 / 681
9章 魔法少女と天空の城

276話 過去 (百合乃視点)

しおりを挟む

———こうであってほしかった過去、こう進んでほしかった未来。好きな人が平和に、そんな世界を、人は望む。その望んだ未来は果たして本当に、幸福か———


 わたしは青柳百合乃、高校2年の16歳。特に親しい友達はいないけど、作ろうと思えばいつでも作れる。
 学業とスポーツも中の上から上の下をキープしてる、どこにでもいるような女の子。

 だけど、ひとつみんなとは違うことがある。

 私には恋人がいる!綺麗な青色の髪で、ちょっと面倒くさがりだけ根は優しい。名前は美水空。

 みんなわたしたちの関係を歪っていうけど、わたしは気にしてない。こんな運命を、他人の一言でつぶしたくなんてない!

 元にわたしと向こうの両親も、この関係に納得してくれてるし、なんなら援助もしてくれてる。

 なんと、あるマンションで同棲してるんです!

 こんな夢のような時間を毎日過ごせて、わたしは心から幸せなんです。

 ピピピピッ、ピピピピッ……

 いつも通りの朝。現在朝5時30分。弁当を作ったり、掃除をしたりと大変だから、早く起きるようにしてる。
 空も手伝おうとしてくれてるけど、朝は苦手みたいだし、わたしが好きでやってることだからって、休んでもらってる。

 家事全般はわたしの仕事。それじゃあ空は何もしてないじゃないかって?
 何言ってるんです?そこにいるだけで、もう返しきれない借金を負ったようなものです。

「おはようです、空。」
気づかれないよう、小さな声で隣で眠る空に声をかける。青い髪は、本当に綺麗。

 よーっし、やりますよ。

 パンパンッ、と頬を叩き、気合を入れて洗面所へ向かった。まずは歯磨きと洗顔。好きな人には、綺麗な姿を見せたいものなんです。

 カップから歯磨きを取り出し、水を入れる。歯磨き粉をつけるとそのまま口に突っ込む。
 ある程度磨いたら口を濯ぎ、顔を洗ってタオルで拭く。

「掃除っ、掃除~。」
ルンルンで鼻歌を歌いつつ、スパパッと掃除機をかける。それが終わると6時を過ぎて、そろそろ弁当作りを始めなきゃいけない時間になる。

「えっと、昨日はパンにしたから、今日はご飯っと。おかずは昨日の晩御飯の炒め物と、野菜肉卵、プラスαでいいんだよね?」
調理器具の準備をある程度終えると、冷蔵庫から食材たちを取り出す。作り終わる頃には7時が迫ってきて、空はまだぐっすり。その間に朝ごはんを作る。

 朝ごはんは、簡単にパンを食べてる。
 食パンにバターとチーズを乗せて、トースターで焼いて、ベーコンを乗っけて挟んで食べる。これがわたしたちの朝ごはん。

 トースターがジジジジ、と機械音を鳴らし、コーヒーメーカーがコーヒーを出すを音も聞こえる。そんな時、部屋の扉がかちゃりと開く。

「んんぅ~、おはよぉ。」
ボサボサの髪を振ってやってくる。可愛い。

「空、おはようございます。今ご飯作ってるので、歯磨いたら来てくださいね?」
「ん、分かった。」
目を擦って向かう空を見届け、もう少し見てたいと思いながらも食器の準備をする。

「今日午後から雨降るらしいね。折り畳み傘ってどこあったっけ?」
顔を薄く濡らした空が歯ブラシを咥えながらテレビをつける。ちょうどやってた天気予報を見て、わたしをチラ見する。

「傘です?普通に玄関の棚にあると思いますけど。」
「そ?ならいいや。」
テレビを消して洗面所に戻る空。湿った顔は艶があって、とても可愛らしく、かっこよくも見えた。

 水も滴るいい女とは、このことです。え?男じゃないのかって言われても、空は女の子ですし……?

「空、今日もかっこいいですね。」
「……女の子にそれ言う?まぁ私も自分が女の子なんて思ってないけどさ。というか、それ言うんだったら身長分けてくれない?」

「それでも十分かっこいいです。空はそのままが1番です!」
わたしはやってきた空に抱きつき、苦笑い気味に諌めてくる彼女にすりすりと頬ずりをする。

 空の身長は154cmぐらい。わたしは161。確かに7cm近く差があるけど、かっこよさはそこに関係ない!
 わたしを事故から守ってくれた空は、世界一かっこいい!

「はいはい、早く食べて学校行くよ。」
「は~い!」
何か立場が逆転してる気もするけど、とりあえず頷いておく。

 ご飯も早々に食べ終わり、折り畳み傘を鞄に入れていざ学校へと玄関の扉を開ける。

 このマンションは10階建。駅からも結構近く、わたしたちの高校とも近いから、ギリギリに出ても間に合う。
 少しでも空とイチャイチャできるってこと。嬉しいですっ!

 その5階に住んでて、番号は506号室。

「鍵閉めた?」
「はい。」

「……いい加減敬語やめない?歳が違うだけで同学年じゃん。」

「癖ですから、仕方ないじゃないです?」
「聞きたいのは私なんだけど。」
そんな会話をして、どこからともなく笑い合う。変な関係でも、わたしたちは楽しく暮らしてる。最近は周りも、この光景を見て「いつものかぁ」と遠い目をすることも多くなった。

 エレベーターを降り、通学路を行く。

「今日提出の数学の課題、やった?」
「はい。というか、現国の方も課題ありませんでした?」
「あっ。」
やべっ、というふうな反応をして、少し引き攣った表情になる。

「……百合乃、危ない。」
小声で囁かれ、ビクッとなって固まる。それを見かねた空が、クイっと引っ張って抱きとめる。その瞬間、スマホのながら運転をする大学生らしき人が、自転車に乗って走り去っていた。

「あ、れ?なんで分からなかったんです?」
誰にも聞こえない声で、そう漏らしていた。

 あれ?なんでです?ただの日常なのに、どうしてこんなに違和感があるんです?

「百合乃?どうしたの?顔色、悪いけど。」
ハッとして、横を向く。すると、そこには空の顔が間近にあった。

「っ!?そそそそっそらぁ!?」
「そが多い。」
ほら、行くよ、と言って、何事もなかったかのように歩き出す。

 あれ?何を不思議に思ってたんです?わたし。

「待ってくださいよ~、空ぁ~。」
信号を進もうとする空をばっ!と捕まえ、「危ないでしょ」と微笑む。

「今日の夜ご飯どうします?」
「うんうん、百合乃には脈絡が欠如してるね。」

「ご飯にします?麺にします?それとも、わ・た・し?」
「百合乃もいいけどご飯で。」
「えぇ~!」
「街中で言わないでよ。街中で。」

「家だったらいいんです?」
「まぁ……暇だったら。」
ちょっと頬が赤くなる空が可愛くて、見ていられなくなる。尊値が高過ぎて、倒れちゃう。

「あ、傘忘れました。」
「だから突然!?というかもう戻ってる時間ないよ?」

「大丈夫、空の傘を使います。」
「相合傘?まぁ別にいいけど……百合乃と2人で入ると高さと横幅の関係が、ねぇ。」
空がわたしの胸部をまじまじと見る。「なんだこの凶器」と呟く姿を見て、わたしは下からそれを持ち上げる。

「ふふん?これは空のものですから、いくらでも触ってくれてもいいんですよ?」
「持ち上げないで。というか、視線が痛い。」
学校の側に来たためか、同じ高校の生徒が興味ありげにこっちを見ていた。

「百合乃、美人なんだから……気にしないと。ほら、男達の視線、百合乃の胸に。」
「それで何か変わるわけでもないんですし。本当にどこまで可愛いです?空は。」
うりうりぃ~、と、空の体をツンツンする。「ちょ、置いてくよ」と言われたので「捨てないでぇ~」と猫撫で声で言ってみる。

 こんなのが毎日続くなんて。いつか尊死しちゃうんじゃないかって心配です。

 ……何か、忘れてるような……?

「百合乃?」
「なんです?」

 ま、いっか。

———————————————————————

 百合乃、脱出ならず。まぁあの百合乃が甘々な空との同棲生活を逃すわけないですもんね。

 百合乃は変態ですから、テンプレ通りだと「本物はもっと~!」とか言って意識が戻るものですが、いくらMでも甘いほうがいいようです。

 さぁて、どうやって脱出させようか。(元々ないに等しいプロットから完全逸脱した回。本当は脱出させるつもりだった)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

処理中です...