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9章 魔法少女と天空の城
270話 魔法少女は罪悪感
しおりを挟むコピーの原理が分かり、最大限既に使った魔法を中心に使う。
いつから見られているかは分からないので、一応森に入る前後を基準としている。
「選択銃弾、No.2。雷獣。」
「トール!」
雷には雷を、神なる雷を私に向けた。
「貫け、天下の鳥雷。」
無機質な声が静かな部屋に響き、まるで何かが宿ったかのように雷が翼の形をとり、私の雷を打ち払った。
「っ、アクアサークル!」
私を中心に水の球が生まれる。普通は感電する。バカじゃないのかと言われるかもしれない。
でも、私は雷無効と神雷耐性がある。なら、水で弾丸の速度を落とせれば!
「複製、自動追従。」
思考を遮るように放たれた言葉。
「分かれた?いや、コピーされたのかな……?」
目の前に生まれた5発の雷弾を睨み、さらに分厚く壁を作る。
「んっ、さすがに感覚まで消えるってことはないかぁ……」
体に走る痺れに顔を歪め、垂直に跳ぶ。
「うおっ、これ追尾してくんの?」
空中歩行を起点にして、なんとか雷弾を躱し、お返しとばかりに3発の銃弾を浴びせる。
私の強化コピー、どういう意図?これも何かの試練?
その隙に軽く思考を回し、そんな暇はないと無理矢理現実に戻す。
「ウィンドサークル!」
「分散銃、ッ。」
言い切られる前に風が遮り、動きを制した。その一瞬稼がれた時間で私のコピーに1センチ多くでも近づこうとする。
当たれ、当たれ、当たれ!
「分散銃弾。」
無機質な声が風越しに伝わる。パァンパァンパァン。少し控えめな射撃音。それは風を突き抜け……いや、風を消し去った。
ちょっ、反則だって!
目の前で5つ6つと、更にに雷弾が分裂する姿を目撃し、チートである私自身を棚に上げて脳内で文句を吐き捨てる。
「気配察知、身体激化!」
全身の筋肉に魔力が通り、更に目や脳にまで魔力が注入される。
「つっ、あぁぁぁぁぁ!」
痛みを叫びで堪え、思考をフルで稼働させ、焼け切れそうになるまで動かす。
ここまでチートにする必要あった!?
最後の力で文句を言い、弾丸がその思考を消し去った。
この攻撃群、時間にして10秒。でも私からしたら、とてつもなく長い時間に感じた。
1秒。前方から3弾。頭、胸、脚を狙ってやってくる弾丸を、横にずれて避ける。
2秒。その瞬間に跳弾した別の弾を首を折って避け、その時にはもう前方と後方にからも跳弾した弾がやってくる。
3秒。最低限の高さまでしゃがみ、その状態で後退。
4、5秒。斜め上と後ろ、それから横から弾丸が迫り、1つずつ針に糸を通すように身を捩り、コートに掠らせながらするりと躱しきる。
6、7秒。空中で弾丸同士がぶつかり合い、跳弾する。跳ね返るたびに分裂するようで、不規則となった弾丸が全方向から襲いくる。
8、9、10秒。前に後ろにと2段重ねで放たれた極小の弾丸がほぼ同時に飛んでくる。回避は不可能と思ったけど、銃身で目の前の銃弾を叩き落とし、退路を作った。そのまま勢いに任せて前方に倒れ込み、受け身を取って転がった。
10秒。きっかり攻撃を避け切り、肩で息をしながら身体激化を解いた。
「……選択銃弾、解除完了。銃弾吸収、発動完了。」
小さく響いた機械音声の持ち主に目を向ける。
「当たってた?ラッキー、なのかな?」
さっき撃ってた3発の弾丸はコピーの側頭部に1発、脚と肺の辺りに1発ずつ当たっていた。
なんで?あの性能なら銃で弾けたはず……って、そうか。そうじゃん。
あれは、私のコピーだ。
納得のいく結論が出た。
あそこでダメージを喰らったのは、弾切れだったからだ。
そりゃそうだ。いくら火力を上げようと、私の銃だ。マガジンに入れられる数は決まってる。
8弾。通常で1発、炎ので2発、加速が1発、雷が1発、今ので3発。合計8発。
向こうは手負いのうえ、こっちにはまだ隠し技が数多くある。
「よっし、勝機が見えた!」
残弾数が心許ないので、マガジンを入れ替えつつ、そう言った。
「装填完了。起動完了。」
パァァンッ!と、聞き慣れた銃声を冷静に対処しつつ、5本の万属剣を盾に疾走する。
「トール!」
パァァンッ!
「複製。サンダーサークル。」
トールは雷の球に吸い込まれ、共に消滅。銃弾と銃弾が弾き合い、その頃にはもう距離は1メートル弱。私は、跳ぶ。
「複製。万属剣。」
「流星光槍!」
8つほど出された7色の剣が、光1色を放つ槍3本に貫かれる。ガギィンッ、と、およそ魔法から出るとは思えない音が鳴り、いつの間にかステッキが消えていた(しまっただけ)左手に刀構え直す。
脈は……ない。火力はそこまで見込めない……かな。でも銃で追い討ちを……身体激化がどうコピーされるのかも問題かな。
いくらか試行する余裕はあった。でも、戦闘中に、それも私の脳じゃ結論は出なかった。
「炎刃!」
とりあえず慣れている技を放つ。正面はガラ空き。右手には銃。撃つには反応がには遅すぎた。左手にはステッキを模倣したなにか。これもまた同じ。飛翔する炎の刃が私の胸部に直撃し、サマーソルトキックを喰らわせて少し後方に着地する。
ふっ。これでいくらかはダメージいったでしょ……
肩で息をしつつ、刀とステッキを入れ替える。
いくらコピーでも、自分を本気で斬るっていうことの罪悪感は計り知れない。
「複製。身体激化。」
「防がれた?……いや、傷はついてる。進行を止めた、とか?」
明らかに斜線の焦げ目がついた体で、それでもまだ喋ることのできる私に、チートすぎ……と、小さくツッコミを入れる。
他にもうどうしろっていうの。ないよ?もうだいぶ今できる本気使ったんだから。
パァァンッ!パァァンッ!と、銃声を適当に鳴らしてみるも、まるで鋼鉄にでも当たったかのように弾き返される。
「身体激化のスペックが違う……」
項垂れながらも、新たに浮遊させた万属剣を空中に、コピーの私を睥睨する。すると、今までとは違う殺気を纏い、疾走してくる。
「選択銃弾、No.3。引力弾。」
声は冷淡な機械音声。それでも、身体に血は流れずとも、体が焼き焦げても、それは変わらない。でも、明らかに何かが変わった。
見た目じゃないならなにが変わった?能力?動き?動きは派手になった。でもそれだけだよね。
能力は同じくコピー。ん?強化コピーか。
「……強化って、いい意味だけではないよね。」
ポロリとそうこぼす。
つまり、痛み以上の副作用があるってこと?
「それまで耐えれば勝ち。低い賭けだけど、乗るしかない。」
少し本気を出す。そう決めて、あるスキルを使う。
「併用銃弾。」
放たれた銃弾はその言葉が響く瞬間に炎に変化し、一条の光を作る。
「っ、グラビティ?重力操作……そこ忘れてた。」
こっちもこっちで重力を操作しつつ、幻聴のように鐘の音が響く。発動してくれた。
運命。暗殺者との戦い以来だね、これ。
ただの仕様なのか、そうじゃないのかは分かんないけど、ここまで大層な名前がついてるんだから、それ相応の力を今後発揮してくれないと困るよ?
今は未来を感じるという中々に半端な能力を許容し、私の動きを見る。
私の限界は10秒やそこら。つまり、倍以上は確実と。
そうやって希望的観測に縋りながらも、回避、制御、回避、制御と続ける。
「……………装填完了。」
時々そんな声が聞こえてくるだけで、無言。でも、静寂は訪れない。それ発泡が続くから。
軌道予測なんか比にならないくらい避けやすい運命の糸に、普通にさっきの考えを脳内で謝罪しつつ、避け続けていく。そしてまた銃声は鳴る。
「そろそろっ、かな?」
最後らしき銃弾を躱し、小さく漏らす。
「……。限界突破。選択銃弾、核銃弾。」
「っちょ、流石に聞いてない!だめ、ダメだって!ロケットランチャーとか流石に無理だって!」
私が騒ぐ中、静かにトリガーに指をかける私。いつの間にか人間サイズになった銃を引くと、ドパァァアッッ!と、乾いてない炸裂音が響き渡る。
「サンダーサークル、ファイアサークル、アクアサークル、ウィンドサークル!アイスシールド!」
結界を張るように張り巡らされたそれは、撃ち放たれたソレを受け止めると共に、たちまち破壊される。
「……サークル、サークル、サークルサークルサークルっ!まじやばっ、無理だって、死ぬ、死ぬぅ!」
運命の糸なんかクソ喰らえと、神が1番やっちゃいけなさそうな攻撃を仕掛ける私(コピー)。どうかしてるよ、ほんと。
「…………とまっ、た?」
数分間、魔力を文字通り死ぬ気で流し続けた私は、なんとか生還していた。
「装填不能。選択銃弾、機能停止。生命活動終了。」
滔々と語る。自分の命が消え去るというのに、事実のみを並べる。宿っていた目の光は、数瞬数える暇もなく、消え去った。
「ようやく終わった……」
膝を崩し、女の子座りみたいになる。
でもひとつ疑問なんだけど、なんでこんな試練出したんだろう。
こんなの、私はをパワーアップさせるだけじゃん。
あんな発想なかったし、私にしろってことじゃん。あれ。
まぁまだ無理だけど、と呟き、疲労からか、そのまま意識が途絶えた。
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今回、私自身も何言ってるか分からないです。めちゃくちゃです。
まぁ、ということで、次回雑談回です!私の自己満100パーセント、限界まで詰め込んだ回です。そのため、今回はボリュームアップです。
応援ありがとうございます!
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