287 / 681
9章 魔法少女と天空の城
269話 魔法少女ともう1人の自分
しおりを挟むみんな、グッドモーニング。
今は百合乃が寝てるから、盛大に騒ぎまくろう。
数分前のシリアス感はどこへやら。ネタ全開で、百合乃の枕元というか頭のそばでどう起してやろうか思案していた。
なんでそんな吹っ切ってるかって?
まぁね、よく考えてみたわけですよ。このタイミングでこんな謎だらけの森と魔族を用意して、意味ありげに神の試練とか、言った瞬間死ぬとか、もう確信犯じゃん。
つまりは、私達を不安にさせるための罠。そんな見え透いた罠に引っかかってやる私じゃない。
「……ん、んぅぅ、ぅぅ……」
「起き……てはないかな?」
何やらうなされているらしい百合乃に、懐からひょっこりと顔を出したキューがぺろぺろと頬を舐めた。
「空……」
うわ言を言いつつ、キューを素早く抱きしめ顔に当てる。
「キューッ!キュキュ!?」
「ちょっ……っ、そろそろ起きようか、百合乃!」
ゴンッ!と、百合乃の頭上から聞こえてはいけなさそうな音が鳴り、その瞬間「ぐふっ」と静かに声が聞こえてくる。
「いた、いたぃ……」
見るからに赤く腫れた頭部を涙ぐみながらさする。寝起きのため、若干掠れてる。
「はい、ヒールかけるからこっち来て。」
「うぅ、空の香りが……」
「え?もしかしてキュー奪った目的ってそれ?」
ヒールをかけようとする手が止まり、あざとく頭を抑える百合乃に結構な殺意が湧く。
こんな状況で眠りこけた上に、そんな考えで?
「ヒールかけるのやめようかな……」
「ごめんなさいっ!無意識、無意識の上での発言です!ノーカンです!」
両手をバッテンとし、ぴょこぴょこと膝で飛び跳ねる。そのたびに砂埃が舞い、咳き込みながら「分かった」と宥める。
———実際には意識的が半分、もう半分は空に心配をかけないためだったりする。自身の秘密を知られないために———
「ここの魔力を隠れ蓑にすればいけるらしいし、休憩もこんくらいにして早く行くよ?大丈夫だよね?」
「まぁ……気持ちの整理はついてませんけど。」
「なら大丈夫。これは多分、私達を不安にさせるための罠だから。気にしないのが1番だよ。」
「そう……です?」
どこか歯切れが悪く返事をし、少し怪しみながらも便利な魔導法で魔力のマントを纏う。
「百合乃ー、なんか違和感とかない?」
「ん、大丈夫だと思い……ます。はい。」
「オッケー。じゃあ進もうか。」
「キュッ!」
キューをいつもの定位置にしまい、目的地も分からずただ歩く。
あぁ、魔族に帰り方とかきいとけばよかった……と、若干後悔しつつ歩を進めた。
それからは同じ景色が続いた。ずっと似たような森。見覚えのある景色に戻って来たり、印をつけてもいつの間にか消えていたりと、同じ道を迷い続けている。
いい加減痺れを切らした私は、魔力喰らいで直線上の魔力を喰らい尽くした。その分魔力の消費量はすごいけど。
それでもすぐに魔力が広がるから、それはもう大変だった。
背丈ほどある伸び切った草をかき分け、10メートルは超えるであろう大木が立ち塞がり、更にはその先に、種を植え付けてくるパッ○ンフラワーのような生命体と出会し……etc
ついに、ついに、辿り着くことができた。
出口だ。
私達は目を見開き、すぐさま出口に駆け寄る。
「空、とうとう……やったんですね。」
ざわざわと草葉が風に揺られる音と共に、これまでの苦労を思い返してか、百合乃が言う。
「ようやくこんな森ともおさらばできる……」
内なる歓喜を抑えきれず、しぃっ、と小さくガッツポーズをとった。
ほんとに色々あった。体感もう1日歩き続けた。
こんなん2度と行きたくない。マジで、ほんとに。
「魔力喰らいが無かったら、まずスタートラインにすら立ててなかったよ……」
「そうですね。魔族さんも、今頃は天国に逝ってるでしょう。」
「魔族が天国って逝っていいの?」
「差別は良くないですよ?空。」
こんな出口目前でもいつものお約束のトークは忘れずに、森と外の境界線へと、足を踏み込んだ。その直後。
「「え?」」
目が潰れるかと思うほどの眩い閃光に、2人揃って素っ頓狂な声をあげる。
これ、なんのひかr———
つまりこれは、終わりじゃなくて始まり。
私の記憶はここで途絶えた。
——————
目を覚ますと見覚えのない場所にいた。
天井は真っ白で、軽く起き上がって首を振ってみると、そこもまた真っ白。ついでに言えば、床も。
良く言えば白磁のようで美しく、悪く言えば無機質で気味が悪い。
「ん……確か森を出て……それで、って、百合乃は?」
この何もない部屋に誰かがいればすぐ気がつくはず、そう思って周りを見渡すも、そこにあるのは、地平線。
いない?
というか、なんでこんなところにいるの、私。
えっと、森を出た後は……
記憶に靄がかかったかのように、上手く思い出せない。でも、私がこうなっているといことは、百合乃もそうなってる可能性も高い。
今は百合乃を信じ、自分のことを考えることにする。
そう思って立ち上がると、ふと声……というより、機械音声のようなものが耳に入る。
「銃弾選択、発動完了———」
「っ!」
嫌な予感が全身に走り、真っ直ぐに、力一杯真横に飛び退いた。その刹那。ガゴッ!という、消して当たってはいけないと本能が察する何かが、床を穿った。
「銃弾選択、装填完了。No. 1、炎弾。」
感情の籠らない声でただ出来事を語るその姿を見て、私は一瞬あること以外、一切合切の思考が停止した。
私………?
そう、そこにいたのは、あったのは、紛れもなく私。
瑠璃色の髪を持つ私。
しかも、全裸。大事な部分は再現されていないものの、完全に、全裸。
「花開け、一条の炎。」
「鑑定眼!」
今すぐにあれについて知りたいと思った私は、左目に万能感知、右目に鑑定眼を染めてまた横に飛び退く。目の前に飛来した1発の炎。それは真っ直ぐに飛び、私の元いた空間をすり抜け、またも壁を穿つ。
ステータス
名前 美水 空
年齢 15歳
職業 複製人形
レベル ?
攻撃? 防御? 素早さ?
魔法力? 魔力?
装備 なし
魔法 上位複製
スキル 上位複製
右目に映し出されたもの。そこで私は、1つの欄を凝視し、睥睨した。
コピー人形ってことは分かった。まぁ私の銃をあんな正確に撃ってきてることから、文字通り本来より強化してコピー可能ってことも分かった。
「だったらなんで15歳なの!!」
右手の銃を引き抜き、5発連続で撃ち抜く。それと一緒に乾いた発砲音もなるけど、気にしない。今だけは怒りに任せる。
「穿て、炎弾。」
感情の籠らない声。全裸。非常に合わない。
「っ、サンダーサークル!」
両目を変化させたことによって視界が塞がれ、防御が遅れた。最後にハイコピーってやつに鑑定眼を当て、直ぐにオフった。
上位複製
名の通り視認し、1度解析の成功した技を強化させ会得可能。
「思った通りって感じ?」
「銃弾加速。」
重ねるように放つ機械音。私の顔で喋らないでほしいと強く思いながら、唐突に加速するその弾をさらに重ねたサンダーサークルで消し炭にする。
……強い。さすが私を強化しただけある。
それでも、知らない攻撃は知らない。なんとか、温存しないと。
残弾数3発の銃に、ここ最近使っていない魔法は切り札として、逆に使った魔法。それが今の武器。
「銃弾選択———」
「トール!」
———————————————————————
なんか出て来ましたね。
今回の敵はありがちな自分。でも違うのは、見た攻撃しかコピーできない代わりに、強化版コピーを使える。
自分を超える!限界突破!みたいな勇者チックはできません。
その場合、向こうもしてくるので意味ないです。
いかに知らない武器を隠し続けるか。ただでさえ強い敵に、有効打を隠し、騙し通す。騙し抜いた先に、勝利がある。そういう敵です。
そんなことよりもうすぐ雑談k……
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる