魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

269話 魔法少女ともう1人の自分

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 みんな、グッドモーニング。
 今は百合乃が寝てるから、盛大に騒ぎまくろう。

 数分前のシリアス感はどこへやら。ネタ全開で、百合乃の枕元というか頭のそばでどう起してやろうか思案していた。

 なんでそんな吹っ切ってるかって?
 まぁね、よく考えてみたわけですよ。このタイミングでこんな謎だらけの森と魔族を用意して、意味ありげに神の試練とか、言った瞬間死ぬとか、もう確信犯じゃん。
 つまりは、私達を不安にさせるための罠。そんな見え透いた罠に引っかかってやる私じゃない。

「……ん、んぅぅ、ぅぅ……」
「起き……てはないかな?」
何やらうなされているらしい百合乃に、懐からひょっこりと顔を出したキューがぺろぺろと頬を舐めた。

「空……」
うわ言を言いつつ、キューを素早く抱きしめ顔に当てる。

「キューッ!キュキュ!?」
「ちょっ……っ、そろそろ起きようか、百合乃!」
ゴンッ!と、百合乃の頭上から聞こえてはいけなさそうな音が鳴り、その瞬間「ぐふっ」と静かに声が聞こえてくる。

「いた、いたぃ……」
見るからに赤く腫れた頭部を涙ぐみながらさする。寝起きのため、若干掠れてる。

「はい、ヒールかけるからこっち来て。」
「うぅ、空の香りが……」

「え?もしかしてキュー奪った目的ってそれ?」
ヒールをかけようとする手が止まり、あざとく頭を抑える百合乃に結構な殺意が湧く。

 こんな状況で眠りこけた上に、そんな考えで?

「ヒールかけるのやめようかな……」
「ごめんなさいっ!無意識、無意識の上での発言です!ノーカンです!」
両手をバッテンとし、ぴょこぴょこと膝で飛び跳ねる。そのたびに砂埃が舞い、咳き込みながら「分かった」と宥める。

 ———実際には意識的が半分、もう半分は空に心配をかけないためだったりする。自身の秘密を知られないために———

「ここの魔力を隠れ蓑にすればいけるらしいし、休憩もこんくらいにして早く行くよ?大丈夫だよね?」

「まぁ……気持ちの整理はついてませんけど。」
「なら大丈夫。これは多分、私達を不安にさせるための罠だから。気にしないのが1番だよ。」
「そう……です?」
どこか歯切れが悪く返事をし、少し怪しみながらも便利な魔導法で魔力のマントを纏う。

「百合乃ー、なんか違和感とかない?」
「ん、大丈夫だと思い……ます。はい。」

「オッケー。じゃあ進もうか。」
「キュッ!」
キューをいつもの定位置にしまい、目的地も分からずただ歩く。

 あぁ、魔族に帰り方とかきいとけばよかった……と、若干後悔しつつ歩を進めた。

 それからは同じ景色が続いた。ずっと似たような森。見覚えのある景色に戻って来たり、印をつけてもいつの間にか消えていたりと、同じ道を迷い続けている。
 いい加減痺れを切らした私は、魔力喰らいで直線上の魔力を喰らい尽くした。その分魔力の消費量はすごいけど。

 それでもすぐに魔力が広がるから、それはもう大変だった。
 背丈ほどある伸び切った草をかき分け、10メートルは超えるであろう大木が立ち塞がり、更にはその先に、種を植え付けてくるパッ○ンフラワーのような生命体と出会し……etc

 ついに、ついに、辿り着くことができた。
 出口だ。

 私達は目を見開き、すぐさま出口に駆け寄る。

「空、とうとう……やったんですね。」
ざわざわと草葉が風に揺られる音と共に、これまでの苦労を思い返してか、百合乃が言う。

「ようやくこんな森ともおさらばできる……」
内なる歓喜を抑えきれず、しぃっ、と小さくガッツポーズをとった。

 ほんとに色々あった。体感もう1日歩き続けた。
 こんなん2度と行きたくない。マジで、ほんとに。

「魔力喰らいが無かったら、まずスタートラインにすら立ててなかったよ……」
「そうですね。魔族さんも、今頃は天国に逝ってるでしょう。」

「魔族が天国って逝っていいの?」
「差別は良くないですよ?空。」
こんな出口目前でもいつものお約束のトークは忘れずに、森と外の境界線へと、足を踏み込んだ。その直後。

「「え?」」
目が潰れるかと思うほどの眩い閃光に、2人揃って素っ頓狂な声をあげる。

 これ、なんのひかr———

 つまりこれは、終わりじゃなくて始まり。
 私の記憶はここで途絶えた。

——————

 目を覚ますと見覚えのない場所にいた。

 天井は真っ白で、軽く起き上がって首を振ってみると、そこもまた真っ白。ついでに言えば、床も。
 良く言えば白磁のようで美しく、悪く言えば無機質で気味が悪い。

「ん……確か森を出て……それで、って、百合乃は?」
この何もない部屋に誰かがいればすぐ気がつくはず、そう思って周りを見渡すも、そこにあるのは、地平線。

 いない?
 というか、なんでこんなところにいるの、私。

 えっと、森を出た後は……

 記憶に靄がかかったかのように、上手く思い出せない。でも、私がこうなっているといことは、百合乃もそうなってる可能性も高い。

 今は百合乃を信じ、自分のことを考えることにする。

 そう思って立ち上がると、ふと声……というより、機械音声のようなものが耳に入る。
 「銃弾選択 コースバレット発動完了モードオン———」

「っ!」
嫌な予感が全身に走り、真っ直ぐに、力一杯真横に飛び退いた。その刹那。ガゴッ!という、消して当たってはいけないと本能が察する何かが、床を穿った。

「銃弾選択、装填完了セットオン。No. 1、炎弾ファイアブースト。」
感情の籠らない声でただ出来事を語るその姿を見て、私は一瞬以外、一切合切の思考が停止した。

 私………?

 そう、そこにいたのは、のは、紛れもなく私。
 瑠璃色の髪を持つ悪魔

 しかも、全裸。大事な部分は再現されていないものの、完全に、全裸。

「花開け、一条の炎。」
「鑑定眼!」
今すぐにあれについて知りたいと思った私は、左目に万能感知、右目に鑑定眼を染めてまた横に飛び退く。目の前に飛来した1発の炎。それは真っ直ぐに飛び、私の元いた空間をすり抜け、またも壁を穿つ。


 ステータス

 名前 美水 空
 
 年齢 15歳

 職業 複製人形コピードール

 レベル ?

 攻撃? 防御? 素早さ?

 魔法力? 魔力?

 装備 なし

 魔法   上位複製ハイコピー

 スキル 上位複製


 右目に映し出されたもの。そこで私は、1つの欄を凝視し、睥睨した。

 コピー人形ってことは分かった。まぁ私の銃をあんな正確に撃ってきてることから、文字通り本来より強化してコピー可能ってことも分かった。

「だったらなんで15歳なの!!」
右手の銃を引き抜き、5発連続で撃ち抜く。それと一緒に乾いた発砲音もなるけど、気にしない。今だけは怒りに任せる。

「穿て、炎弾。」
感情の籠らない声。全裸。非常に合わない。

「っ、サンダーサークル!」
両目を変化させたことによって視界が塞がれ、防御が遅れた。最後にハイコピーってやつに鑑定眼を当て、直ぐにオフった。

 上位複製
名の通り視認し、1度解析の成功した技を強化させ会得可能。

「思った通りって感じ?」
銃弾加速バレットブースト。」
重ねるように放つ機械音。私の顔で喋らないでほしいと強く思いながら、唐突に加速するその弾をさらに重ねたサンダーサークルで消し炭にする。

 ……強い。さすが私を強化しただけある。
 それでも、知らない攻撃は知らない。なんとか、温存しないと。

 残弾数3発の銃に、ここ最近使っていない魔法は切り札として、逆に使った魔法。それが今の武器。

「銃弾選択———」
「トール!」

———————————————————————

 なんか出て来ましたね。
 今回の敵はありがちな自分。でも違うのは、見た攻撃しかコピーできない代わりに、強化版コピーを使える。

 自分を超える!限界突破!みたいな勇者チックはできません。
 その場合、向こうもしてくるので意味ないです。

 いかに知らない武器を隠し続けるか。ただでさえ強い敵に、有効打を隠し、騙し通す。騙し抜いた先に、勝利がある。そういう敵です。

 そんなことよりもうすぐ雑談k……
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