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9章 魔法少女と天空の城
268話 魔法少女は情報を貰う
しおりを挟むそんなこんなで数分後。
誰かさんのせいでだらんと蕩けた魔族に水をかけたり、火で炙ったりして時間を浪費し続けた。そんな苦労なんぞ関係ねぇ!とでも言うように、全く反応を見せない。
「いい加減起きてよ。」
「はい、おねえさま。」
「は?」
今、完全に言ったよね。聞き捨てならない台詞を吐きやがったよねこいつ。
目をパチクリとさせ、急に意識を覚醒させた魔族をジロリと睨み、私は静かに言い放った。
「やっぱり死のうか。」
「はい。おねえさまが言うのであれば。」
「空、もう諦めましょうよ。もうだめです。こうなったらもう、おしまいです。」
「これって、もしかしなくても私のせい?」
目を逸らしていた現実に無理矢理戻された感覚になり、少し頬を引き攣る。
うん、うん。もういいや。こいつから情報引き摺り出して帰ろう。さっさと龍神始末して、帰ろう。
脳死感溢れる思考の中、百合乃がやれやれと首振って魔族の元に歩み寄る。
「魔族さん、話してください。」
「断ります。」
「ぐすっ。空、この魔族、殺してください。頭だけでなく精神も腐ってます。」
「我慢して。せめて、情報を得るまで……」
2人揃って洗脳にかかったような魔族1人相手に精神を痛める。
よし、頑張れる。頑張ろう。
……というか、なんで私はこんな魔族に怯えてるんだろう。
怯えてるんだから怯えてるんだ、とまたもや脳死的発想にて思考に終止符を打ち、ゆっくり語りかける。
「さっき私が言ったこと、教えてくれる?」
「はい。おねえさま。」
「……う、うん。じゃあ教えて?」
さっきの泣き真似は何処へやら、百合乃は「頑張ってください、空おねえさまぁ?」と煽り口調で手を振ってくる。なんかの当てつけかな。
よし、この話し合いが終わったら百合乃に殴ろう。そうしよう。
「魔族は、魔力の塊から生まれたあやふやな概念です。おねえさまのような人間は初めてですが、ワタシたち魔族は、おねえさまと似たようなものかもしれません。」
「へぇ。」
「ここの魔物は外部の魔力に敏感です。ですので、この森で作った防具等を身につければ、自然と敵数は減ります。何故なら、ここの魔物も迷っているのですから。今のおねえさまたちは、言うなれば黒に白の染料を垂らしたようなものです。」
ただ滔々と語る姿に、「ダメだこりゃ」と思い、吹っ切れることにする。
「それで?」
「ここは神の試練の1つ。ワタシは神に導かれ、おねえさまに出会いました。」
「わたしもいますよ、わたしもっ!」
「ゔぅー!」
「空、やっぱりこいつ……」
「百合乃、耐えよう。」
右手でハウスを示しながら、拳を握りしめる百合乃に待ったをかけた。
「神の試練と………はっ!?」
急に胸を抑え、苦しみ出す。何かを言うのを止められたかのように。ぱっと見、息はしてなさそう。流石の私達も戸惑い、あたふたしながら周りを見渡す。
「え、どうすれば……変態でも、流石にやらないわけには……えっ、えっと。」
「心臓、心臓マッサージをしましょう!」
百合乃もテンパりながら、ネタは控えて案を出す。
心臓マッサージ?どうやるんだっけ。
心臓を圧迫する以外知らないよ?
私は仰向けにし、胸に手を置く。
「空っ、魔物!魔物です!」
「はぁ!?こんな時に?」
「心臓マッサージはわたしがやります。きっかり5センチ沈み込ませるので、安心してください!」
「妙な知識ばっか持ってるね……」
若干苦笑い気味にバトンタッチし、ちょうど魔物と相対した。
「はぁ、いい加減諦めてよ。」
銃は弾丸が勿体無いのでやめ、刀とステッキを両手に構える。
久しぶりの刀だけど、できるかな。まぁいい。結局は魔法で倒すことになるんだしね!
私が駆け出すと、呼応せるように約8匹の四足歩行の魔物達も突っ込んでくる。
「トール!」
牽制に神の雷が降り注ぎ、前衛2匹を薙ぎ払う。
「グルゥゥゥッ!」
一方の黒色の犬は、死体を飛び越えてその長い脚を華麗に動かし影に溶け込みながら鋭い牙を剥く。
「っ、なんで魔物はこうも凶悪面なんだろうね!」
後衛のアルマジロ的な魔物が、遠くから漆黒の針を飛ばす。それを私はサンダーサークルで凌ぎながら、同時に犬も引き離す。
思考する暇がない。久しぶりにまぁまぁな敵と戦うね。向こうは多勢だけど。
「万属剣っ、レイタースタート!」
七色に光る剣が5つ浮遊し、それぞれを追尾するように飛ぶ。
「キュワァッ!?」
その時、アルマジロの下から巨炎が生まれる。
レイタースタートはその場にある魔力を使って発動される。つまり、この場では最高の魔法になる!
「あと5体。まとめて来て!」
怒ったように皆が歯を剥き、犬歯を顕にさせる。私はグッと刀に力を込め、軽く走って跳躍する。
「………炎刃!」
核石で作られた刀身に魔力が染み込み、炎を纏った刃が生まれた。
「グワr———」
それは全てを薙ぎ払い、一刀両断した。百合乃の飛翔刃を参考にした、私の技の1つだ。
————————————
魔物の相手をバトンタッチし、わたしは魔族さんの元へ駆けつける。
「わたしじゃ不満かもですけど、静かにしてて。」
ゆっくり長い髪を梳き、額に手を置く。暑さは感じない。
「わたしはヒールも鑑定眼も持ってない……でも、やれることを全力で!」
口元に手を当て、手首に指を当てる。脈の音がない。もちろん呼吸もしてなさそう。
心臓に手を置いて、全体重をかけて押し込む……で、合ってますよね?。
えっと、一定のリズムで30回、気道を確保して……
「嫌だ!わたしのファーストキスは、空のものなんです。あげたくない!」
ぎりぎりと歯を噛み締め、絶対に唇に触れさせてやるものかと思いっきり息を吸い、口の中に息を吐き込む。……でも、それは正しくない。正確には、吹き込もうとした、だ。
「消え、てる?」
ふと見た手の先は、か細く壊れてしまいそうなほど綺麗で、透明になっていた。
もしかして……さっきの神の試練って……
魔族さんの言葉を思い出し……そして、わたしは理解した。
「もしかして、わたしと同じなんじゃ……」
あの時、手紙に送られて来た他言無用、その約束を違えた時、自分の未来が目の前にあると感じ、戦慄する。
わたしは、空と一緒にいれない……?ううん、大丈夫。わたしは空と行く。一緒に神を倒す。そう。だから大丈夫。
自分の思考は絡まり、目の前で両手の消えた魔族の現実を受け止めることができない。
すると、後ろから激しい風が吹く。それと共に何かが駆けてくる音も。
「百合乃っ!」
「……空?っ……」
大きすぎる感情の起伏により、わたしの精神は限界を迎えた。
消えるかかる思考、霞む目の中、最後に捉えたのが空の姿で、よかっ…………
————————————
「百合乃っ!」
「……空?っ……」
両手が無くなっている魔族と、青褪めている百合乃。意味の分からない状況に混乱を覚えながら、出来る限りの声で叫ぶ。
「百合乃っ?息は……!してる。気絶してるだけかな……」
心配して損、いつもならそういう私も、流石にこの空気で言えるわけがない。
それより魔族のほう。消えてる?
そう結論付け、訝しげに見つめながらジリジリと近づく。
「…………ま。」
「っ!ねぇ、何が起きたの!教えて!」
何か喋った気がして、すぐに体を揺らして問い詰める。この時の私は色々と焦ってて、簡単にそれに触ってしまった。何もなかったのが、本当に幸い。
「ほんとに、なにこれ。なんなの、ここ。」
そう呟く理由は、目の前で起こったことの異常さ。魔族が、形もなく消え去った。
「これが、神の……」
自然と魔族の言葉が頭をよぎり、嫌な汗をかく。
「ダメだダメ。こういう作戦かもしれない。うん、神は全員性格が悪い。変なトラップ仕掛けまくったり、謎を敷き詰めまくったり……それ人神か。まぁなんにせよ、変なのばっかなのは間違いない。」
かぶりを振り、不安を吹き飛ばす。
まずは百合乃が先。何が起こったか聞かないと。
そして私は、一抹の不安を思考に残しつつも、倒れている百合乃に目を向けた。
———————————————————————
有言実行3000字!つまり、私はトーク回をするということです。
まぁ、そこは置いといて本編に触れましょうか。シリアス感出てますが、すぐ戻ります。(ネタバレ)
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