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9章 魔法少女と天空の城
267話 魔法少女は恐喝する
しおりを挟む「うるさいなぁ。龍神からの直接攻撃とか聞いてなかったんだからしょうがないでしょ?」
「その間、わたしは涙ぐましい努力を……およよ。」
「私も銃作ってたんですけど?」
「……………」
目の前に魔族がいることも忘れ、言い合いを続ける私と百合乃。ちなみに、ほんとに忘れてる。
「いい加減にしろ!ワタシという高貴なる魔族がいるのだぞ!初めは震えたが、今は居心地の悪さしか感じん!」
「いや、帰ればいいじゃん。」
「……………」
また沈黙が流れ、小さくワタシ、魔族。魔族、魔族?と、自問自答してた。
流石にそろそろ相手したほうがいいかな。向こうからしたら自分がボスキャラなんだし。
しゃーなしといった具合に、魔族の女性を一瞥する。
「逃がしはしないぞ。ワタシを、魔族を散々虚仮にしてくれた借りは返す。」
目に力を込め、殺気漂わせて言葉にする。
「ふぅ~ん。勝てると思ってる?」
「何がだ?」
「多勢に無勢、とまではいかないけど2体1。攻撃の回避手段も遠距離攻撃手段もあって、そっちは肩をやられてる。どうやって勝つつもり?」
「そうです。あなたに勝ち目はありません!」
何故か百合乃が自信たっぷりに言い放ち、ふふんと鼻を鳴らした。
百合乃は軌道予測以外今のところ使い物にならないから、そんな胸を張られてもね。
そこで生まれるのは無駄にでかい胸部の双丘が目立つだけだよ。
「ふっ。魔族の力を舐めるなよ、人間。たとえワタシに傷を負わせたとて、何度だって回復を……」
「そう?ならやってみようよ。」
パァァンッ!いつも通りの音。その先に目線を移すと、寸分違わず再生を始めた傷口に着弾していた。
よっし、私の空間伸縮テクも上がってる!
「随分と長く話してくれてたから、隙をついちゃった。ま、元から殺し合いなんだから文句を言うのはお門違いってものだよ。」
「……空、なんか悪役みたいです。」
「上等上等。この世界でどうしようと、私には関係ないしね。龍神を倒すんだから、そのくらいのガッツがないと。」
銃を握る手に力を込め、えいやえいやと百合乃の鳩尾にジャブを食らわせる。
「空空。わたしに構ってくれるのは嬉しいけど、向こうのをどうにかしなきゃじゃないです?」
「あー、うん。」
怒りの中にしっかりと快感を生み出していそうな表情をする魔族を前に、少し引く。
百合乃と同じで、見てくればいいんだよ。見てくれは。喋った途端だめだこりゃって感じ。
「くっ、くっくっ!ワタシにここまでさせるとはっ!楽しい、楽しいぞ!」
「なんこれ。」
「知りません。」
1人、三文芝居を演じる魔族さん。さぁ、逃走3秒前。
「このような面白い者。逃がしてたまるものか!」
「……はぁ。力の差を理解しようよ、高貴なる魔族さん?」
「ぐっ!?」
そこには、ステッキ1つで腹を突き刺さされ、貫通はしていないものの口から血を吐く魔族の姿があった。
気持ち悪いから逃げようかと思ったけど、こんな怪しさ満天の生物、逃しちゃダメだよね。古事記にもそう載ってる。
「ねぇ、百合乃。」
「なんです?」
「恐か……コホン。情報を引き出すためには、どんな口調がいいと思う?」
「ヤクザでお願いします。」
「……オッケー。」
百合乃の決定により、今ステッキに突き刺さっている魔族は魔法少女による問い詰めが始まる。
「ねぇ、あなた。魔族って言ってたよね?」
「ぐっ、はぁ、はぁ。そうだ。ワタシは高貴なる魔族で……」
「魔族とは何か、ここはどこか、どうしてあなたは魔物に襲われてないのか、なんでここにいるか。全部吐こうか?」
「断る。」
「ん?」
ビクッと体を震わせる魔族。正直キモい。
今からこれを恐喝するのかー。なんか、逆効果な気がしてきたんだけど。大丈夫だよね?
心の中では完全に恐喝と隠しもせず言い切る。むしろ清々しくていい。
「おい、お前立場分かってんのか?あぁ?お前は殺される側で私が殺す側。舐めた態度とってたら、次はその汚ねぇ口とココ、吹き飛ばすぞ?」
「ひぃ……」
トントンと銃口を向けた先にあったのは、彼女の子ky……下腹部。
「ひぃ……じゃねぇだろ?言っていいのはイエスかはいの2択だ。いいな?せーの。」
「はっ、はい!」
「そうだ。キリキリ吐けよ?」
誰がどう見ても裏社会のドン的な脅しに、我ながらいい仕事ができたと爽やかな汗を振って百合乃の元へ歩く。一方で、今の一瞬の出来事のうちに魔族の性癖が歪み、今や漏らしている。それには気付いてない私。
ふぅ~。なんかスッキリしたかも。特に「立場分かってんのか?あぁ?」の部分。
誰しも意外な能力があるものだね。そんな能力は要らなかったけど。
脳内で反省会を開き、概ね良好と判断を下す。百合乃はジトっと私を見つめ、一瞬下腹部を両手で隠した。
「ううっ、撃たないでください!」
「撃たないよ。」
「そそそそっ、それに……しても、上手い演技でしたね?前職若頭とかでした?」
「百合乃がやれって言ったんだよ?分かってるよねそこ!」
「ほっ、ほら!魔族さんからお話を聞きましょ?ねぇ?」
「……分かってる。」
百合乃に向かって恨みがましい視線を送り、もう2度とやるもんかと心に誓った。
そして、その誓った約束を守ったことは数少ない。
つまりはまたやる可能性があるってことだ。
百合乃の前ではやらないとだけ決め、銃を収納してステッキを握りなおす。その間に百合乃は、魔族の前に歩み寄る。
「仕切り直して……魔族さんでしたっけ?わたしたちに情報をくださいませんか?ちょっと、急ぐ訳があって……」
文字文字と体をくねらせ、意味ありげに私を一瞥する。
「何もしないよ?何その恥ずかしげな顔。」
「あれ?バレましたか。」
「百合乃もあれになる?」
「あれ?」
言葉の意味が分からず、視線が私の指をなぞるように進み、答えの場所にたどり着く。それは、百合乃が今話しかけていた魔族。
「ぽぉ……」
蕩けた顔で明後日を超えて明明後日を見ている。百合乃はくねくねするのに忙しくて、気付いてなかった。
いや、違うね。これはもう、魔族だったもの、だ。
高貴さのかけらもない(元からなかったけど)その姿に、百合乃は完全に冷静になり、「どうしましょうね」と呟いた。
「世の中は、残酷なんだよ。」
「それは空のせいですけどね。」
———————————————————————
今回も見事にはっちゃけましたね。魔族さんは魔族という存在を出すためだけのキャラに成り下がりました。
ふと思いついたんですけど、一回丸々1話無駄なトークに費やしてみたいんですけど、どうです?雑談で本編を埋め尽くすんですよ。楽しそうじゃないです?
我が作品は致命的に文字数が少ないです。えぇ、それはもう少ないです。なので、このトークを機に平均2300字から3000字まで頑張ろうと思います。
と、いうわけで一度くらいいいですよね?この回、267話なんで70話終わったらやりましょう。そうしましょう。
あ、3000字の件は善処するということで。
文字数は普通に私自身気にしてますので。
よっし、クソどうでもいい雑談権ゲットだ。
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