魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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9章 魔法少女と天空の城

266話 魔法少女は魔族を見つける

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 パァァンッ!パァァンッ!

 薄暗い森の中で、異世界ではそうそう聞くことはできないであろう発砲音が聞こえる。

「仲間が殺されてるって言うのに!なんでここの魔物は自分から突っ込んでくるわけ!」
「知らないよ!わたしは空みたいに1撃で仕留められないんだから、助けてください!」

「そこまでくるといっそ清々しいね!」
普通なら戦場であるはずのこの森も、私達のバカトークで若干温度が下がる。

 この森に来てからもう何10分か経った気がするけど……一向に魔物の攻撃は止まないんだよね。波状攻撃で圧倒してくる。うん、実際は蹂躙されてるだけなんだけど。

 魔物の血液が飛び散るこの悲惨な光景を横目に、マガジンを重力操作で入れ替える。

「空、いつの間にそんな高等技術を?」
「魔物に集中して。レベルが足りないってことなんだから、しっかりここで頑張って。」

「グラァオッ!」
「邪魔。」
銃底を武器に、側頭部を吹き飛ばす。その勢いで回転し、後ろに接近する四足歩行の迷彩柄の魔物に向けて銃を放つ。

「キュゥーッ!?」
「あっ、ごめん!」

「キューちゃんはわたしが回収しとくので、空はやってください!」

「戦わない口実を……まぁいいや。頼んだよ!」
「はい!」
服の下に隠してあったキューに心の中で謝りながら、接近する5匹の魔物全員にそれぞれ銃撃を放つ。

「ルワォッ!」
「「「「ワォフッ!」」」」
リーダー格らしき真っ赤な目をした腕だけムキムキな猿の合図で、その他の筋肉猿達が回避を行う。

 っ、さっきまでの戦闘スタイルを見てた?さすが猿。頭が働くみたいだね。

 ま、こっちのが手札は多いけど。

「ファイアサークル!」
その一瞬の隙を見計らい、空いた左手でステッキを握り叫ぶ。

「百合乃、今のうちに!」
「あっ、はい!」
「キュキュー!」
私もその炎に便乗して即座に撤退し、百合乃の後を追った。

 ここ、竹林の村の入り口みたいに入ったら出られないんだよね。万能感知も魔力だらけで見れなくて、多分方向感覚も狂わされる。
 あの時は広さがまだマシだったからなんとかなったけど、今回は……

 結構な難関ポイントに、頭を悩ませる。

「空っ!」
悩ませていた思考を中断させんと斬り込まれた大声。その瞬間、頬に殺気を感じる。

「身体激化!」
頬の筋肉を魔力に増幅させ、その殺気を受け止める。少しちくりとした感覚をがし、すぐさまそれに触れる。

「……針?なんでこんなも……っ!?」
横腹に強烈な衝撃が走る。自慢のステータスと装備のおかげで痛みはないけど、まるで垂直に蹴り上げられたのかと思えるほどの衝撃で回転し、三半規管がやられる。

 姿が見えない?万能感知…‥は使えない。重力操作?使える?やってみないことには始まらない。
 よし、この魔法は今日から私のものだ!

「自作、重力反転!」
一瞬だけ、体がフワッと浮き上がる感覚に陥る。というより、真上に引き寄せられる感覚を覚え……

 えっ、できちゃった……?

「……じゃなくて、見つけた!」
パァァンッ!人影に向かって銃を打ち抜き、ほんの数秒経たずで元に戻った重力で普通に着地する。

「空!今のなんです!?わたし、フワッとしましたよ。まさか、この前言ってた重力操作です?」
「そうだけど…‥って、今そんなこと話してる場合じゃ……!」
バッと振り返り、さっき人影を感じた方向に目を凝らすと、肩口を抑える女性らしき人影が見える。

「誰です?」
百合乃が私の隣に立ち、サーベルを構える。

「効いてない、みたいね。」
妖艶な笑みを浮かべ口を開き、こちらへ歩いてくる。

 人?そんなわけない。今も未来も、ここにいたら魔力の吸収関係なしに圧に耐えきれなくてどっちみち死ぬ。
 じゃああれは……

「っ、やってくれる。」
現れたのは女性。ドクドクと肩から流れる血を抑え、ゆらゆらと歩いてくる。

「ワタシもワタシで生きるのに必死なんだ。ここらの魔物なら、簡単に倒すことも追い払うこともできる。今なら、お前たちを……」
「で、私達に何をして欲しいわけ?」

「ふふっ。そう、結論を急かす必要はない。なぜなら……」
パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!全弾打ち尽くし、背後から迫った杭状の魔法が吹き飛ぶ。

「百合乃の軌道予測でバレバレなんだよね。」
「なっ!」
目の前の自称魔族がめっちゃ驚く。それはもう、目をカッと見開いて。

「ふふ、ふふっ!震える!お前達のような人間は未だかつてみたことなどない!」
と言いつつ、下腹部を抑えて恍惚とした表情で天を仰ぐ。

 この人も、子宮が震えるタイプの変態かぁ。百合乃と同族じゃん。

「今、失礼なこと考えましたよね?わたしはあそこまで変態じゃないです。TとOは守ってます。」
「Pも守ろう?」

「くっ、希少な魔族を相手に無視などと……震えるではないか!」
先程までの妖艶さは何処へやら。ご覧の通り、気持ち悪い笑みと崩された言葉遣いで頬と下腹部を抑える。

「確かに、ごめん。あんなのとは仲良くしたくない。百合乃はまだマシだった。」
「「マシ」じゃなくて「いい」でお願いします。」

「百合乃の方がいい。」
「の方をなくしてください。」
「無理。」
「酷くないです?」

「無視か。心地よかったが、まぁいい。今は力が必要な時だ。お前らを食って、力を取り入れてやろう。」

「こっちは空に全てを捧げとんですよ!それなりの見返りをくれてもいいんじゃないです?」
「知らないよ。勝手についてきたんでしょ。」

「……食って、力を…………」
手を伸ばそうとした魔族の姿は、全く私達の目には入っていない。伸ばされたその手は、消えかかった言葉とともにゆっくりと下げられていく。

 なんと哀れな。

———————————————————————

 魔族さんのキャラ、だいぶ迷走してますね。次回からはちゃんと定められていて欲しいです。未来の私、ファイトです。

 ちなみにですが、今月の20、21日あたりに私的な遠出があるので投稿ができない恐れがあります。頑張って書き溜めて投稿しようとは思いますが、今の私はとてつもなくテンションとモチベが低いので、1日1話のノルマしかやれておりません。
 ということは、です。察してください。
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