278 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争
260話 魔法少女は特訓へ向かう
しおりを挟む音もなく道を走るピンク色で奇怪な物体と、2人の怪しげな人間の影。
異世界には全く似合わない私達とバイクが駆け抜け、後ろの百合乃は「ひゃっほ~」と両手を上げて風を堪能する。
「危ないから!落とすよ!」
「空が1番危ないです~。」
「ちょっ、この辺は魔物出るんだから注意してよ、マジで!」
「分かってるよ。」
敬語なのかタメ口なのか未だ分からない喋り方に若干違和感を覚えつつ、仕方なく腕を腰に回させる。
こんなことしたらセクハラまっしぐらだけど、天国へまっしぐらはもっとダメだから、まぁ……仕方なく。ほんとに仕方なく。
なんかムズムズする。
「くすぐったいんだけど?」
「くすぐってるんです?」
「だから疑問やめて。あとくすぐるのもやめて。とりあえず安全乗車で。」
「それを言うなら安全運転じゃないです?」
「私はスピード違反とその他諸々犯してるけど、この世界では罪にはならない。安全運転の範疇だよ。変な乗り方しないでって言ってるの。」
渋々といった風にギュッと抱きつく百合乃。それはそれでよかったのか、なんか「ふふっ」と笑い声が聞こえてくる。
……襲われそうで怖いんだけど。
名前通りでネタじゃなくてほんとに百合だったりしないよね……?
それが事実だと、私は気づいていないのであった。
ただ、信じたくなかったというだけともいう。
「ん~……にしても、当たりますね?」
「え、何が?」
突拍子もないことを言い出す百合乃に、冗談抜きに眉を寄せる。
「髪です。空の綺麗な青髪です。」
「あ~ね。風圧でそっち行っちゃうのか……まぁ、切る気はないけどね。今まで前以外そこまで切ってこなかったし。」
「いえ、ご褒美なので結構です。」
「それ聞くと私がよくないんだけど?」
いつも通りの変態発言に苦言を漏らしつつ、この長い瑠璃髪をどうしようかと考える。
ポニテ?それはなんか嫌。私がすると絶望的に似合わなさそう。
ツインテ?馬鹿じゃないの?
……どうしよう。
そんな風に本気で悩んでると、肩あたりにツンツンと指で突かれる感覚がする。
「これ聞いたか覚えてないんだけど、その髪って地毛なんです?」
「あ~聞かれたような聞かれてないような……ごめん、覚えてない。」
「酷いっ!」
「いや百合乃も覚えてないじゃん。」
「あはは~」と、誤魔化すように苦笑する。どうせ頭でも掻いてるんだと思う。
「でも青色の色素を持つ生物って10もいないって聞いたことありますよ?ほとんどが光による目の錯覚だって聞くし。」
「いやね……なんの因果か知らないけど、私は異世界の血が混ざってて元から魔力を持ってたみたい。だから、この服が無くても一応は魔力を使えるし、髪色も魔力の質に合わせられてるらしい。」
「チートじゃないです?」
「そう言われても、まだ量とか細かいこととか分からないからどうとも言えないよ?魔法は感覚が残ってるから魔力があれば撃てるだろうけど、ステータスとかスキルは使えないし。」
なんて会話をしていると、魔物が普通に現れてくるゾーンまで来ていた。
あれ、もうこんなとこに……万能感知の地図でも街が把握しきれない……これ時速何キロだ?
え?この分だと100キロぐらいある気がするんだけど……気のせい?
バイクを弧を描くようにしてブレーキを踏み、草を轢きながらカーブし止まる。
「うわっ!」
「ぶぅっ!?いきなりぶつからないでよ。」
「そんなこと言ったって準備ができてないんです……無理言わないでほしいですよ。」
頭から私の後頭部に直撃した百合乃を振り返ってジト目で睨む。百合乃は百合乃で涙目で額を抑えていた。
「多分結構遠くまで来たと思う。今日はここでみっちりレベル上げてもらうからね?」
バイクを収納でしまい、ステッキをビシッと百合乃に向ける。
「まだ痛いんだけど……いじめる気です?空ならいいです!welcome come on!」
「日本語!……いや英語か。なに?ウェルカムカモンって!どこのごち○さよ!」
「ご○うさ……?」
「知らないでやってるの、それはそれですごい。」
いちいち上手い(内容ガバガバ)な英語に思わずツッコミを入れ、そろそろ馬鹿らしくなってきたので文字通り首根っこを捕まえ、引きずって魔物のところまで運ぶ。さながら親猫に運ばれる子猫のよう。
ほんとに百合乃の扱いはめんどくさい……ほんとにどっかに捨ててこようかな?
段ボールを物質変化で作って『拾ってください』とでも書けば心優しいヤンキーに拾ってもらえるかもよ?
「今酷いこと考えましたね?」
「心を読むとかプライバシーの侵害だよ?」
「いきなりステータス除き見たエッチな空がいいますぅ~、それ。」
「誰がエッチだこら。おいこら、逃げるな!」
地味に怒気の篭った声に気が付いたのか、振り子のようにユッサユッサと揺れて(どこがとは言わない)逃れようとする中、ぐっと握る手に力を込め、にこやかにこう宣言する。
「放さないよ?」
「あはは……や、ややっ、ヤンデレですね、空は……ぎゃぁー!痛い、痛いっ!」
私は掴まれた首に容赦なく魔力を注ぎ、筋肉の痛みを気にせずに身体激化を使う。
「千切れる、千切れるです!help、help!」
「よしよし。そんなにヘルが好きなら、百合乃は1人でヘルに行こうか?」
「hell!!!!!!!!!!!!」
誰もいないこの辺一体に、この日1番の絶叫が鳴り響いた。そこには、どんな魔物も逃げ帰りそうな気迫(今までの鬱憤)を持った少女が、とても清々しい笑みを浮かべていたのを見た。(百合乃が)
———————————————————————
特訓回にしようと思ったんですけど、意外に話が盛り上がりましたね。
特訓は次回に回されます。
それと、私的な疑問なんですが文字数ってどのくらいがちょうどいいんですかね?
このくらいが初心者にはちょうどいいんですが、「もっとボリューム寄越せやゴルァ」って方がいらっしゃったら、………………まぁ、えっと……………頑張ります。
あぁでも、いつも言っているとおりこの作品は自己満なので過度な期待はせず、道端のカラーコーンとでも思ってくれれば。
気に入らなかったら蹴飛ばすくらいの感覚で見ていてください。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる