魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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8章 魔法少女と人魔戦争

255話 魔法少女はお役御免

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「「えげつない。ですます。」」
そんな言葉が耳に届く頃には、目の前には血には濡れてないけどそれ以上の苦痛を味わったであろう街主の姿があった。

「あ。やりすぎちゃった?」
某web小説にありがちな「私、また何かしちゃいましたか」を実際にやってしまった。……場面は大きく違うけど。

「セ、セーフ?です。」
「生きてるからいい。ます。」

「そ、そう……」
なんか気まずくなったので、掴んだ胸ぐらを離す。街主は抵抗の余地すらなく床に沈む。

 何をやったか詳しく言えないけど、とりあえず人間の尊厳は宇宙の彼方に飛ばしといた、とだけ言っておこう。
 ……流血沙汰にはなってないからね?

 ほんとだからね?と、脳内で自分を擁護する。

「とりあえずこの代はわたしたちがなんとかする。です。」
「矯正してやる。ます。」

「いい方向に変える。です。安心して休むといい。です。」
「次の代になったら帰る。ます。」
2人はそれぞれ言いたいことを私に伝え、とりあえずは大丈夫とのことで私は帰された。

 ……え?つまりそれって、2人が政治するってこと?

 気づいた時には遅く、もう街主の家の門は閉まっていた。一体これからどんな矯正が行われるか………ま、まぁ。自業自得だ。

 そう思い込み、うんうんと1人頷いた。

「空~!探しましたよ。キューちゃん置いてどこ行ってたんです?」
ようやく厄介ごとの1つを終わらせたのも束の間、今度は百合乃が歩いてくる。

「……はぁ。」
「なんです?その露骨に嫌そうな顔。」

「ようやく休めると思ったのに休めないと思うと憂鬱で。」
「それじゃあ私と、真夜中のランデブーでもします?」

「今真昼だけど?」
真上の太陽に指を差し、キューだけ返してもらってさっさと退散する。

 私だって疲れてるんだよ。こんな変態の教育係とかまっぴらごめんだよ?

「嘘です嘘です!遊びましょう!一緒に遊びましょう!えっちぃのは抜きです!」
「元からそんなのはない!」
「キュッ!」
まるで今までそういうことをしてきたかのような言種に、勢いよくツッコんだ。

「そうです、空はそれでいいです。」
「何言ってるの?」
「なんでもないです。ででっ、どこか目的地は?」

「ないけど?」
「へ?」
間抜けな声と共に視界から百合乃が消え、後ろを振り返ると眉を顰めて立ち止まる百合乃がいた。

 あぁ、うん。言いたいことは分かるよ?行き先もなく帰り先もなく、散歩でもないのにただ街を歩くとか、私こそ変人だって。
 でもさ、私だって家がないんだよ。仕方ないんだよ。

「その心は……?」
苦し紛れに出てきた声。百合乃らしからぬ応答だ。

「家が無い。」
「not have house!?」
「いや英語うまっ!?」
「キューッ?」
結構ネイティブに発音してきて、そっちの驚きで突然の英語にツッコめなかった。

 いや、元からツッコむ気なんてないからね?

「ここ過去だって前言ったじゃん?」
「はいはい。」
「未来というか、向こうでは私も友達とか奴隷とかいて、冒険者ギルドの裏に屋敷あるんだけど……」

「ん?」
「ん?」
互いに顔を見合わせ、首を傾げ合う。

「奴隷?屋敷?危険なワードが盛りだくさんな気が……」

「あっ、あぁそれね。奴隷って言っても肩書きだけだし、家は常人じゃ絶対住まないような丘だからね?」
それから紆余曲折あり、なんとか話を終わらせて街をぶらつき始めた。

 ってか私、武器作りたいんだけど。

 もう構想とか出来てる。
 刀は作り直すとして、後もう1つ。

 もっとかっこいいの作りたいけど、私の知識と技術力じゃ、あれくらいが限度かな……

 レールガンもどきのミョルスカイを空想しつつ、ぶらぶらと殺風景な街並みを歩く。

「なんだか廃村みたいですね。」
「まぁぶっちゃけね。」
「それでも、これが空の言う活気のあるいい街になるんですね。」
「そうだねぇ。」
軽く相槌を打ち、そんなことは気にせずに滔々と話を続ける。

「空はこれを守って、次に繋げたんです。凄いことですね。流石はわたしの空!」
「いつ百合乃になったの?」

「今この瞬間?」
「なぜに疑問系。」

「さぁ?」
「私に聞かないで?もっと分からないから。」
漫才チックに言葉を交わし合い、まぁ、こんな休日もいいかなぁ、なんて思ったりしなくもない。

 友達がいる休みって、結構充実するんだね。百合乃を友達と言っていいのか知らないけど。

「空はこれから何を?」

「んー?頃合いを見たら王国にでも行って、龍神の棲家でも見つけるよ。どうせあの神のことだ。場所を教えてくれるわけない。」

「信用ないです?」
「もちろん。」
私の澱みのない即答に、若干苦笑いを浮かべていた。

「わたしは、どうしましょう。」

「流石にそのままほっぽったりしないよ。ある程度強くなるまで見ててはあげるけど、あとは勝手にやってね?」
「空に見てもらえる!?わたし、頑張るっ!」

「何その異常なやる気。」
苦笑紛れにそう呟き、バッ後ろを振り返る。

 気配?なんの気配?嫌な予感がする、私が過去に来たあの瞬間に近い。
 なに?何かに押さえつけられてるような感覚……

「どうしたんです?」
「キュー?」
「いや、なんか変な気配が……っ!」
体が震えた。武者震いや寒気などではない。謎の嫌悪感による、身の毛もよだつような震えだ。

「本当にどうしたんです?」
そんな問いには緊張で答えられず、辺りの全てが敵に見え始める。どこからいつ攻撃が飛んできてもいいように、腰にちょうどよくついている輪に挿しこまれたステッキを引き抜く。

「……キュウッ!!」
「キュー?……っ、何か来る?」

「え?どうしたんです?え?え?」
私の目の前の空間が揺れ始め、キューをギュッと掴んで警戒を強めた。

 今度は何?まぁでも、やるっていうなら私はやるよ。できる限りのことは尽くすつもりだ。

————————————

 龍神、ルーは自身の棲家で淡々と干渉を始めていた。

 神は転生者にギフトを与えるというのは周知の事実だが、そのギフトに他神が干渉することはできない。
 それも、相手は創滅神。

 だが、彼はただとある文を送るためだけにその苦難の道を歩んでいた。

 理由はひとつ。彼の誤算だ。というより、罠に嵌められたから。

 まず、彼はあの少女を楔にするべきではなかった。エディレンにより存在と所在や確定されている強者であるが故に選択した楔役だが、そんな彼女が龍を殺すという可能性が完全に頭から抜けていた。

 元から数が減り始めていた龍が滅ぶ可能性を孕む現代から、1秒でも早く去りたかったが故の浅慮だった。

 そして未来にも逃げ帰ることができなくなり、このままの未来を辿ると戦争も終結する可能性が高い。

 そろそろ、。彼は、現状を知らない。知った瞬間、「やべ」と思い、戦争を終結させる。それが正史であり、後に自身で改竄するものだ。

 もう時間もない。このまま行くと、どちらにせよ龍は滅ぶ。未来にも戻れず、過去に縛られ、縋るように彼女を殺そうと決めた。

 そうするしかないのだ。もう、彼には選択肢は残されていない。

 そして今、干渉に成功する。
 そしてその瞬間、未来は決定された。

———————————————————————

 少々早いですが、そろそろ章を変えるということでシリアスパート(?)にしました。

 とりあえず龍神は不遇キャラで。

 このままだと禁忌を犯しただけ。ソラさんを殺しても時間軸が歪むだけ。
 どうにも出来ません。
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