魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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8章 魔法少女と人魔戦争

253話 魔法少女は帰還する

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「皆、今から帰還を開始する。特に異変も見られないため、通常通りの隊列で行くぞ!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
前々日のプチ宴会の勢いが未だ治らないのか、そんな大声じゃなくてもいいでしょってくらいの声量で返事を返す。

 ほらほら、リーシーさんも若干呆れ気味だよ。

 と言う私達も、遠目から引いてるけど。

「男臭いって、こういうのを言うんですねぇ。」
しみじみと頷く百合乃。

「まぁ、仕方ないんじゃない?」
適当に返事をしておく。

「うるさい。です。」
「やかましいのは嫌い。ます。」
ですます姉妹がいつの間にか隣に来ていて、私の腕にいたキューをしれっと盗んでいた。

「キュウーッ!」
心の中でごめんと謝り、目を細めてキューを撫でている赤髪の少女に声をかける。

「一昨日から見てないけど、どこ行ってたの?」

「力を補充してた。です。」
「お前のせいでなくなった。ます。」

「それ、関係ない。です。」

「いやないのかい。」
思わずツッコミを入れてしまう私を、可哀想なものを見る目で見つめる2人。

 そんな目で見ないで。地味に傷つくから。

 そんな切実な願いは叶わず、出発の順番が回ってくる。

 隊列の順番はこうだ。
 先頭にリーシーさん。その後ろに等間隔で空力使いを配置し、それを守るように騎士たちが隙間を埋めていく。そして最後列に私達4人。

「一緒にするな。ます。」
「しれっと思考読まないでくれる?」
そう言ってもオレンジ髪の少女はどこ吹く風。呑気に鼻歌を歌って歩いている。

 ……鼻歌?そんなキャラだっけ?

 そんな疑問が脳内に出現するも、百合乃の言葉で掻き消される。

「幼女キャラ、可愛いです。もふもふしていいです?」

「ダメ。です」「ます」
ほとんど同時に言い切り、百合乃から距離をとる。

「えー、酷いですー。………ふっ、それじゃあ空にします!」
私の腕に抱きつき、またもや発情期の猫のような唸り声と共に擦り寄り、今にもゴロゴロにゃーとでも鳴きそうに見える。

 いや、今の完全に私狙ってたよね?スムーズな感じで私にシフトチェンジにたけど、そっちが本命だったよね?

 思わずジト目で百合乃を見るけど、そんな視線も気持ち良さげに受け取る百合乃。正直…‥気持ち悪い。

「今酷いこと考えました?」
「い、いや?」
「考えましたよね?」
うるうるした目になる百合乃。その百面相はどこから持ってきたのかと思う。

 まぁ、百合乃は無視に限るとして、この2人……は、話せそうにない。
 何か話題、話題…………

 あっ。

 1つ、話題というか疑問のようなものが浮かび上がり、その探求欲(?)に従って脳内に浮かんだそれを質問してみる。

「ねぇ、なんで2人はあんな街主に協力してるの?」
3虐こと街主のことを口にすると、ぐっと顔を歪める。(ちなみに3虐は微妙に語呂が悪いためやめた)

「なんで……です?」
「……っ、知らなくてもいい。ます。」
2人とも明らかにおかしなリアクションを取り、若干の汗を滲ませる。

「別に否定とかしないから。単純に気になったというかなんというか……」

「………主導権を握られた。です。」
私の優しめの声音を聞き、ゆっくりと語り出す。

「……………まぁいい。ます。精霊は力そのもので作られてる。ます。その力の操作を魔道具で奪われた。ます。」
「向こうは力の繋がりから辿れる。です。気1つでわたしたちは滅ぶ。です。」
視線で人が殺せたら、簡単に数人の人が亡くなりそうな程の鋭い眼光になったオレンジ髪の少女。どうにか出来ないかと思考していると、百合乃が腕元から声をかけてくる。

「なんか重大な話です?」
「まぁそうだね。聞いてたの?」
「はい、もちろん。バッチリと。」
キリッとした表情で言うも、体制を含め何1つとしてかっこいいところはない。

「つまり、精霊の体は力そのものので、その力の制御を奪われてるから仕方なく従ってる、ということです?」
「まぁそうだね。……っていうか、よくそこから話聞いてまとめられたね。あのですます語を初見で看破するとは、お主もやりおるの。」

「げっへっへっ。空ほどではありませんよ。」
などと、地味にズレた悪代官ごっこをする。それを見ていた2人が、話すんじゃなかったと言いたげな表情で見つめている。

 それにしても繋がり、か。脈と似たようなものかな?それなら切っちゃえば良くない?
 あ、それが切れないのか。

 ……ちょっと待って。私、そういうの見れる魔法あるよね?

 そう思い、万能魔法(私の中で)の1つ、魔導法を発動する。

 魔力操作から魔力誘導、相手の魔力への干渉侵入までなんでもござれの万能魔法。できる可能性は高い。

「ちょっと確認したいことがあるから、もし異変があったら言ってね。」

「はいは~い。」
「うむ、なにかね百合乃君。」

「私のハートが、空へのラブでクラッシュしそうです!」
「廊下に立ってなさい。」
百合乃の「え~」という反応はガン無視し、魔力付与を右目に使い、魔導法を侵入させるという最近覚えた荒技を披露する。

 といっても、茶色と黒の目が若干紫味を帯びるだけだけど。

 改めて2人の体をまじまじと見て、大きめのため息を1つ。そうだ、そうだよ。

 見つけちゃったんだよ!

 思考が完全に自我に引っ張られ、大声(脳内で)が炸裂する。

 2人の体から1つずつぐ~んと伸びた線を見つめ、複雑な気持ちで眺める。

 こんな簡単でいいの?君は君でこんな簡単に見つけられてプライドは大丈夫?

 生きてるはずもない線に問いかける。

 まぁ…‥‥そこは置いとこう。
 つまりは、これを切ればいいと。

 とりあえず魔導法を侵入させ、私の魔力を流す。元あった線を私の魔力色に染め上げ、そのまま魔力操作をしてプッツリと切る。

「「っ!?」」
背中をなぞられたように急に背中を反らせ、目を見開く2人。その光景に百合乃は「何事っ?」と顔を上げた。

「今、何した……ます?」
「繋がり切った。」

「本当に言ってる……です?」
「ほんとに言ってる。」

「こんなあっけなく……です……」
何やら自分達の情けなさに嫌気が差したのか、グデっと項垂れて歩く速度が落ちる。

「わたしたちのプライドは、ズタズタ。ます。」
線の代わりに、2人のプライドが傷ついたみたいだ。

「ねぇねぇ。じゃあ、あのクソな街主から離れられるし、仕返しできるってことでいいよね?」
楽しそう微笑む私を見て、2人は頰を引き攣らせる。その理由は、瞳の奥が冷酷に残虐性を帯びていたからにほかならない。そう、絶コロだ。

 よーし、復讐という名の制裁を加えてやろうか。

 期間開始30分。どこぞの街主は、生死を分つ決断をしなければならなくなった。

———————————————————————

 はい、私は今とてつもなくストレスが溜まっております。
 その原因は鼻詰まり、目の痛み、腹痛です。そんな中執筆した私coverさんに、どうかお慈悲を。
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