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8章 魔法少女と人魔戦争
252話 魔法少女は特訓する
しおりを挟む「用意はいい?ビシバシ指導するからね?まぁ1日だけだけど。」
「いえっさー、空教官!わたしの色んなトコロを指導してください!」
「うん、黙ろうか?」
いきなり下ネタをぶっ放していくハイスピードを、真っ向から断ち切る。
「今日はスキルの使い方を……生きる術を教える。この世界は昨日も言った通り、魔物がうじゃうじゃいるし、人も場合によっては襲ってくる。その点、百合乃のスキルは優秀だからね。頑張れば強くなれるよ。」
安易に褒めるとすぐに調子に乗るので、スキル、というのを強調する……
「わたしにはそんな魅力があるんですねぇー。ふっふっ~、空の気持ちは分かってますよ!」
も、全く効き目はなかったらしい。
難聴かい。
心の中で、ボソッとツッコむ。
「あー、はいはい。すごいすごい。」
「棒読みやめてください!」
「あーうん、そうだね。」
「空~!」
え~んえん、とやたらと芝居がかった鳴き真似をした百合乃を無視し、特訓を始める。
「まず優先度ね。軌道予測、これまず大事。これがなければ、今の百合乃じゃ実力が伴わずにサーベルもまともに振れない。」
「どうやるんです?」
「知らないよ、他人のスキルでどうやって確かめろと。」
「そりゃそうです。」
仕方なし、といった風に腰につけられたサーベルをその鞘から抜き去り、輝く刀身を露わにさせる。
流石神からのプレゼント。私と違って随分とカッコいこと。
不満混じりの称賛を送る。
「じゃあこれ避けてみて?出来れば同時に魔断でザクっと。」
そう言いながら出したのは、直径5cm程度の球。魔力の塊のため、そこまでの威力はない。これを、結構な速度で飛ばして避けてもらう。
「いきなりっ、すぎますっ!ぐふっ、痛い!地味に痛ぐふっ!」
「痛いなら避けてー。」
「無理で、ぐふっ!す、ぐふっ!」
「避けれないと死ぬよー。」
「残酷ですぅ~!」
今度は完全に目が潤み切り、涙が滲む。でも、そんなの構うものかと魔力弾は飛び回る。
おーう、頑張れ頑張れー。ファイトだー。
そんな適当な応援をすること約10分。コツを掴んできたのか、段々避け始めてきた。
「おっ、結構余裕になって……?」
「潜在能力あるんじゃない?」
適当な受け答えに満足いったのか、嬉しそうに避け続ける。
「いいじゃんいいじゃん。はい、魔断で斬って。」
「いきなりです?」
「こっちだって魔力消費バカにならないんだから、そんなバカスカ打ってられないよ。」
「空のためです。仕方ない。」
小さく呟くと、サーベルに意識を向けて……
「ぐふっ!?」
「はいはい、意識を持ってかれない。」
「い、いやぁ……軌道はなんとなく分かるんですよ?こっちくるなぁーって。それはもう無意識でも出来そうです。」
「それはそれで凄いね。」
「やった、褒められた。」
ガッツポーズした瞬間、2連撃で球が直撃する。胸元にあたった魔力弾の衝撃が、別の2つのモノに移り、百合乃の百合乃がブルンと揺れるのを見た。
あーはいはい。大きい大きい。
このまま削がれてこい!
荒れ狂った怒り(断じて嫉妬ではない)を脳内で発散させる。
「でも避けられないんです!ぐふっ!」
「じゃあ避けることを考えないで。量減らすから、斬るのに専念して。そうすれば、軌道の先で待ち伏せして斬れるでしょ。」
「空天才!」
打撲だらけの体の中、ハイテンションではにかむ百合乃。そこに少しキュンと……
こないんだよね、これが。
どんな変態なんだ……?くらいにしか思えないんだよね、正直。
そんな辛辣な思いを抱いているとは知らず、楽しそうにサーベルを振っている。
「ぐっ、弾かれます……」
「斬ろうとするんじゃなくて、発動してるのを意識して。消滅してるって。無理なら、言葉に出すとやりやすいから。」
私がいつも魔法名やスキル名を出してる理由は、単にやり易いから。
だって無詠唱とか言われても、突然ボッ!とか無理だよ。
何かきっかけが欲しい。
「言葉に出す……やってみます。」
私が弾を撃つと、ボソッと魔断、と呟く。そのままサーベルを振り下ろし、その瞬間弾が消える。
「やった、成功です!」
「おー、よかったよかった。」
パチパチとまばらに拍手し、百合乃はぴょんぴょんうさぎみたいに飛び跳ねる。
これで第1段階終了。攻撃の回避と魔法対策、あとはこの応用みたいなものだし、剣姫はまずそれらが出来なきゃ無理。
サーベルがまともに振れないじゃね。意識のしようがない。
その後もいくらか特訓を積み、衝撃断も成功。
なんと、私の刀をほんとに壊してしまった。
「えっ、えぇっ!?空の刀、斬れちゃった!?」
と心底驚いていた。
「いや、物質も接合も全部魔力だから、そのせい。でも、今の衝撃も魔法も同時に消してたね。」
「おぉっ!」
こんな感じだ。
ついでに、物質変化により魔力を可燃性のあるものにし、一瞬にして爆発的なエネルギーを放射しながら燃焼するようにし、その衝撃で石を投げたら衝撃を殺せずに百合乃は後ろに飛ばされた。
同じ方法でも、魔力弾は消されたけど。
でも、物理攻撃による衝撃以外は通るみたいだ。
その後、空力でも試した結果、衝撃は消せてもそれ自体は消せなかったようだ。
私の見立ては正解ってわけだ。やったね私。最強兵器(大嘘)作っちゃおう。
そう考えながら核石を放り込んだ魔力弾を撃ち、遠くから「あべしっ」と言う声が聞こえてくるのを私は無視する。
この特訓の成果は上場。転生者特典か何かは知らないけど、異常な成長っぷりだ。
第1段回終わらせて、なんとか実験して終了かと思ったら、剣姫と魔力感知以外は一通りできた。
今日の出来事を脳内で整理していると、隣の百合乃が声をかけてきた。
「空はどうしてわたしに優しくしてくれるんです?」
そんな疑問だった。
「優しい……?」
「色々してくれるじゃないですか。」
「まぁ………ね。」
言葉を濁して誤魔化すも、「ちゃんと答えてくださいよ」との言葉を貰い、しばらく思考する。
そういえばなんでこんなことしてるんだろう。
友達ではないし、知り合いでもない。唯一まともに話せる異世界人?そもそも百合乃はまともじゃない。
「……暇だから?」
「酷い!友達ですよね!?」
「え、そうなの……?」
「わたし、心壊れますよ!」
やいやいと喚き散らす百合乃の頭を小突こうとすると、それをスッと避けられる。
「軌道予測でバッチリ回避……いてっ!」
「こちとら減速魔法持ってるだよ。やろうと思えば、いくらでも対処方法はある。」
地味にうざかったので、経験の差を生かさせてもらった。
「ずるい!ずるいです!」
「なに~?チートさんが何か言ってますね。」
「魔力たっぷりの空が言うことなんです!?」
「これは元々持ってた魔力がレベルアップで増幅したやつだからセーフ。」
「余計意味分かりません!」
明日は出発だというのに、その日はずっと賑やかなままだった。キューはというと、リーシーさんとまったり過ごしている。
ちょっと構えなすぎたかな?明日はたっぷり遊んであげよう。
———————————————————————
ソラさんが作る武器は、魔力を使わず物理攻撃による衝撃も生まないものです。
何やらツッコミどころも多そうな武器なのですが、そこはお見逃しください。
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