魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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8章 魔法少女と人魔戦争

248.5話 魔法少女と百合乃

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「にしても、日本の森のソレとは少し違いますね。こう、太くて逞しい感じがします。」
「それ、無意識?」
いきなりお茶の間で流せないようなセリフをぶっ込んでくる百合乃に、小さくツッコむ。

「……あ、空。今いかがわしいこと考えた?あっ、ちなみにわたしは勝手に口から出てくるのでセーフです。」
「それはそれでどうなの?」
一呼吸ごとにボケを連発する目の前の軍服少女を前に、これからが思いやられる。

 もっと休み休み言って欲しい。いや、休み休みではあるけどさ。
 もっと私にもボケパートを分けて欲しい。

 そっちかい、と脳内の私がペシッと叩くも、それは脳内で私だ。結構、いやかなり虚しい。

「それ、これからの生活で絶対なんか問題起こるって。痴女じゃんだって。」
「これから!?わたしとこれからを過ごすつもりがっ?」

「黙って。」
極めて冷静な視線をぶつけ、百合乃は少し硬直して頷いた。

「……で、拠点とやらはどちらに?」
キョロキョロと森を駆け回って首を回していて、実に楽しそうだ。

 突然よく分からない異世界(不審者付き)に飛ばされたってのに、焦りも戸惑いも無しに吹っ切れるって結構強いのね……

 出会いの空言の事は、脳が残してはいけないセリフとして消していたので、覚えてないための言葉だ。

「右も左も分からない場所に放り出されて、何か思わないの?」
石の上で遠くを眺めようとしているのを静止し、眉を曲げて聞く。

「ん、空がいるからです。わたし1人だったら危なかったかも……」
へへぇ~、と恥ずかし気にこちらを向いて後頭部を掻く。

 黒髪ボブ。……美少女。

 目の前の見た目は完璧レベルの少女に地味に嫉妬心を芽生えさせ、じっと見つめる。

「キュンッ。」

「私、恋してる?……じゃないんだよ。勝手に人に効果音つけないで?」

「だって、わたしを見つめてきてるんです。そういう事じゃないです?」
「どういうこと?」
もう頭のネジが10個くらい緩んでる百合乃のことは無視し、目的地へと足を向けた。

「なんかボロボロですねぇ~。」

「戦後だしね。」
「なんですとぉっ!?」

「説明しなかったっけ?」
「そんな重要そうな事教えてなんてもらってませんですよ。」

「そうですかい。」
「ですです。」
教えてコールを数度され、仕方なく語ることにする。

 私の情報は無理には話さないよ。空力(魔法)を使ってなんとかした、っていうふんわりな感じで言った。

「空って案外凄いんですねぇ。」
「まぁ、チートあるし。」

「チート無双って中学生好きですよね。」
「まぁ、俺TUEEE系はテンプレだしね。転生してチートもらって学園でハーレム。何度見たことか。」

「みんな好きなんですよ。需要と供給ってやつです。」
話がずれてきて、そろそろ戻しましょうよ、と言われたので無理矢理戻す。

 そっちが広げたんだけどね。そっちが。

「かっこいいですねー、見てみたかったです。空の勇姿。」
「楽しいもんじゃないでしょ。そんなの。」
「一緒にいたくならないです?守ってくれる、かっこいい年上の先輩。それで、たまに甘えてくるです。」
百合乃も私と同類なのか、オタク脳を全開にストーリを展開していく。終わりが見えないので、声をかけて止めようとして踵を返し……

「ぁ……?今何か見えた気が…………」
突如、ボキボギィ、という嫌な音が百合乃の頭上から聞こえる。

 …………木が折れたっ!?

 ご都合展開が舞い降りてくる。

「神速!」
派手な魔法は使えないので、慌てて盾になるようにして百合乃の前に移動する。

「空っ!」
そんな叫びは緊張で耳から抜け、急いで腕を伸ばす。

 魔法少女アームなら……!

 自身の腕の耐久力を信じ、木は私の腕へと肉薄して後には引けなくなる。

「あ……あぁ……うん。」
激しい音が鳴って落下した割には、私の手にすっぽり(ではないけど)乗せられ、オブジェ感が漂う。

 これ、どうしよう。
 まぁ適当にその辺置いとこう。虫とかが巣にするでしょ。

 そんな考えのもと、ポイッと木を放り投げた。

「……キュンっ。」
その声は、ドスッという木の落下音でかき消されており、私の耳には入らなかった。

 ———その日、確かに百合乃の人生は大きく変わった。主に、精神面で———

————————————

 青柳あおやぎ 百合乃ゆりの、高校2年16歳。誕生日、11月29日。身長161cm、体重52kg。そしてDよりのCカップ。

 明るく朗らかな性格だが、他人とあまり積極的に関わることはない。少ない友人相手には、とても交友的で、コミュ障でもないので、割とその場その場で友達は作れる。

 成績は上から数えた方が早い順位で、スポーツもそれなり。だが、どれも天才と言えるほどの才はない。

 趣味は料理。———そして、百合だ。

 そう、彼女は百合好きだった。

 自身の恋愛感情を抱く相手も女性であり、日々そういった百合関係の書籍やアニメをその瞳に映し、違う意味で歪んだ性知識を持っていた。

 正しい性知識とは、学校の保健体育で習うような体の変化や受精、妊娠等の子作りに関することなど。大切なこととして学ぶ。

 だが彼女は違った。

 受精?妊娠?そんなものはどうでもいい。仕組みやプロセスなんぞクソくらえ。好きなようにやっちまえ。そんな考えの持ち主だ。
 そもそも、女性同士で妊娠なぞあり得るはずもない。

 彼女が魔法少女と出会った際に放った言葉は、実を言うと本心はそうなってみたいかも……という謎の思いによるものだ。

 そのようなことを言った理由は、単に空が少し自身の好みに近かったためだ。

 彼女の好みは白髪や銀髪、水色系のクールな髪色で、やや幼さの残る整った顔立ちの高身長(貧乳であるとなお良いが、あればあるで良い。)の少女と決まっている。

 身長は足りないが、概ね間違ってはいない。

 ちなみに彼女はMだ。どちらかといえば、だが。

 そしてあの時。魔法少女に守られた瞬間、彼女はときめいてしまった。
 そう、ときめいちゃったのだ。

 あのかっこいい背中を見て、キュンキュンしていたのだ。あのイケメン(女)に犯されてみたいと思ったのだ!

 そして彼女、青柳百合乃は大きく変わった。色々な意味で。

———————————————————————

 今回の話は本編に関係はあるけど結構逸れる話でしたので、このように変な区切りをしました。
 お、思いつきなんかではないですよ?
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