魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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8章 魔法少女と人魔戦争

251話 魔法少女はステータスを確認する

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 ルナたちが決意を固めた夜、詩音は競技に出ていた。

「今日のナイターは、最近連勝して勢い付いている右京! 対するは肉食動物最強、ジャイアントタイガー!! 今日は絶好の好カードだ! 見逃すなよ!!!」

 詩音が入場した。会場は大歓声に包まれる。詩音への期待の歓声だ。

 対してジャイアントタイガーが入ってきた。通常のトラの3倍はある図体で、恐らく競技まで何も餌を与えられなかったのだろう、飢えている様子で完全に獲物を見る目だった。

「あっ、ちょっと、まだ合図出してないぞ!!」

 ジャイアントタイガーは鎖が解かれるなり詩音に飛びかかった。

 詩音は突っ込んでくるジャイアントタイガーの下顎を蹴り上げた。舌を噛んでしまい、出血する。

 しかしそんな事はお構いなしにシオンに覆い被さる。

 すかさず右前足を掴みとり、

「島原流、風車」

 投げた。

 流石はネコ科。投げられながらも柔らかい体を捻り、うまく着地した。

 しかし、その一瞬が勝負を決することになる。

 着地した時には、詩音の飛び後ろ蹴りが眼前に迫ってきていたからだ。

 蹴りが顔面にめり込む。衝撃は頭蓋骨を割り、脳にまで浸透した。

 ジャイアントタイガーは倒れ伏す。しかし、まだ微かに息があるようで苦しんでいた。

 詩音はジャイアントタイガーの頭を跨いで立ち、渾身の下段突きを放つ。

 次は即死だった。

 詩音は何も言わず立ち去る。残っているのは頭が陥没して死んでいるジャイアントタイガーと大歓声だった。



 詩音が入場門へ戻ると、そこに壁が立っていた。

 いや、壁じゃない。人だ。人が立っていた。壁に見間違えるほど巨大な筋肉を纏った男が立っていた。

「ミスターフリーダム、バルクさん、だっけ?」
「君の競技、見ていたよ。とてもよくやるようだ」

 詩音は挑発的な態度で言う。

「それって、あんたよりも?」

 バルクは発言が鼻につき、眉間に皺を寄せる。しかし詩音は続けた。

「おれもなれるかなぁ。ふりーだむ」

 完全に挑発している詩音の発言に表面では動じず、返す。

「バカを言っちゃあいけない。私が特別なのだ。私だから自由なのだ」

 そう言うとバルクは詩音に背を向け歩き出した。

 詩音は強烈な殺気をバルクに向ける。

「この状況で俺に背を向けるか!!!」
「言ってる意味がわからないね。自室に戻る、だから君に背を向けて帰る。それだけじゃないか」
「俺は背を向けて無警戒でも大丈夫な奴だって言ってんのかって聞いてんだ!」

 バルクはひとつ詩音に笑ってみせ、そのまま何も言わず去っていった。



数刻後、牢屋にて。

「お前バルクさんにあしらわれたんだってな。よかったぜ生きて帰ってきて」
「別に何もなかったよ。ただ話しただけ」
「バルクさんに喧嘩売るのはマジでやめとけ。命が幾つあっても足りねぇ」
「けど、俺はここで立ち止まってるわけにはいかないんだよ」
「本当か? 俺はそんなふうには見えねぇけどな」
「どういう風にみえる?」
「スッゲー楽しそうに見えるぜ」



 一方で、数日後ルナは単身でコロッセオがある都市、ロマンヌに到着した。

 大都市ロマンヌ。ここは大陸の砂漠地帯にあるオアシスを起点として発展してきた都市で、なんといってもギャンブルで有名である。特に罪人や奴隷を使った剣闘士同士の戦いを賭けるギャンブルが大人気だ。

「ここがロマンヌですか。…………よし、まず私がやる事は拠点の確保とコロッセオの調査。あとはこの通信魔法が書かれた巻物でクレアさんたちに報告と近況を聞く事でしたね。では適当な宿屋を探すとしますか」

 ルナは宿を探して歩き出した。



「高すぎますよ!!」

 とある宿屋で、ルナが店主に抗議していた。

「これがここの基本料金だ。文句があるなら他に行け! まあ、ここはギャンブルの街だ。俺とギャンブルして勝ったら考えてやる」
「言いましたね。では私が負けたら2倍の値段で泊まってやりますよ!」
「いや、3倍だ。そのかわり勝てたらただでスイートルームに泊めてやる」
「いいでしょう。ところで何の勝負をするんですか?」

 店主は外を指さす。

「次に来る客が男か女か賭けるってのはどうだ? お前が選んでいいぞ」

 ルナは外を見る。大通りにはアクセサリー等、女性向けの商品を扱う店が多く並んでおり、たくさんの客で賑わっていた。

「では、男性に賭けます」
「オーケー。なら俺は女性に賭けるぜ」

 二人は入り口を凝視し、次に入ってくる客を待つ。

 数刻後、一組のカップルがほぼ同時に入ってきた。しかし、一歩の差で男性が先だった。

「この勝負、私の勝ちですね」
「ぐっ…………ああ、お前の勝ちだ。だがなぜ男性に賭けたんだ? ここの通りはアクセサリーショップとかばっかりだろうに」
「確かに女性が来やすいとは思います。しかし、アクセサリーショップ等って、女性だけよりも恋人の男性と一緒に来ることの方が多いはずです。女性もショップを見に行きたいとデート中にねだる事もあるでしょうし、男性も何かプレゼントを買ってあげようと来店するはずですから。そしてどんな利用方法であれカップルがそのままこの宿へ宿泊ないし休憩するために来店し、その際大体は男性を先頭に入ってくることが多いだろうという根拠の予想です」
「なるほど、しっかりと根拠が裏付けされた予想だったってことか。アンタ、ここで結構やっていけるぜ。上手くいけば億万長者だぞ」
「え、遠慮しておきます……」
「まあいい。じゃあ約束通りスイートルームに案内してやる。ついてこい」

 ルナと店主は店の奥の階段を昇る。そして4階の奥にひと際高級そうな扉の前まで案内された。

「ここがスイートルームだ。俺はアンタのことが気に入ったからな、何かこの街に用があったんだろ? だからそれが終わるまでここにタダで泊まっていいぜ」
「いいんですか!?」
「あんなギャンブラーは久しぶりに見るからな。予想の理論もそうだが結構なハイリスクだったこの賭けに物怖じせず突っ込んでくるその図太さが特に気に入った。遠慮せず泊まっていけ。そんでここでガンガンギャンブルやって見せてくれよ」
「か、考えておきます……でも、ありがとうございます!!」

 ルナがお礼を言うと、店主はルナの肩を軽く叩いて返事をする。そして自分の仕事へ戻っていった。

「何はともあれ、無事拠点を確保できました。ちょっと豪華すぎますけど、まあいいでしょう。ボロボロよりは全然いいです。さて、後は詩音さんについての調査に参りましょうか」

 ルナは荷物を部屋に置くと、早速調査に向かった。



 

 



 
 

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