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8章 魔法少女と人魔戦争
245話 魔法少女は目覚める
しおりを挟む「……ん、ん~~ん、…………腰痛い。」
第一声、そんな文句から始まる。
「……とりあえず、なんで私ここで寝てるの?」
私は、初めに浮かんだ疑問を率直に発していた。
確か魔龍封じて意識が遠くなって、それで……
あれ?そういえばキューは?
辺りを弄り、キョロキョロと見回るけど、どこにも姿が見えない。
「そもそもここどこよ。」
暗い部屋?に、天井も壁も何もかもが岩でできた謎の空間で独りごちた。
誘拐?というか魔力は……ほぼ全快。ん?優しい誘拐犯でもいたのかな?それはそれでどうかと思うけど。
んー…………………分からない。
結局何ひとつ理解が及ばなかったので、迫り来る睡魔を手招きで呼び、ボロボロの毛皮に包まって硬い床に寝そべろうとして……
「寝るな。ます。」
「あ、いたんだ。」
寝ながらそう返す。額に青い筋のようなものが見えな気がするけど、気のせいだろうね。
最近目が霞んできてね。眼鏡でも買おうかな。いつか知らないけど、目が悪い人用のズーム機能付きの魔道具があるってのを聞いた。
あったら買ってみようかな。
「起きろ。ます。もう3日経った、2日後に帰還する。ます。」
思考を遮るようにして言葉を挟んだオレンジの子。情報量が多くて、今の寝起きの脳じゃ何も理解が及ばなかった。
「えーと、パードゥン?」
「何言ってる?ます。」
英語は分からないみたいで、首を傾げる。それと同時に手に抱えていた桶の水が揺れ、中の水が飛び出す。
「危ないっ!」
咄嗟に手を伸ばし、以前作っていたレイタースタートのトールを発射した。
「っ………!?」
雷は一直線に水に当たり、蒸発する。そして、その一瞬の出来事に少し固まっていた。
あっ……魔法、使っちゃった……
やば、バレた?やばい……
そんな中私は、勘違いで魔法を使った私に驚いてるのかと思い、言い訳を考えていた。
「だ、大丈夫?水かかってない?」
最初は心配だけして、墓穴は掘らないようにするという判断をとった。
昔の私なら焦って「あ、今のは、その、違うんだよ?」とか言いそうだね。
あ、今もそうか。
てへっ☆と、心の中で舌を出す。
「やっぱり魔法、使ってる。ます。」
「えあえっ?気づいて……って、やっぱり?」
その部分が引っかかり、眉を曲げる。
その言い方だと、元から気づいてたみたいに感じるんだけど。
「細かいことはいい。ます。とりあえず、報告だけする。ます。」
「えぇ!細かくないよ、それ!」
寝起きとは到底思えないテンションで騒ぐ私に呆れた様子で近づき、桶を置いた。
「お、ありがと。確かに、こういうのは報連相が重要だしね。」
ちょうど喉が乾いていたので、両手で掬ってコクコクと喉を鳴らす。
「それ、煮沸しないと飲めない。ます。」
「ブフゥーッ!………はぁ、はぁ。最初に言ってよそれ!」
豪快に水を吹き出す私にクスッと表情を崩し、私もその姿を見て微笑ましく感じた。
「そんな顔、できるんだね。」
「どんな顔。ます?」
「笑顔だよ、笑顔。そんな無機質な顔じゃ、せっかくの可愛い顔が台無しになっちゃうよ。」
むぎゅむぎゅと頬っぺたをこねくり回し、「やめろ。ます!」と連呼されて中断する。
「仕切り直す。ます。お前、倒れてるのを助ける。ます。A隊、先に帰還。ます。移動は少人数。ます。2日後、B隊とわたしたち、出発。ます。」
「いや、ますます言われても分からない。」
真顔でその報告の下手さを指摘する。
「……うるさい。ます。」
少し俯く。本人も気にしてるみたいだ。
そういう顔も萌えるね。
もっと出していこうよ、個性を。
それから、「理解力がない」「そのくらい汲み取れ」など、あーだこーだ文句を言われ続け、流石にキレそうになってきた頃、奥の方からカツカツと軽快なリズムが響く。
「騒がしいと思ったら、起きていたのか。」
棒の代わりか、キューを片手にして歩いてくる。
「キュウッ!」
「キュー!」
キューは、私を見ると腕から飛び出した。
「あっ……ん、ん、こほんっ。」
眉がハの字に曲がる。少し、名残惜しそうだ。
でもキューは渡さないよ。私のじゃないけど。
「その様子だと、また伝えられてないのか。まず私から、謝辞をさせてくれ。巻き込んでしまってすまない。それから、私たちを救ってくれたことを感謝する。」
少し優しめな口調から一転、急に固く苦しい感じになった。表情も強張ってる。
美人さんだと、そういう顔も似合う……じゃなかった。
「大丈夫ですって。ほらほら、顔上げて。スマイルスマイル。」
「すまいる?あ、笑顔のことか。」
遅れて理解し、苦笑いを浮かべる。
「……なにか、あった?」
「いや、なに。私も、これで任期が終了すると考えるとな、少し呆気なく感じてしまう。嬉しいことなのだが、悲しくもある。」
憂げな表情で、明後日の方向を見上げる。その姿も凛々しく、カメラ映えしそうだ。
「悪いな。暗い話になった。」
「ねぇ。もう指令さんは指令じゃなくなるんだよね?」
「そ、そうだが……それがどうかした?」
質問の意図が分からず、困ったように頬を掻く。
「なら、もうそんな堅苦しくなくていいんじゃない?美人さんなんだから、可愛くね。」
「か、かわいく?こんな感じか?」
親指と人差し指の間に顎を乗せ、キリッとした顔をする。
指令さーん。可愛いポーズじゃないよ、それ。そもそもどういうポーズ?
可愛いというより、カッコいい?
「ま、まぁいいんじゃ、ない?」
指摘はせず、若干片言混じりで返す。
「2日間、短いかもしれないがしっかりと休んでくれ。自由に行動してもらって構わない。」
「はーい。」
片手を上げて、にこやかに返事をする。先生と生徒みたいな感じの立ち位置だ。
「わたし、無視されてる。ます?」
———————————————————————
そろそろネタパート全開で行こうと思います。これからとある人物が増えますので、ネタが捗りますね。
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