魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
256 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争

241話 魔法少女は敵と会う

しおりを挟む

「あっつぅ~……あぁ、帰りたい。」
弱音をガンガン吐きながら、バチバチと激しい音鳴らして燃え続ける炎の周りを走り回る。

 というか脈の反動キツっ!伸縮性高いのはいいけど、その反発がデカすぎるんだよね。

 この世界そのものの力だから、決定力が強いんだよね。
 その強い決定力を無理矢理変形させてるんだから、それだけの力が働く。だから、常に筋トレ状態。

 魔法少女服、やっぱ神だ。これがなければ動くことすらできなかった。

「さっきは文句言ってすみませんでした。だから助けてください、お願いします。」
極めて冷静に、神に祈った。

 そうだ。私みたいな人間は神に祈らないとやってられないんだよ。今現在全てを頼ってるんだけどね。

 私は、普通に大問題なセリフを躊躇なく生み出していく。

「燃え広がらないうちに囲まないといけないのに……重い。私は筋肉なんてつけたくないよ!」
掛け声と神速の勢いでゴリ押し、ようやく半分程度が終わる。

 神速は移動というより勢いつけるのにしか使えないし、ある程度脈を回収して繋ぎ合わせないといけないし……

 あぁー!もう嫌だ!

 でもこれしないと、魔物は普通に近寄ってくるし、脈の捩れっていう安全地帯を作らないことには何も始まらない。

 やることが多く、頭が熱でパンクしそうになる。これが、知恵熱というものか。

 ん?知恵熱は赤ちゃんに起こるやつだって?私はこの世界に来て数ヶ月。れっきとした知恵熱だよ。

 謎の反論で力が緩み、「あぶっ……なぁ……!」と声が漏れながら数メートル引き戻された。

「キュー!助けてー!」
「キュキュゥゥ……」
申し訳なさそうに鳴くキューを見ると、こっちまで申し訳なくなってくるのでもう目を瞑る。

 やればできるやればできる。よっし。やろう。

 どこかの芸人のような言葉を繰り返し、自身を鼓舞する。

 それから私は仕事をする。

 足腰がぶっ壊れそうになりつつ、魔力を全て神速に充ててるのかというほどフルスピードで脈を繋ぎ、開始から30分程。
 私からしてみれば体感1時間の仕事を終え、最後の1つの束を今結ぼうとしていた。

「………ふぅ。お、おっ、終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「キュッキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
キューも嬉しそうに、そして高らかに鳴き、脈探知でその完成を今一度確認する。

 太陽ははいつの間にか昇りきり、東の方向にドンと構えていた。その眩しさに目を細め、成功を感じて深く息を吸う。

 ここ1日の私、働き詰めで頭おかしくなってるよね。ノリが私じゃないというか、時々泉にでも落としたのかってぐらい綺麗になって、さっきなんて映画版ジャイ○ンレベルだよ。

 まともレベルで疲労指数を測り、だいぶまともになってた私は、そろそろやばいのかもしれない……と、謎の心配を抱く。

 その時、万能感知に何かの気配がした。

「ん、……これ、なんの反応?魔物?にしては気配が強い。キュー、分かる?」
こういう時には反応を返すキューに目を向けて問うと、「キュキュ……」というシリアスチックな鳴き声を出す。

 脈と魔法が織り混ざった感じ。私みたいだね。
 あ、それじゃあ私も危ないやつか。

 脈の檻を通り抜け、私は反応があった場所にキューと一緒に恐る恐る確認しにいく。

「あれ……?あの炎の中、よくまともに生きていられるね……」
万能感知越しに、魔物らしきものが動いてるのを確認する。

「キュキュッ!キューッ!」
「ちょっと静かにしといて。バレるかもしれないから。」
木を背に、見えない敵を発見しようと目を左右に動かす。

「キュッキュー!」
忙しなく鳴き続けるキューを叱ろうとキューに目を向ける……その時。視界の端に何かを見つける。

「っ……………!?」
何者かに吹き飛ばされ、なんとか空中で体を捩って木に掴まる。

 これ何回目?何回隙ついて人を吹き飛ばすの?
 学ばない私も私ではあるけど、それにしても飛ばされすぎだと思う。

「今度は何……」
万能感知で見てみると、さっきまで反応のあったところから反応が消え、ここを強く差している。

 え、なに?さっきのフェイクだったわけ?
 だからこの辺の魔物は嫌なんだよね。知恵を持つと変な行動してくるし。

「竜…‥ではなさそう。魔物?何これ。」
鑑定眼を使うと相手が不快になるということを知ったので、使わずに目測で判断する。

 なんだろう、恐竜をこねくり回してツノをつけたみたいだな見た目。大きさは人間サイズ。この大きさであの威力なら、充分強いと思う。

 ちなみに鑑定眼は、ある程度勝てそうなやつに使おう。そうじゃないと襲われちゃうからね。

 誰にかは分からないけど、そう注意を呼びかけた。

「まぁいいや。魔物と竜で魔竜。よしそうしよう。魔物と竜が合体した何者か……でいこう。」
戦闘準備はできているので、相手の動きを観察し、行動を予測する。

「キュウ………」
キューは隠れるように着てコートに入り、定位置に移動する。

 ここなら魔法、使っていいよね?脈で封鎖されてるし、誤魔化せるでしょ。

 そう考え、ステッキに持ち替える。久しぶりのステッキの感触を確かめつつ、未だ動きのない魔竜にステッキを向ける。

「キャィィィィィィィィィィッ!」
機械が擦れるような音が響いた。その音で一瞬怯んだ私は対応が遅れていて、魔竜の突進を受け流すしかできなかった。

「うっ、衝撃が……」
手の痺れを感じ、1歩後退する。

 いつまで私のターンなの。そろそろあの2人に変換したい……

 心の中でぐちぐちと文句を垂らし、気持ちを入れ替える。
 今は目の前の敵だ。

 改めてステッキを握りなおし、魔力を貯めた。

———————————————————————

 次回こそ、次回こそ戦いが始まります。

 そういえばですが、人魔戦争について詳しく書いていませんでしたね。ここで適当に説明しておきます。

 人魔戦争とは、各地で暴走を始めた魔物が人を襲い、それに対抗して人も争う、という簡単なものです。それは各国で起こり、それぞれは紛争程度の物だけど、なかなか終わらない戦いのため戦争と呼ばれる。
 その結末は以前書いた通り、トップが死んだからです。

 そこからなんやかんやありまして、終結したわけです。

 そのなんやかんやは、今後書いていくと思いますので、今回は伏せさせていただきます。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...