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8章 魔法少女と人魔戦争
241話 魔法少女は敵と会う
しおりを挟む「あっつぅ~……あぁ、帰りたい。」
弱音をガンガン吐きながら、バチバチと激しい音鳴らして燃え続ける炎の周りを走り回る。
というか脈の反動キツっ!伸縮性高いのはいいけど、その反発がデカすぎるんだよね。
この世界そのものの力だから、決定力が強いんだよね。
その強い決定力を無理矢理変形させてるんだから、それだけの力が働く。だから、常に筋トレ状態。
魔法少女服、やっぱ神だ。これがなければ動くことすらできなかった。
「さっきは文句言ってすみませんでした。だから助けてください、お願いします。」
極めて冷静に、神に祈った。
そうだ。私みたいな人間は神に祈らないとやってられないんだよ。今現在全てを頼ってるんだけどね。
私は、普通に大問題なセリフを躊躇なく生み出していく。
「燃え広がらないうちに囲まないといけないのに……重い。私は筋肉なんてつけたくないよ!」
掛け声と神速の勢いでゴリ押し、ようやく半分程度が終わる。
神速は移動というより勢いつけるのにしか使えないし、ある程度脈を回収して繋ぎ合わせないといけないし……
あぁー!もう嫌だ!
でもこれしないと、魔物は普通に近寄ってくるし、脈の捩れっていう安全地帯を作らないことには何も始まらない。
やることが多く、頭が熱でパンクしそうになる。これが、知恵熱というものか。
ん?知恵熱は赤ちゃんに起こるやつだって?私はこの世界に来て数ヶ月。れっきとした知恵熱だよ。
謎の反論で力が緩み、「あぶっ……なぁ……!」と声が漏れながら数メートル引き戻された。
「キュー!助けてー!」
「キュキュゥゥ……」
申し訳なさそうに鳴くキューを見ると、こっちまで申し訳なくなってくるのでもう目を瞑る。
やればできるやればできる。よっし。やろう。
どこかの芸人のような言葉を繰り返し、自身を鼓舞する。
それから私は仕事をする。
足腰がぶっ壊れそうになりつつ、魔力を全て神速に充ててるのかというほどフルスピードで脈を繋ぎ、開始から30分程。
私からしてみれば体感1時間の仕事を終え、最後の1つの束を今結ぼうとしていた。
「………ふぅ。お、おっ、終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「キュッキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
キューも嬉しそうに、そして高らかに鳴き、脈探知でその完成を今一度確認する。
太陽ははいつの間にか昇りきり、東の方向にドンと構えていた。その眩しさに目を細め、成功を感じて深く息を吸う。
ここ1日の私、働き詰めで頭おかしくなってるよね。ノリが私じゃないというか、時々泉にでも落としたのかってぐらい綺麗になって、さっきなんて映画版ジャイ○ンレベルだよ。
まともレベルで疲労指数を測り、だいぶまともになってた私は、そろそろやばいのかもしれない……と、謎の心配を抱く。
その時、万能感知に何かの気配がした。
「ん、……これ、なんの反応?魔物?にしては気配が強い。キュー、分かる?」
こういう時には反応を返すキューに目を向けて問うと、「キュキュ……」というシリアスチックな鳴き声を出す。
脈と魔法が織り混ざった感じ。私みたいだね。
あ、それじゃあ私も危ないやつか。
脈の檻を通り抜け、私は反応があった場所にキューと一緒に恐る恐る確認しにいく。
「あれ……?あの炎の中、よくまともに生きていられるね……」
万能感知越しに、魔物らしきものが動いてるのを確認する。
「キュキュッ!キューッ!」
「ちょっと静かにしといて。バレるかもしれないから。」
木を背に、見えない敵を発見しようと目を左右に動かす。
「キュッキュー!」
忙しなく鳴き続けるキューを叱ろうとキューに目を向ける……その時。視界の端に何かを見つける。
「っ……………!?」
何者かに吹き飛ばされ、なんとか空中で体を捩って木に掴まる。
これ何回目?何回隙ついて人を吹き飛ばすの?
学ばない私も私ではあるけど、それにしても飛ばされすぎだと思う。
「今度は何……」
万能感知で見てみると、さっきまで反応のあったところから反応が消え、ここを強く差している。
え、なに?さっきのフェイクだったわけ?
だからこの辺の魔物は嫌なんだよね。知恵を持つと変な行動してくるし。
「竜…‥ではなさそう。魔物?何これ。」
鑑定眼を使うと相手が不快になるということを知ったので、使わずに目測で判断する。
なんだろう、恐竜をこねくり回してツノをつけたみたいだな見た目。大きさは人間サイズ。この大きさであの威力なら、充分強いと思う。
ちなみに鑑定眼は、ある程度勝てそうなやつに使おう。そうじゃないと襲われちゃうからね。
誰にかは分からないけど、そう注意を呼びかけた。
「まぁいいや。魔物と竜で魔竜。よしそうしよう。魔物と竜が合体した何者か……でいこう。」
戦闘準備はできているので、相手の動きを観察し、行動を予測する。
「キュウ………」
キューは隠れるように着てコートに入り、定位置に移動する。
ここなら魔法、使っていいよね?脈で封鎖されてるし、誤魔化せるでしょ。
そう考え、ステッキに持ち替える。久しぶりのステッキの感触を確かめつつ、未だ動きのない魔竜にステッキを向ける。
「キャィィィィィィィィィィッ!」
機械が擦れるような音が響いた。その音で一瞬怯んだ私は対応が遅れていて、魔竜の突進を受け流すしかできなかった。
「うっ、衝撃が……」
手の痺れを感じ、1歩後退する。
いつまで私のターンなの。そろそろあの2人に変換したい……
心の中でぐちぐちと文句を垂らし、気持ちを入れ替える。
今は目の前の敵だ。
改めてステッキを握りなおし、魔力を貯めた。
———————————————————————
次回こそ、次回こそ戦いが始まります。
そういえばですが、人魔戦争について詳しく書いていませんでしたね。ここで適当に説明しておきます。
人魔戦争とは、各地で暴走を始めた魔物が人を襲い、それに対抗して人も争う、という簡単なものです。それは各国で起こり、それぞれは紛争程度の物だけど、なかなか終わらない戦いのため戦争と呼ばれる。
その結末は以前書いた通り、トップが死んだからです。
そこからなんやかんやありまして、終結したわけです。
そのなんやかんやは、今後書いていくと思いますので、今回は伏せさせていただきます。
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