251 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争
236話 もう1つの戦い
しおりを挟む魔法少女が消火活動に勤しんでいた時とはまた別に、違う戦いが現在でも起こっていた。
彼がいるのは少し大きめなある街の裏路地。瞳孔が大きく開かれ、いつでも人を食い殺せそうな風貌をしている青年。名は蓮という———
「クソッ、今日も成果は無しか……」
壁にヒビを入れながら、俺は真横に拳を叩きつけた。
レベルも上げた。スキルも増えた。神定魔法も増えた。なのに、どうしてだ!どうして手がかりは一向に掴めない!
髪をぐちゃぐちゃに掻きむしり、発狂とも言える声をあげる。
「おいおい。こんなとこでどうした?坊……っ!?」
空気も読まずにやってくるチンピラに《主要能力》獄炎鎖を巻き付け、肉片すら残さず溶かし尽くす。
「そうだ、俺は強いんだ。さっさと神を殺して、帰る方法を探すんだ。こんな、舐め腐った世界から……」
どん底から見上げる電球は、どんな星々より輝き、俺に希望を与える。依存だ。
そんな希望を1つ掴むために、ここまでしなければいけないなんてな……
1人自嘲していると、ピコンと聞いたことのある憎らしい音が鳴った。
「あ?」
視界の端に点滅マークが現れ、押せと言われてるような感覚に陥る。
チッ。スキルじゃ抗えないってか。
200越えのレベルでも抗えねぇって、一体どうすりゃいいんだ。
一瞬にして自分の全てを否定された気になり、やる気が失せたところで本題が目に入る。
《緊急》
緊急性を重視し、今回は我が直々に筆を持とう。命令は1つのみ。龍神がこの世界に帰ってこれぬよう、この世を封じてくれ。我は直接変化を与えられないからな。不変を変えて見せろ。神の死ぬ世界を、作って見てみたくはないか?
詳細は神定した。確認してみよ、我が雫よ。
創滅神
あの時とは違う雰囲気を感じとる。
「なんだ、これ。」
命令などという言葉に怒りを覚えるが、そこは一旦放置しよう。
「『神の死ぬ世界』だって?」
1文を読みあげ、再度確認する。
そうか、そうか!面白いじゃないか。神が死ぬ?ありえない事象を起こすっていうのか?
この世界にいる神を、四神を殺せる照明ができるのか?
最近知った神の存在を出し、驚きをあらわにする。
「それは好都合だ。」
ほくそ笑み、楽しげに歩を進める。
神定魔法に追加されてるな。無駄なところに追加しやがって。
神命令という、ふざけた名前の魔法をタップすると、大量の情報が頭に流れ込んでくる。
「………っ、これが。面白い!やってやる。命令?そんなもの知ったこっちゃねぇ!神を殺す?やってやろうじゃねぇか。待ってろ創滅神とやら。必ず殺してやる。」
拳を強く握り、準備を開始する。封印をするにはある空城に行く必要があるそうだ。
過去に龍神を取り残す?そこである転生者がトドメを刺す?俺が殺せないのは不満だが、神を殺せることさえ知れればそれでいい。
あの時の屈辱は忘れない。人神に一方的に攻撃したのにも関わらず、殺すに至らなかったあの時の屈辱を。
その日、俺は取っていた宿には泊まらずに街を出た。
空城があるという、国境を越えた雲の上を目指すために。
今は、その道中。
「邪魔だ。」
《主要能力》の風刎で、辺りの魔物を全て刈り取る。
どいつもこいつも雑魚ばかりだ。もうレベルも簡単には上がらなくなってきたな。
スキルでも奪って放置だな。
スキルも、魔法も、ステータスも。神以外の存在にもう負ける気はしない。
技術?そんな後天的なもので何になる。
神定魔法。先天的なものにこそ意味がある。
いくら技術を磨こうが、天才には勝てない。
「強さの違いも分からねぇのか、お前らは。」
絶対聴覚により完璧に魔物の位置を把握し、《補助能力》追撃で全ての魔物を焼き貫く。
竜の息吹を奪ったスキル。天光線。
全てを脈に返すというスキルらしいが、よく分からん。
乞食者によってスキルは増え、都合よく戦いは進む。
だがそれは決してご都合主義なんてものではない。そんなものに括られたくない。それだけの苦労はしてきた。敵を倒し、倒し、倒し、倒し、倒し、倒し……倒し続けた。死ぬ思いで。
「一体どこから湧いてやがるんだ。魔物ってやつは。」
俺は痺れを切らし、威嚇をオンにする。
この程度の魔物なら、威嚇すれば大人しくな……
その瞬間、オートバリアが発動した。何かが俺に向かって攻撃してきたのだ。
「チッ!クソ猿がぁ!」
目の前にいたのは猿のような風貌の魔物。モノパージの群れだ。あれはナワバリに入ってきた敵を、容赦なく襲ってミンチに変える。子供ですらDは堅いだろう。大人になれば、最悪Bもありうる。
なんだあのクソ猿。人が大人しくしてやろうと思っていたら、攻撃しやがって。
誰に歯向かったか、理解してないようだな。
「群がるゴミクズ共。格の違いを分からせてやる。」
地面から大量の鎖が現れ、4匹全員の四肢を拘束する。
「獄炎鎖。」
指を鳴らすと、鎖はたちまち炎に覆われ、四肢が切断された。
ハハッ!滑稽だ。
苦痛に顔を歪め、咆哮を上げるクソ猿。こちらを憎ましそうに睨み付ける姿は滑稽でならない。
「達磨になってもまだそんな顔ができるか。いいぞ。死んだ方がマシな苦痛を味合わせてやる。」
《主要能力》雹刻を降らせ、地獄を生み出す。
雹の1粒1粒に覚醒付与し、刺さるたびに神経が覚醒するように細工する。
「痛みは増す一方。じわじわと、痛みに侵されて死んでいけ。まぁ、死ぬことはできないだろうが。」
子供の方はもう息が絶え絶えになり、今にも死にそうだ。
「オートヒール。オートバリア。火ノ鳥。」
全員に少しずつ癒しを与える。等間隔でそれは行われ、死ぬことはない。神経は覚醒し続け、痛みは味わうが死ねない。オートバリアを内側に仕込み、脱出を不可能にする。最後に火ノ鳥を設置し、火の粉を散らす。
拷問の始まりだ。寿命来るまで、そこで寝てろ。
地面に足を叩きつけ、穴を開ける。その中にバリア付きの拷問中モノパージを放り込む。
「俺は、最強だ。」
再度、そう確認する。
この俺が、この世界に終止符を打ってやる。
———————————————————————
とりあえずレン視点です。これから少しだけ蓮視点なので、お付き合いください。
彼の主役回、約100話ぶりです。久しぶり過ぎて、設定忘れてるかもしれません。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる