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8章 魔法少女と人魔戦争
233話 魔法少女は見学に行く
しおりを挟む「……遅い。」
仮眠を1時間くらいし終え、いくら経っても戦争に駆り出されないことに少し怒りを覚える。
戦争しない分にはいいよ?元からしたくなかったし。
でもさ、もう確定事項な訳じゃん。割り切ってここに来た訳じゃん。
なんで説明も無しに置いてくのかなぁ!?
もう私にゃさっぱりだよ。何をしたらいいか分からないし、戦争に行くにしても勝手に行っていいかも分からないし。
そもそも監督不足だよ!もっとこの私に説明をしてよ!
私はどこかのweb小説のような「俺TUEEE」「私TUEEE」の主人公様みたいに状況を一瞬で見抜いたりできないよ。
何時間も歩き回されて、もう日も暮れて、お腹空いて。放り出されて、寝て、お腹空いて!
もう疲れたよ……
「そうだ、見に行こう。」
思考の大波が通り過ぎ、残った言葉はそんな頭のおかしいものだった。
そうすればあの子達にも会えるし、戦況把握もできる。
実力というかそういうのも分かるでしょ。
そんな思いで2人の後をせっせと追いかける。道が合ってるかは万能感知で確認できる。
ほら、この先辺りに魔物の反応が境界線でも引かれたみたいに……とまではいかないけど、ある程度分断はされてる。
多分、そこで戦いは起こってると思う。
「ステータス確認と行きたいけど、流石にこの状況じゃ、ねぇ。」
魔物の多さに少し身震いしながらも、人が見える位置まで神速を使いつつ近づく。
ほんとは神速も危ないんだけど、バレなきゃセーフだ。
「空力騎士は後何人だ!」
「1名です。1名は意識不明の重体、もう1名は疲労困憊により立つこともままならない様子です。」
「そうか。早急に安置に運べ。そこには幾らかの薬草もあるはずだ、何としてでも助け出せ!」
「了解しました!」
そんな会話をした後、子分みたいなほうは走って私が来た方向から見ると右方向に走っていった。
あれが指揮官かな?女性……騎士……くっこr……
いや、なんでもない。
戦闘はしないからなのか、その人は細長い棒のようなものを杖代わりして、渡りを見回す。
その先に何があるのか、私の肉眼では捉えられないけど、万能感知越しに分かる。
人と魔物が戦ってる。
「このままでは敗戦は確実、か。B隊には負担をかけてしまうが……許せ。」
悔しそうに拳を握る姿が目に映る。
多分ここに2人は来てると思うけど、合流はしてないの?それともわざと?
考えても、私の頭じゃ全く解決しなかった。
あぁ、もう。やめだやめ。大人しくあの指令さんでも尾行しよ。
「私も、戦いにゆこう。戦わずして、死ねはしない。」
激戦が行われているであろう、少し開けた地の方向を臨み、決意を固める。
こんな切羽詰まってるの……?
ほんと、あの2人はどこに行ってるの。助けてあげなよ。
そんな文句にも似た言葉を頭に並べていると、いつの間にか指令さんが消えていた。
「え、あっ、え?万能感知……って、魔力は無いんだった。っあぁ……見失ったぁ……」
木の影で凹んでいると、背後から気配がする。
「誰っ!……っ。」
声が気づかれないよう、咄嗟に口を塞ぐ。
危ない危ない。あれ?もう出てた?
「何故来た?です。」
「待機と言ったはず。ます。」
「あの……私、休めと言われて1時間くらい待たされてるんですけど?説明無しに。」
小声気味で吐き出し、しれっとした対応に顔を顰める。
「そんなこと。です?」
「呆れる。ます。」
非をなすりつけられてるようで気分が悪くなる。自分の説明不足は棚上げで、可愛い顔もうざく感じる。
そっちが説明もなしに置いてったのに、そんなことって何?それが頼む側の態度?それなりの誠意っていうのを見せてほしい。
今の心情だと焼き土下座くらいがちょうどいいかな。
「これは頼みじゃない。です。」
「命令、忘れるな。ます。」
「だから心の声読まないで?」
ほんとやりにくい。
もうため息すら出てこなくなった。
「もういいからさ、説明をちょうだいよ。今の戦況でもいいから。」
「他のやつに聞け。ます。」
「無理だから聞いてるんじゃん!」
声を荒げるも、2人はシーンとした感じで動かない。
「何者だっ!」
後ろを振り向くと、私は何故か棒を突きつけられていた。
「何故ここにいる!」
「うるさい。です。」
「黙っとけ。ます。」
すると、2人は嫌そうな顔で悪態を吐く。
おーい。初対面の相手にそれはどうなの?
「……っ、まさか、お2人は……」
「ようやく気づいた。です。」
「遅すぎる。ます。」
謎の茶番を見せられ、反応に困る。
なにこの茶番劇。この紋所が目に入らぬかー、みたいな?
それで屈服させるって?よく分かんないけど、今時流行らないよそんなの。
「そちらの方は?」
「援軍。です。」
「わたしたちもやってる。ます。」
「そうでしたか。感謝いたします。」
この状況を完璧に理解しちゃった指令さんは、体を90度に曲げ、礼をする。
「……いつまで続くの?」
そろそろ観客に徹するのも飽きてきたので、発言してみる。
「私、1ミリも関係ないの。そんな中、無理矢理関係者にさせられて?放り出されて。理不尽に呆れられて。参加させるなら、せめてそれなりの納得できる理由と説明をちょうだいよ。あなたにこんなこと言ってもどうにもならないけどさ。」
言いたいことを言い切り、スッと気分が軽くなる。
言う人を間違えたこと以外、私に非は無い。責めるなら街主にしてもらおうか。
「私はあなたに、何かしたのか?」
困惑気味に首を傾げる。
「あ、ごめん。2人への不満が爆発しちゃって。ほんとごめん。」
とりあえず、場を落ち着かせるために謝罪をする。その後、愚痴のようにこれまでの経緯を説明する。
「それは…‥確かに、怒る気持ちも理解できる。だが、今はそんな悠長に……」
「説明!ざっと説明を!お願い!」
「そこまで言うのなら……」
と、渋々承諾してくれた。結構甘い人だ。
「しかし、今は危険な状況。こんな場所で話をしている暇はない。移動しながらでいいか?」
とのことなので、私は二つ返事で了承する。
各国々から集まった実力者を、A、Bと同じ実力になるように分け、交代で戦闘しているようだ。
時々補給部隊も来るが、量は少ない。
私がさっきいた場所は戦闘不可能と判断されたものが待機する場所で、他には壊れた武器防具を収納しているそう。
そんなところに私置いていかれたの?
ま、まぁ。話を続けよう。
休憩所は別場所にあるらしく、私はできればB隊に入ってほしいと言われた。
戦況は芳しくなく、このままだとジリ貧。引かなければならないが、引けない。それが今の状況らしい。
空力使いはA、B合計で10名で、内4名が戦闘不能。6名のうち3名は未熟とあり、主戦力は少ない。そこでの私達の存在はありがたいと言っていた。
そうそう、こういうのが欲しかったんだよ!どこかの少女達とは大違いの説明力だ。
まぁ1つツッコむなら、なんでこんな適当な人選なのってことだね。
人数は十分かも知れないけど、いかんせん強さがない。
こんなボロボロの状況で……
上の人がしっかりしないと。
「……と言った感じだが。」
「ほんとにありがとう。そこにいる2人、何1つ説明もしてくれないから、困ってたんだよ。」
「試しただけ。です。」
「知らなかったからとかじゃない。ます。」
おい、知らなかったのかい。とツッコミたくなるのを抑え、しれっと見学するために着いていく。
———————————————————————
説明パートも入れたら少し長くなりましたね。空力使いはまぁまぁいるようですが、強い人は少ないみたいですね。
ソラ無双が始まるのは、もう少し先……だと思います。
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