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7章 魔法少女と過去の街
228話 魔法少女は街主に会わされる
しおりを挟む街に戻った……というか戻されたんだけど、街の中はいつも通りどんよりと暗かった。
でも、先に帰ってきた組合員達が美談のように一連の話を語り合い、頷き合っていた。
そのおかげか、少しだけ明るさが増してるような気もする。
死人も少ない、魔物も狩れた。そんな話を薄い壁越しに聞いてる人もいると思う。
「よくやった!お前、天才だな!」
いつもの高笑いが聞こえ、1歩前に出る。
「おっ……と、避けんなよっ!」
また笑いながら、今度は肩を叩いてきた。
もういいや。諦めよう。
この人がいるってことは、トードって人も一緒なのかな。
「お前くらいの天才になれば、街主にでも会えるんじゃないか?」
何が面白いか分からないけど、笑いながら何度も肩を叩く。もちろん無視。
ほんと、何この人。私普通に嫌い。
「キュキュキュー!キュッ!」
キューは私の肩が危険に晒されたことで、対抗しようと体をジタバタと動かす。
キューさんや、それ、私にも負担来てますよ。
そう一言言いたかったけど、必死なキューを止めるのも忍びないので好きにさせる。
「あぁ、私の両肩……」
誰にも聞こえないよう、小さく呟く。
…………………街主?
このノリに流されて、重要なワードを聞きこぼす。
「え、さっき街主って言った?そもそも街主って?どこにいるの!会える?」
「なんだ!興味があるのか?」
質問マシンガンなんてもろともせず、というか話を聞かずに無視してくる。
「街の代表だ。頭は回るが、なかなかに下衆な男だ。近づいてもいいことはない。」
大人な感じに語りながら、誰かがこっちに歩いてくる。トードだ。
「居たんだ。」
「居て悪いか。」
そう一言返され、何も返す言葉が思いつかなかったので口を閉じる。
もっとネタに参加してくれてもいいんじゃない?
それで話が見えなくなることも多いけど。
「そんな話はどうでもいいな。これは団長から託された話なんだけどな………悪い話と悪い話、どっちから聞きたい?」
「それどっちも悪い話じゃん!」
盛大なボケに勢いよくツッコむ。久々にこんなセリフを言ってくれて、少し嬉しく…‥はならない。
知ってるよ。ボケじゃないことぐらい分かるよ。嫌な予感を感じる。魔法少女センサーが警鈴を鳴らしてる。
「落ち着け。悪い話だから、前置きをしてるんじゃないか。」
「どうしたトード。それで、悪い話って何だ?」
「ラディック、お前じゃない」と呆れた顔で呟き、本題の悪い知らせを話し出す。
「まず前者の悪い話だ。」
「はいはい。」
「戦争に参加しろ、と言っていた。」
「……………は?……ん?…………………は!?」
「次は後者の悪い話だ。」
「待って待って!追いつかない、処理しきれない!そんな威力の高い7文字聞いたことないから!」
「街主に会え……というより、街主が会いたがっている。前者の話も、街主の願いらしい。」
「………………………ふじこlp…」
私の脳は完全に思考停止した。
「伝言感謝するぞ、トード。団長の仕事もひと段落ついたところでな……」
「ただ自分から言うのが嫌だっただけでしょう。団長にそんな一面があったとは。意外だ。」
2人がそんな会話を挟み、「すまんな」と団長が謝る。
なんでこんな面倒なことしてくるんだろうね。直接言ったらいいのに。ぶん殴るけど。
「あぁ、あの話を聞いたのか。」
とてつもなく嘘臭く、少し考えるそぶりをしてから私の横まで来て呟いた。
「頑張れ。」
「いや軽い!」
「その元気があればいけるだろう。頑張ってこい。一癖二癖を超えたイカれ街主も、気に入れば相当なことはしないはずだ。」
気に入れば、という箇所を強調していうところ、だいぶやばいんだろうと予想がつく。
それでも他人事という体を突き通すのはちょっと酷くない?関係ない私を巻き込んでもらっても……
残りの2人もつられて「何とかなるだろ!」「まぁ、頑張れ。」と声をかけてくる。
「団長!私のことなんだと思ってるの!嫌だよ、戦争も街主に会うのも、厄介事の匂いしかしないよ!」
「そんなこと言われたって、俺にも討伐組合団長としてのメンツと立場ってものがあるんだ。俺に言うな。それに、俺も街主の元にお前と行かなきゃならない。俺だって嫌だ。」
そう反論してきて、軽く遇らわれた。
ギルマスが領主に反抗できないのと一緒で、団長も街主には逆らえないってこと?
私的には逆らって欲しいなー、なんて。
「ほら行くぞ。俺の立場まで危うくなる。……くそ、見つかられないように気をつけてはいたんだが。」
「ノー!ノー!」
そんな叫びも虚しく、私は団長に引き摺られて街主に会うことになってしまった。
そもそも街主ってなに?街の主だったりするの?字面だけは強そうだけど。
代表とか言われても……領主みたいな?
「いい加減諦めろ。俺だって嫌だが、仕事だ。目をつけられたからには、しっかり責任を果たしてこい。」
「……無理。」
「お前は子供か。」
子供ですー、17歳はれっきとした子供ですー。成人は来年ですー!
幼稚園児みたいな文句を考えるも、口に出すのはやめておく。精神年齢が引き下がる気がするから。
「そんな性格最悪アンド趣味悪の街主とかいう上の立場の人に会えとか、拷問でしょ。」
「聞かれたら処刑されるぞ。」
「……っていう、御伽噺を聞いたこと、あるな~。あはははは……」
冷や汗をかきながらそう後付けする。
「嘘だ。」
「え、殺していい?」
「感情の振り幅どうなっている。」
そんなやり取りを続けていると、街の中央にやってきていた。
ちなみに、この街は外から中に向けて段々豪華になっていってるよ。
豪華と言っても一般家庭の一軒家くらいの見た目だけど。
「ここだ。報告の際、お前の名前をどうしても出す必要があった。悪かったな。」
「今謝られても、もう後戻りできないじゃん。」
恨みがましく団長を見つめ、それをもろともせずに歩き出す。
団長、結構図太い感じ?
「早く来い。」
「はいはーい。」
———————————————————————
この物語は突然シリアスっぽくなったり、突然ネタを入れ込んだり、そんなお話が中心の異世界ネタファンタジーです。
つまり、次回はそんな話です。
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