魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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7章 魔法少女と過去の街

227話 魔法少女は勧誘される

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「お前、あの能力なんだ?炎が出るやつよー!」
最初に会った騎士もどきこと、組合員1号(仮)が、高笑いしながら背中をバンバンと叩いてくる。

 痛っ、痛いからそれ。キューが小刻みにジャンプしちゃうから、やめて。

「邪の力は感じ取れない。英雄の力か?」
「いや、空力だけど。」

「は!?」
「どうした、トード。」

 この人、トードっていうんだ。甘そうだね。

「空力とは、この世のごく一部の人間が、極限まで力を高めた時にようやく使える、伝説級の能力だぞ!どうしてお前が……」
愕然と私を見て、震えていた。

 ま、キューのおかげなんだけどね。

 キューのおかげで魔力循環もいい感じになって、空力も使えた。更に言えば、私もコツが掴めてきた気がする。

 ナイス、神様。
 この前言った裁判の件、無かったことにして。

「この子のおかげだよ。まぁ、それでも私にしか扱えないけどね。」
「興味深い……記憶しておこう。……その不思議な獣が、空力をサポートするのか……」
まじまじとキューを見つめ、「キュキュ……」と怖がりながら背中に逃げた。

 おーい、キューさんや。背中にぶら下がられたら、歩けませんよ。

「そんなことはどうでもいいとしてよ、どうだ?組合に入らないか?」

「そうだそうだー!入っちまえ!」
「小娘が入るのは気に食わんが、実力が伴うならば歓迎しよう。」
「これなら本隊にも劣らねぇ!」
外野がやいやいと騒ぎ立てる。

 これだから野次馬は。私の気もしれないでさ。…‥気分は悪く無いけど。でも、むさい男達には言われても嬉しくはないからね!

 ツンデレヒロインの爆誕である。

 誰だ今のナレーショ……

「本人の意思が先だろ………」
すると、よろよろとよろめいて歩く男が1人、そこにいた。あの時、天竜に吹き飛ばされた団長だった。

「……ということでだな。組合に入ってくれないか。団長である俺が、直々に頭を下げよう。」
部下の人の方に支えられながら、団長という体を変えずに首を折った。

「いや、そっちも勧誘?」

 言い方はなんか鼻につくけど、団長が頭下げるのか……
 フィリオが「頼む」っていうくらいレア?なのかな。

「ちょ、やめて。団長でしょ?なんでこうも堂々と視線気にせずに頭下げられるの?」
「視線を気にして、討伐組合の団長ができるか。」
一言そう言い、更に深く頭を下げる。

 意志の硬さというか、筋というか、そういうのがギルマスっぽい……かな?
 過去の人達を見てると、やっぱりロア達のことを思い出しちゃうな。

「頼む。この通りだ。」
「「「「お願いしますっ!」」」」
外野達も、団長に触発されてからそう元気よく礼をする。

「だとよ。入ってみたらいいんじゃないか?」

「………分かった。でも、中立っていう立場でお願い。組合員になるつもりはないから。」
そんなことしたら制限されそうだし、というのが本音だけど、顔を俯かせて本音を隠す。

「それで十分だ。今の状況では、本隊に吸われるだけだ。それのほうがありがたい。」
頭は下げたまま、そう言う。

 そういえばあったね。戦争参加組の本隊が。
 確か、本隊のおこぼれがこの討伐組合だったよね。

「もう私達、中立ってことだし……情報とかくれない?」
「ちゃっかりしてるな。」
「褒め言葉として受け取っとく。」
そのまま空力と称してヒールで癒し、その辺の岩に座らせる。

 空力でヒールは再現できないんだよね。

 魔法の場合、魔力を捏ねて粘土みたいに形作る感じで、その精度によって威力やスピードが変わる。

 空力の場合、イメージの器?型みたいなのを作って、脈から得た力を均一に練り込んで型に流す。その型を剥がすと姿を現す、みたいな。

 簡単にいえば、空力には型が必要ってこと。だから、ヒールとか実態のないものは再現できない。そもそも実力が伴わないから無理。

「便利なもんだ、空力とは。これを本隊にうまく隠して行ければな…………手柄もこっちに渡る。」
最後の方は小声なのと、組合員の喧騒でかき消されて聞こえなかった。

「で、情報だったな。」
「そうそう。」
ここ最近情報しか集めてない気がするけど、大事なことには変わりないので気にしないことにする。

「主に本隊の話だ。本隊には、空力やそれに似た力が使える者が多々いる。主な構成員はある程度の剣士だが、時折切り札として空力使いを出す。戦争では、彼らがいたからこそ侵略を防げただろう。」
この辺りを語り終えてから、少し顔が暗くなる。

「だが、それだけだ。実際は戦闘狂の集団だ。そこの落ちこぼれがここに落とされ、討伐組として魔物を狩る。弱いのに戦闘狂。討伐組は、死ぬために、雑魚を処分するために作られたいわば処刑台だ。」
悔しそうに唇を噛み、手からは血が滴る。

 団長の過去はよく分からないけど、目の前でたくさん人が死んだのかな。
 そりゃ、テンション高くやってかないと、気が滅入るよね。

「……その処刑台に、私、立たされそうになったんだけど?」
その疑問点を聞いてみる。

「我々にとってに処刑台ということだ。お前。いや、名前は何という?」
「空。」

「ソラの強さでは死ぬことはない。中立とあれば、戦争に行かされる心配も無いのだから、尚更関係ない。」
安心しろ、と、肩を軽く叩きながら言った。

「じゃあ、何でここに竜が?竜は魔物サイド。戦争中にこっちの陣地に敵兵がいるのはおかしくない?」
今、たまたま思いついた怪しげな点を挙げた。

 思えばそうだよ。何で竜がここにいるの。それ、本体が見逃したんじゃないの?

「詳しくは分からんが、本体がポカをやらかしたんだろう。そろそろいい頃合いだ。………討伐組合、全隊撤退!今すぐ街に戻るぞぉぉ!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
行きと同じような掛け声で、組合員は全力疾走で退却を始めた。これもまた行きと同じように、私はもみくちゃにされながら街へ向かう。

———————————————————————

 中立になり、討伐組合と繋がりができたソラさん。目的の龍神の情報を得るため、次はどんな人物と関わるのか。注目ですね。
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