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7章 魔法少女と過去の街

226話 魔法少女と勝利

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 竜と戦い始め、数分経つ。若干押され気味なのは、魔法が使えないせいもが半分、天龍が普通に強いのが半分。

 空力……結構扱いづらい。あの時は火事場の馬鹿力的なのがあってできたけど、今はうまく使えない。地龍さーん!ヘルプミー!

「ギャォォォォォォォォォ!」
「うおっ!」
腕を振り下ろされたかと思ったら、尻尾で薙ぎ払われ、木を折りながら吹き飛ばされた。

「ったぁ~っ!」
「キュキュッ!」
その拍子にコートからキューが出てきて、草に落っこちる。

 背中、背中っ!背骨粉砕するって今の!
 魔法少女服無かったら、天に召されてたね。

 何ひとつ面白くない冗談で気を紛らわせつつ、途中で落ちたキューを探す。

 ……ちょっとまって。キューを使えばもしかして……よし。

「キュー!キュー!」
文字で見ると鳴き声にしか見えないキューの名前を呼ぶも、反応はない。

「キャオォォォォッ!」

「さすがに2度は当たらないよ。」
今度は腕、尻尾共に空中で体を捻って回避し、同時にほんの少しだけトールを混ぜて刀を握る。

「一閃。」
頭が地面方向に向いてる中、本気の斬撃を喰らわせた。

 さすがに効果無かった泣くよ?いくらトールの方が加減されてても、傷くらいは……

「ギャォォォォォォ!ギャァァァァァァッ!」
その思考は、天竜の口から発せられる轟音によって掻き消され、咄嗟に耳を押さえる。よく見ると、鱗の表面が削れている。

「キュッ!」
その直後、私と天竜の間を白いふわふわことキューがジャンプする。空中で、自信満々にこっちを見ている。

 え、え!?そんなキメ顔今は必要ない!

「キュー、こっち!」
私は轟音に顔を歪めながら、両手をキューの方に伸ばす。

 届かない……ならっ!

 そこで私も跳躍し、キューをお腹に抱き寄せ、肩から前転をして衝撃を殺す。

「大丈夫?ってか、危なすぎるから今後はやめて。ほんとに。」
「キュ、キュー……」
落ち込む素振りを見せる。

「キュルゥゥゥゥゥゥゥッ!」
その瞬間だった。一筋の閃光が走り、地面が穿たれる。

 ……は?

 状況の異様さに驚愕し、同時に思考が止まる。

 これは、突然の出来事に驚いたわけじゃない。

「さっきまで、私がいたところ……?」

 そう。あの閃光が落ちたのはキューを助けるために飛び出した、あの場所だった。

「キュー!」
「もしかして、キューが助けてくれたの?助けられたの、まさかの私?」
嬉しそうにキュウキュウと鳴き、「もっと頼れ」と言ってるように見える。

 そろそろ戦闘に戻ろう。もちろん、キューも一緒に。

 キューを肩に固定し、天竜を睨む。

「知能は低い?何にせよ、一撃でどうにかしないと、またあぁなる可能性がある。」
大穴を一瞥し、苦い顔をした。

「行くよ、キュー。空力の方は頼んだからね?」
「キュウ!」
自信ありげに泣き声をあげ、「よし」と一言だけ呟いて自分を奮い立たたせる。

 空力は魔法と大体一緒。過程が違うだけで、結果は一緒。……多分。
 だから、魔法の時と同じだイメージが大切。

 イメージイメージ。あ、狐人。
 確か炎を使ってた。なら炎刀みたいな、炎を刀に付与したり、炎が伸びて刀の形になるとか。

「はぁぁぁぁっ!」
身体激化を一瞬脚に使い、思いっきり天竜に飛び込む。

「キュウゥゥゥゥゥッ!」
肩の上でキューが吠え、その瞬間に刀に炎が宿る。

 空力、発動したね。
 今の私は力も技術も全て神様に貰ったもの。なんだろう、私って……神様の脛をかじる虫?

 でもまぁ、今は勝てればそれでいい。

 天竜は同じように啼き、空を仰ぐ。すると、すぐさま雷が降る。

「斬れ、炎刀!」
必殺技のように叫び、歯を食いしばって脚に力を込める。雷に振れる直前に刀を頭上に振り、一瞬魔力が暴発する。

 これ、結構キツイ……
 でも、なんとか雷は消せた。

「次はこっちの番だよ、天竜!」
鋭い目で天竜を捉え、力の限り走る。

 ステータスはあっても、魔法が使えなければ同格には勝てない。
 魔法が使えない時の対処法、今のうちに学ぼう。

 天竜は鱗に雷を纏わせ、矢のように射出したり、腕や尻尾を器用に動かして武器のように攻撃してくる。
 私はそれを、刀で防ぎながら接近する。

「一撃で倒さないとダメ。でもそんな高火力な技持ってない……隙を作る?なんとか物理でできればいいけど……」
一抹の不安を抱え、額に汗が滲む。

「キュロォォッ!」
「はっ!」
刀を滑らせ、尻尾をいなす。その隙をついてステータス任せパンチを喰らわせる。

 そして跳躍っと。

 パンチで尻尾はあらぬ方向に飛んでいき、バランスが崩れた瞬間を私は見逃さない。

 ステップを踏むようなリズムで攻撃を回避、防御を繰り返す。腕を薙いできても、それを足場にして跳ぶ。

「キャロォォォォォォォォォォォォォォッ!」
天龍の顔面に到達した頃に、天竜はそんな咆哮を上げる。

「まさか、ビーム!?ちょ、今避けれないよ!」
口を大っぴらに開けた天竜を見て、私はあたふたと焦り出す。

 え、えぇ!どうすれば……
 防ぎきる?さすがに無理。いなすなんて技術も無いし、どうすれば……

 って、どうしてこんな場面でゆっくり時間が流れるの!

 謎のゾーンに入り、脳内で文句を垂れる。いつものことだ。

「キュウッ!」
肩から、力強い声が聞こえてくる。

「キュー……?」
「キュキュッ!キュー!キューーーッ、キュッ!」
なんて言ってるかは分からないけど、とにかくやれと言ってるような気がする。

「何も分かんなかったけど、オッケー。魔法が無い私なんてただの変人なんだから、しっかりフォローしてね。」
一度しっかりと目を合わせ、信頼を確かめる。

 今思い出したけど、確か私は雷に対する耐性を持ってる。だから、多少は無茶ができるってことだ。     
 冷静になると、色々思い出すものだね。

「斬れ!業火の炎刀。」
刀を鞘に戻し、体を丸くする。

「目の前の敵を薙ぎ払え!」
願掛けの必殺セリフを吐き、刀を鞘から抜く。すると炎は、数メートル程の長さまで伸びていた。

「キャロォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
天竜は口から光線を吐き出し、それが刀身に触れる。

「くっ……」
なかなかの圧がかかり、意識が投げ出されそうになりながらも唇を噛んで覚醒させる。

「はあぁぁぁぁぁっ!届けぇぇ!」
「キューーーッ!」
私とキューがそう声を張り上げると、炎の勢いはさらに増す。

 ビームと炎刀の一騎打ち。
 もちろん、負けるつもりはない!

 徐々に光線が刀身に触れている部分から凹んでいき、最終的には全てがかき消される。

「今度は、私のターンだね。」
謎ゾーン、略して謎ーンの中、私はそう勝ち誇った笑みで言い放つ。

「覚悟してよ、天竜。」
切り返しの炎刀が、天竜の首に肉薄する。次のコマで、天竜の首は刎ねられた。首は空に舞い、地面に白い血が流れた。

 これで討伐完了。あとは組合に任せるよ。
 後処理とかめんどくさいことやりたくないし。

 ストッ、と、事故ることなく綺麗に着地する。

「こういうところは主人公っぽいんだけどね。」
刀を鞘にしまいながら、そんな戯言を吐く。

 誰かー、この私を主人公にしてくださーい。

「竜が死んだぞぉぉぉぉぉぉ!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」
思考を遮るように拍手喝采が起こり、辺り一面お祭りムードに包まれる。

 そして、私が思ったことをただひとつ。

「え、見てたの?」

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 最近気分が悪くて元から上手くない文章がさらに悪化した気がします。
 どうか、温かい目でご覧ください。

 こういう作品を書くのは、いつになっても小恥ずかしいですね。
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