魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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7章 魔法少女と過去の街

220話 魔法少女は過去に行く

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「ここ、どこ?」
私は今、謎の森にいる。これが俗にいう異世界転生というものだろう。

 ……既視感とは、このことだろうか。

 でも、数ヶ月前とは少し違うことがある。それは私が強くなってること、この世界のことを少し知ってること、そして…….

「キュゥッ!」
「だから暴れない!」
白いもふもふ(いつの間にか名前がキューになってた)が、私の腹部に飛び込んでくる。

 このキューとかいう聖獣?が、新たに仲間に加わった。

「確かこの森、私が異世界転生したてホヤホヤの頃にいた森じゃない?」
辺りを見回すと、少し違うけど見覚えのある景色がそこにはあった。

 ここでケルベロスを倒して、ロアとパズールに行ったんだっけね。
 ほんの少し前の出来事のはずなのに、すごい久しぶりな感じがする。

「キャウッ、キャウッ!」
キューが私に抱えられながら、草むらの方を目掛けて吠えまくる。

「何かあるの?……魔物?」
その先には、見覚えのある魔物。小型のケルベロスが5匹で人を襲っていた。ぱっと見、騎士が2人。

 これ、助けたほうがいい系?
 どちらかといえば助けたほうがいいと思う。うん、そうしよう。

 このキューの能力も試してみたいし。

「キュー、できる?」
「キュウ!」
クリクリな目を精一杯キリッとさせ、力強く吠えた。

「くっ!まだそこにもいるのか!化け物め!」
「静かにしろ。余計に気分を悪くさせるだけだ!」

「一体どこから侵入してきたんだ……こっちはまだ、戦争準備中だというのに……」
ごちゃごちゃ喋ってたけど、草道を駆けているため、全く耳に入らない。

「とぉー、いっ!」
ドアを思い切り蹴破るように、両足ジャンプで騎士と魔物の間に入る。

「やって、キュー!」
「キュワッ!」
任せろ!みたいな感じで吠えると、私の腰のステッキから魔力が洩れ始める。

 これで戦えってこと?
 ……ま、いっか。殴るだけでもこの程度はなんとかなるし、お試しで。

「うーんと、なんの魔法がいいんだっけ。じゃあ、アクアソーサー。」
なんとなくそれを選ぶ。いつも通りにえーい!と5つの水の刃を飛ばした。飛ばしたらはずだった。

 キュインッ!キュインッ!ギュイィィンッ!
 そんな危険な音が聞こえてきた。

 ん?ん?チェーンソーでも使ってるの?

「キュキュ~!」
「キューの力、なの?」

「キュゥ!」
体をブンブンと縦に揺らす。この動きが、地味に面白くなってくる。

 アクアソーサー。いつもなら音はカッターくらいで威力はチェーンソーだけど、音がチェーンソー、威力は……ダイヤとか切るやつ。

「うっわ、首とかいらないよ。いつも思うけど、どうして魔物の血はこうも毒々しいの……」
鼻をつまみつつ、ステッキに収納する。

 さすがに派手にやりすぎたかな。返り血はついてないけど……

 スンスン、と鼻を鳴らす。

「血の匂い、するなぁ……」
そう呟き、ため息を静かに吐く。

 そういえば、街のみんなどうしてるんだろう。スペアステッキって機能してるのかな?
 ツララとか大丈夫?

 それはクミルさんになんとかしてもらおう。

 うーん。こんなこと考えてても、龍神を殺すなんて無理だ。
 一旦忘れよう。そうしたほうがいい。

「それで、大丈夫?怪我とかは……」
後ろを振り向くと、そこには誰もいない。ただ、人が踏み躙ったであろう草があった。

 逃げたな。こりゃ、逃げたな。
 助けてあげたっていうのに逃げるって、そんな恩知らずな騎士見たことないよ。

「はぁ~……助けて損した。」
その場に腰を下ろし、休みながらそう吐き出す。

 せめてなんか言ってから逃げたらどうよ。そんなんじゃ、魔物をただ押し付けられただけじゃん。

「キュ~?」
「はいはい、そろそろ街に行きますよっと。」
お尻についた草をパッパッと取り、もう1度キューを抱えて街の方向へ歩き出す。

 多分、こっちで合ってると思う。
 間違ってたらその時はその時だ。

————————————

「はぁ、はぁ……振り切ったか?」
「あぁ。誰も追って来ないな。」
ある騎士らしき男2人が、息を上げて街の近くまでやってきていた。

「あんな女、見覚えあったか?」
「いいや。少なくとも、ここ数年で見かけたことはない。」

「記憶の天才が言うなら間違いないな。」
そう言って、大笑いをする。

「それはそうと、あんな女に魔物押し付けてどうするんだ?」

「時間稼ぎだ。食ってる間くらい、止まっていてくれるだろ。」
「そうか。さすがお前。その頭、少し欲しいくらいだな。」
また笑う。片方の男は鬱陶しそうに見つめるも、笑う男は我関せずといった様子だ。

「それより、早く団長に知らせたほうがいいんじゃないか?」
「あの程度の女、知らせる価値はない。」

 あの女———ある魔法少女が、彼らを助けたことなど無かったかのようにして言い捨てる。

「よし、行くぞ。」
「おう!」

————————————

 楔となった魔法少女が過去にいるならば、軸である龍神もまた、この過去にやってきていた。
 だが龍神にとって過去ここは現在として存在させようとしている。

 何故ならば、龍神はこの世界で、からだ。

「……………同じミスは、2度もしない。」
隅々まで目を光らせ、龍が滅んでしまう世界線を排除する。なにがなんでも。

 それだけが今、龍神に残された使命。

 龍が滅んで仕舞えば、龍神には何も残らない。ただの生きる屍になる。

 滅びもしない、生きもしない。
 そんな自分にならないよう、龍をなんとしてでも生かさねば、ならない。

 それは龍のためではなく、自分のためになっていたとしても、もう後戻りは出来はしない。

「………まずは龍に襲わせる。………絶対に手を出してはいけないと、本能に刻み込む。」
龍神は立ち、龍たちへと伝える。

 「人間を襲え」と。

 その言葉で、この世界の命運は決まった。

 ———それが、龍の……いや、龍神の生きる道か死ぬ道かは、今知るものは誰もいない。

———————————————————————

 いろんな視点がおり混ざった回でした。

 過去に来たソラ。その場であった街と関係のありそうな男。同じく過去に来た龍神。

 一体これからどうなるでのしょう。

 話数を見て気づいた方もいるかもしれませんが、次の章も過去の話です。次の次も……いえ、なんでもありません。
 もう少々お付き合いください。
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