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7章 魔法少女と過去の街

219話 魔法少女は質問する

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「まず最初の質問。最初に言ってた楔役って、なんのこと?」
「あぁ、そのことですか。」
中学生くらいの背丈の男(使いさんとでも呼んでおこう)は、変わらない表情でこちらを見つめる。

「楔役とは、先程も説明した通り、過去と現在を繋ぐ命綱です。ミスソラ。あなたが死ぬと、もちろん世界は分離し、現在は消えてなくなり、新たな未来がやってきます。」
では、次を、と言って、次の飲み物をカップに注いだ。

 私、結構やばい役目背負わされたってこと?
 そもそも龍神を倒せとか言われても、無理だよ。他の人には頼めないの?

「ねぇ。龍神殺しって、他の人じゃダメなの?」 「ダメです。」

「即答ですか、そうですか。」
想定内なので、そこまで落ち込むことはない。

「理由って聞いてもいい?」
「はい。現在の人物が過去に干渉するのは不可能です。干渉が可能なのは、過去に戻る張本人である龍神と、楔役のミスソラだけ。なので、頑張ってください。」

「そう言われましても……」
大きめのため息がつい漏れ、真っ白な空を見上げる。

 ほんとにここ、どこなんだろう。質問したいけど、教えてくれるのかな。
 他にも創滅神とか使いさんのこと聞きたいのに。

「せめて、名前くらいは教えてくれてもいいんじゃない?」
「それは無理だよ、ミスソラ。」
カップに注がれた液体を美味しそうに飲み込み、そう呟く。

「質問は後1つでお願いします。もうすぐ、過去に戻されるので。」

「はぁっ!?」
突然の暴露に机を叩いて立ち上がり、「うるさいです」と叱責された。

「ここは時間を引き伸ばしているだけの世界です。早くしてください。」

「………私、絶対倒せる自信ないよ!何かないの?」
最後にそんな情けないセリフだけを絞り出し、使いさんの目を見る。

 私に何を求めてるか知らないけど、自分の力を過信なんてしない。人神やら恵理さんやら、1人じゃ不可能な相手なんてうじゃうじゃいる。

「そうは言っても……なら、1つだけ創滅神様から力を与えましょう。聖獣を連れて行くことを許可します。聖獣は神が生み出した力の結晶、ミスソラに力を与え、僕と同等レベルの力は扱えるようになるでしょう。」
ソファ一式が、もう1度パチンッ、という音で消し去り、もう1度指を鳴らした。

「キュゥッ!」
ボフッ。そんな音と共に地面に何か白いものが顔に張り付いた。

 え、なにこれ。

「龍神を殺したら、返してもらいますよ。では、龍神を殺せるよう祈っております。」
コツ、コツ、と、現れた時と同じように帰っていく。

「キュゥ?」
「あなた、何?誰?」
顔から引き離し、そう聞く。

「キュキュ~!」
白いもふもふが飛びついてきて、肩に乗っかってきた。

「だから何!ちょっと、使いの人ー!戻ってきて説明を!誰でもいいからこれの説明をー!」

『ウェリーと出会った時に使った技をやってみればいいだろう?我が雫よ。』
『創造神様、いけません!』
よく響く存在感のある女性の声と、若い女性の声が光の中に木霊する。

「………ん?」
声はすぐに途絶え、またただの真っ白な世界に戻る。

「キュキュキュ~キュゥッ!!」
「ちょ、こら。暴れないで……」
なんとか白いもふもふを腕の中に収め、さっきの声について考える。

 創滅神様とか聞こえたよね。あれ、創滅神なの?にしては、手紙とキャラ違くない?でも焦りながら創滅神様って言ってたしなぁ。
 うん、分からない。

 でも、出会った時か。ウェリーってあの使いさんのことだよね。

「あ、鑑定眼か。」
右眼で鑑定眼を使い、白いもふもふを見る。


 聖獣『』
神の力により生まれた正式な使い魔。力の源のため、契約をすれば力を引き出すことができる。その力は、四神をも凌ぐ可能性がある。


「聖獣の隣のかっこ、なんだろう。聖獣自体の説明はウェリー?とほとんど変わらないし……」
うんうん唸ってると、「キュゥ?」とクリクリの目で見上げてきた。

 これほんとに何?聖獣とか言われてもピンとこないし、成獣ってもっとこう……神聖なというか、神々しいものじゃ?

 目の前の、まるで綿のような生物を一瞥し、脳内聖獣と見比べる。
 更に疑心は深くなる。

「あなた、名前とかは?」
「キュキュー?」
よく分からないのか、首を傾げる。というか首がないので体をひねる。

 どんな感じの見た目とか言われても、白いもふもふ以外形容できないし……
 でんぐりがえしてコロを白いもふもふにした感じ。

 我ながら意味分からない。

「名前の欄「『』」とかいうわけ分かんない表記だし、そもそも名前とかあるの?」
「キュウ?」

「あ、そうですか。」
もう話を聞くのは諦めて、自分で勝手につけることにした。

 『』これから連想できたら楽なんだけどね。
 ……空白。空白を英語でー、さんはい!

「って、これに英語が似合うわけない!」
ノリツッコミでもふもふを投げ捨てそうになったけど押し止まり、再度名前を考える。

 ……視界の端に光が現れてるんだけど、これ早く決めたほうがいいやつだよね。
 これ、ここに来た時と同じ現象起こってるんですけど!?

「キュッキュー、キュッキュ~!」
「あぁもう、キュッキューうるさいよ!キュー!」
光の進行とキュキュキュキュ言われたことによって、私も同じように叫んでしまう。光は私の視界を完全に塞ぎ、意識は落ちていく。

———————————————————————

 ステータス

 名前 キュー
 
 年齢 ———

 職業 聖獣

 レベル ∞

 攻撃———   防御——— 素早さ———

 魔法力——— 魔力∞

 装備 ———

 魔法 ———

 スキル 創滅神之加護 魔力譲渡 革命 絆
英雄

  SP   ———


 ようやく本編突入ですね。今までのも本編といえば本編ですが本編というには本編らしからぬような気もするような気がし始めまして……書いていて意味分からなくなってきたのでやめさせてもらいます。
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