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7章 魔法少女と過去の街
216話 魔法少女は採用する
しおりを挟むその後も何回かの話し合いがあった。その時はさすがにギルド職員同伴で、最終的には採用という形で決まった。
その時私は、商業ギルド側に1つお礼の言葉を述べて家に帰り、翌日からの雇用となった。
もう1度説明しておこう。
名前はクミルさん。性別は知っての通り女性で、19歳。花に対する愛はすごい。
他の街から出稼ぎに来たけど、なかなかいい職業がなくて私のところを商業ギルドに勧められたという。
最初は17歳という年齢に不信感はあったものの、冒険者ギルドで噂を聞くと、いい噂が多かったため安心はできたそうだ。
見た目は薄緑の髪に、緑色のメッシュがところどころにある。
これ染めてるように見えるだろ?実はこれ地毛なんだぜ?なんて。
目も黄色で、異世界感がある。
家は偶然に近くにあるから、そこから通うらしい。
そして、クミルさんがやってくるのは今日からだ。今日から毎日ビシバシ働いてもらうよ。
ちなみに賃金は労働時間的に月に銀貨32枚、その他ボーナスとなった。
クミルさんもくるということで、軽く門を作って私の作ったコインを使わないと開かないようにした。
魔力付与と魔導法による操作で、所有者から一定の距離離れると、磁石みたいについてくるようにした。意味あるかは知らないけど。
でも、結構時間かかったんだよ、これ。
「ソラさん、本日からよろしくお願いいたします。」
「こっちこそ。毎日来てもらうことになるけど、午前だけだから。あ、午前じゃなくても遊びに来ていいからね。」
「はい。甘えさせていただきます。」
晴れやかな笑顔でそう言い、太陽と合わさって神秘的に見える。
「まずは現在の花の状態、それから肥料や水を教えていただけませんか?足りていないものは買っておきますので。」
その言葉に了解の返事をし、適当に家の周りをぐるっと1周した。
その途中でクミルさんはふむふむ、と頷いたり、メモを取ったりしていた。
「花の状態は悪くはありません。ですが、ソラさんの使用する魔力水では、魔力を含みすぎになると思います。鑑賞が用途なら、魔力の量を減らすべきです。」
「そんなの分かるんだ。」
「えぇ、慣れていますので。」
ニコッと微笑む。その拍子に髪が揺れ、キラキラと輝いて見える。
すごいね。これが美人パワー。
「本日は確認程度に抑え、必要なものを買って明日に備えたいと思っております。」
「そ、そう?頑張って。」
まだ何もしてないはずなのに、とてつもなく働いてくれたような気がして少し戸惑う。
ま、まぁこれで花の問題も解決したわけだし、私は私のすることをすればいい。そろそろ依頼とかやりたくなってきた頃だしね。
今日は一旦ツララと遊んで過ごそう。
いっ、一応ね?明日からレベル上げに行くから、セーフ、セーフ。
「では、早速買い出しに行って参ります。」
まるでメイドさんみたいに頭を下げ、足早に降っていく。
言ってくれたら私がいくのにね。
………クミルさん、お金って持っていったっけ?…………持っていってないね。
「クミルさーん!ちょっと、お金。お金!」
————————————
1人の老人———龍神ルーは、ある空中要塞にて禁忌を犯していた。
過去を変えるという大罪を犯そうと画策するルーは、仕上げである楔打ちに難航していた。
過去改変とは大きすぎる変化で、それこそ拍子に世界が滅んでもおかしくはない。それを防ぐため、この世界と過去の世界を繋ぐ楔を打ち込み、大きすぎる変動を小規模に抑え込むことが必要だ。
楔役となれるのは、それだけの力と運命に抗う度を超えた力を持たなければいけない。
そうでなければ、楔ごと衝撃に耐えきれずに死んでしまう。
ルーは、ある少女を楔役に抜擢した。
だが、どれだけ経っても楔にはなるない。もっと時間がかかる。
数日という読みは見事に外れた。
何度も調整し、調整し、調整し、調整し、調整し、調整した。
なおもまだ、楔にはならない。抵抗が強く、楔を打つには鋭すぎる。
「…………早く、しなければ。」
焦りを滲ませて、ぽろりとこぼす。
開かれた龍陣は、このままでは閉じてしまう。
繋がった脈は、いつしか離れていく。
壊れた平穏は、また修復される。
このままでは、過去は変えられない。
達成できない不安に駆られ、魔力に乱れが生まれる。
龍を守る。それだけが今ある、ルーの正義。
その唯一の正義すらもこぼしてしまえば、ルーは悪に染まってしまう。絶対に失敗はできない。
————————————
この世の端。
誰も近づくことのできない、世界の最期を見守る者がそこにいた。
時は動く。時は戻る。
世界は、目まぐるしく回るもの。
動き続ける世界の本質は、不変だ。何があっても、回り回って元の位置に帰ってくる。
我が雫たちよ!
その不変を、変えてみせろ!
———————————————————————
今回短めでしたね。すいません。
でも、あれです。シリアス感あるので許してください。
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