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7章 魔法少女と過去の街
215話 魔法少女は面接官 3
しおりを挟む「ソラしゃーん!無事に見つかりましたので、商業ギルドにお越しくださーい。」
街中を歩いていると、聞き覚えのある噛み声が聞こえてくる。
サーズことサーじゅ……ではなく、サーじゅことサーズさんだ。
「ここ街の真ん中だよ?場所考えて欲しいんだけど……」
「あ、しゅみません。あっ、間違えました。」
「その噛み癖、どうにかならない?」
はぁ、と1つ呆れのため息を吐き、用事を聞く。
「癖なもので。そうでした、用件ですね。昨日の件、候補が1人見つかりましたので、商業ギルドまでお越しいただければな、と思いまして。」
「早くない?」
「安い・早い・良質がモットーですから。」
商業ギルド職員専用のバッチを見せ、ふふんと鼻を鳴らす。
どこかの牛肉チェーン店で似たような言葉を聞いたことがある気がするけど、別世界なのでこの際無視しよう。
「ちょっと待って。安いってなに?」
「相談料や手数料などですね。あとは売上の2パーセントですよ。ソラさんの場合、前半2つは免除されています。ギルドマスターが特権を使って許しました。」
「マリンさん、そんなことしてたんだ。」
意外な事実を知り、結構驚く。
「はにゃし……こほんっ。話がずれましたね。」
「ゆっくりで、いいよ。」
そろそろ噛まれるのも慣れてきたので、温かい目で見守る。
多少あざとくても、そこは目を瞑ろう。これは本当の癖だと信じて。
「採用するかどうかはソラさんが判断してください。ですので、顔合わせをと。」
「あーね。面接官ソラ再誕って事か。」
土で作られたメガネをかちゃっとはめ、キリッと目を光らせる。
「かっこいいですね。」
「棒読みやめて?」
サーズさんは無心で手を叩いていた。
「もういいから、そろそろ案内お願いできる?」
「はい。もちろんでしゅ。」
噛んでるのはいつものことなので、無視して案内されることにする。
「ギルドマスター、お連れしました。」
「お疲れ。後退するから、サーズは受付に行ってなさい。」
「はい、ギルドマスター。」
そう挨拶をして、受付の方に戻っていく。
「いきなりだけど、顔合わせをします。」
「……いきなりすぎない?そもそも、今いるの?その人。」
「居ますけど?」
一瞬声が出そうになるけど、グッと堪える。
もし私が来なかったらどうするつもりだったんだろう。
「その顔、もし自分が来なかったらどうしてたの?っていう顔ですね。」
突然私の顔に近づいてきて、そう言い放つ。私はそれに一瞬たじろぐ。
「正解って目ですね。私の観察眼は劣ってはなかったってことかしら。」
「分かってるならもう口で聞きますけど、実際どうするつもりだったんですか?」
「来ないという選択肢は元からありませんでした。ソラさんに魔法の才能があるのなら、私には商人の才能がある。商人は信頼とお金が命なの。騙されてしまわぬような観察眼を、私は持っているのよ。」
自信満々にそう言い切り、最後には、付いてきてください、とギルマスモードに切り替わった。
マリンさんがモードに入るなら、私も面接官モードに入らないとね。
メガネメガネっと。
眼鏡を装着し、準備は万端となる。
「依頼主様が到着いたしました。私は仕事に戻らせていただきます。依頼主様は優しい方なので安心してください。」
ドアをノックし、マリンさんがそう告げる。
「ちょっとちょっとちょっと!なんで?仕事がないからここにきたんじゃないの?」
部屋の中に聞こえないように、小声で捲し立てる。
「いえ、仕事は山のようにありますよ。」
澱みのない、綺麗なスマイルを見せる。
わぁ、きれー。じゃないんだよ!
「好きに話して、採用か不採用か決めるだけです。簡単なお仕事なので、私は仕事に戻らせてもらいます。竹林の件でまだ片付いてないものもありますし、大変なんですよ?儲けはある多いのでいいですが。」
そう言うと、足早に去っていく。
本当に私1人でやらなきゃいけないわけ?
前回は、仲介役でギルマスがいてくれたからスムーズにいったけど、今回私1人?
……はぁ。文句ばっか垂れても何にもならないし、腹を括りますか。
「入りますよ。」
扉をがちゃっと開けると、目の前には和服を模したような服を着た女性が目を閉じて座っていた。
空気が違う。
何あの自然に愛されたような人は。
というか、なんでこの世界には美男美女が多いわけ?
昔、橋本○奈とか浜辺○波とかが人気だったらしいけど、そんなレベルの人がここでは中の上くらい。
異世界って怖い。
「失礼します……」
ちょっとふざけにくくなり、メガネを外す。そのままちょこちょこと歩いといき、対面の椅子に座る。
「よろしくお願いします。」
「えぇ、こちらこそ。」
優しい声音を響かせる。
マリンさんの紹介なんだから、変な人ではないとは思うけど……
ちょっと不安。
「クミルと申します。」
「あ、私は空です。」
短い沈黙が流れる。
「マリンさんから話って聞いてます?」
「えぇ。大体は伺っております。」
するとクミルさんは、花の話を一通りして多少は農業の知識もあるとも話す。
専門用語的なのが多くて、全く分からないからカットしてるけど、愛は十分伝わった。
品と愛、両方ある。
「でも、なんで私のところに?」
たった17歳の少女のところで働きたいなんて物好き、どこにもいないでしょ。
テレスさんは違うよ?だってテレスさんが実質店長じゃん。
「噂が流れていますよ。中には狂犬や青い悪魔など言っている者もおりますが、お世話になったと言う方の噂では、子供好きの優しいお方だと。」
それから少しの間だけ会話を重ね、一応は信頼できると言うことで、待遇について細かい話し合いをして解散となった。
ちなみにその内容はしっかり書面を作り、ギルドに提出というか……まぁ預けた。
今回のことで1つ分かったことがある
商業ギルドってすごいね。
———————————————————————
もうそろそろ、多分、あと少しで、本編に入る可能性があるような気もします。
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