魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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7章 魔法少女と過去の街

214話 魔法少女は人を雇う

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 私は今、冒険者ギルドにいる。理由は1つ、人を雇うためだ。

 なんの人って思うかもしれないけど、花とか植物の管理ができる人だ。

 花見の時に思ったんだよね。このままだと、私達だけだと限界も出てくるし、何より知識が足りない。
 花とか畑の管理が、全然行き届かない。

 だから、いい人材を探すために、あの時みたいに宣伝を頼みにきた。


「無理だ。」
「えぇー!前は許可してくれたじゃん!」
出オチだ。

「前回は俺の娘が働く場だったから許可しただけだ。今回は別件だろ。」

「そんなこと言わないでさ。ほら、お願い!」
「無理なものは無理だ。そもそも、こんなむさ苦しい場所に花を愛でる趣味のある奴がいると思うか?」
ド正論にぐぅの音も出ず、眉を曲げる。

 前はギルマス宣伝のおかげってことか……

 それにしてもギルマス、権限は使わせずに自分の力でやらせるって言ってた気がするんだけど。

「じゃあどうすればいいの……」
肩を落とし、最後にそうこぼす。

「商業ギルドにでも行ってくればいいだろ。そもそも俺だって忙しいんだ。そんな相談、レンカでしてくれ。」

「分かった………って、そうか。商業ギルドに行けばいいのか。」
ようやく答えに辿り着き、顔をバッと上げる。

「お前、まさか気づいてなかったのか?」
「そのまさか。」

「そんなことで胸を張るな。……はぁ。紹介状くらいは書いてやろうか?」

「いいの?」
突然の提案に首を傾げる。

 貰えるなら貰っておきたい。損があるわけでも無いしね。

「1つ条件だ。今後2度と、こんな程度のことで呼び出してくるな。ギルドマスターの役職は、お前が思うほど簡単なものじゃない。」
「分かってるって。」
紙にハンコ押すだけでしょ、と言おうものなら即刻追い出されかねないので、心の奥底に留めておく。

 実際、会うたびにうっすらと目元にクマがあるから、ほんとに大変なんだろうね。

「そういえば、ここ最近異様な雰囲気を感じるんだが、お前は感じないか?」
ササッと紙に文字を書きながら、私にそう問いかける。

「そう言われましても……疲れが前より取れなくなったとか?」
「俺の勘違いならいいんだけどな。」
私の言葉を無視し、そう締めくくった。

 今話した意味あった?
 聞いた上で無視したんだったら、それはそれで悪質だよ?

 そう脳内で文句を言うと、手紙をほら、と渡される。

「気をつけろよ。」
「なにによ。」
そう言ってギルドを出た。

 商業ギルドに行ったら、今度はまた冒険者ギルドに行かされるっていうたらい回しだけはやめてほしいけど、マリンさんとは知り合いだし、なんとかしてもらおう。

「是非、引き受けましょう。」
「え、即答?」
またまた出オチだ。

「竹林の村の件で、いろいろな竹がもう市場で出回っているんですよ。特に、タケノコというものがとても美味しそうで。」
マリンさんは、楽しそうに儲かったと話していた。

 そんなにだけで儲かるものなのかな?
 まぁうん百うん千の種類のある竹だし、効果もそれぞれ違いも個性もあるからいいのか。

 美味しかったりいい匂いだったり綺麗だったり、頑張れば観光地にもなりそうだ。
 なぜか一部では温泉も湧くし。

「話、ずれてません?」
「あぁ、すみません。今日は忙しいので、今からは別の人を用意します。新人の子ですが、よくしてやってくださいね。」
ではでは~、と言って奥の部屋に戻っていく。

 なんだったんだろう、あの人。私が受付に並んだら、何故か途中からマリンさんが出てきて、マリンさんが相手すると思ったら少し話してどっか行った。

 ほんとに、何したかったんだろう。

「は、初めまして。担当させていただきます、サーじゅでしゅ!」
「サージュさんね。」

「申し訳ありません、噛みました!サーじゅです!」
頭をブンッと音が鳴るくらいの勢いで下げて、訂正?をした。

 あれ、変わってないような……

「また、噛んでません……?」
「本当に申し訳ございません、気をつけてはいるんですが……」
頬を1度バチンッと叩き、よーし、今度こそは…と気合を入れていた。

 ちょっと叩く力強くない?

「私はサーズです。やった、言えた。」
赤い手形が頬につく中、にこやかな笑顔を浮かべて名前を言う。

「大体の事情はギルドマスターから伺っていますので、条件、ならびに賃金や待遇について決めていきますので、希望があったらおっしゃってください。」
仕事モードに入ったのか、一応目がキリッとしている。

 希望ね。働いてくれれば特に何も無いんだけどね。

「花と畑の世話だから、一応毎日来てほしくはあるね。午前の間くらい。花の知識と育てられるのが大前提で、できれば畑とかそっち方面の知識も欲しいって思ってる。」

「そうですか。両方となると難しいですが、片方なら大丈夫そうですね。」
メモを片手に、頷きながら書き込む。

「賃金の平均ってどんくらいですか?私、細かいことよく分からないから。」

「見習いは住み込みで給料はありません。半人前になると銀貨15枚前後、1人前になれば25前後でしょうか。」

「花育てるのに見習いとかあるの……?」
そんな当然の疑問をぶつけると、「結局は20枚から30枚がベストってことです」と言った。

「じゃあまずは28枚で様子見します。あとは働きぶりを見て上乗せします。」

「そうですか。28枚。働きに応じてボーナス有り、っと。」
恐らく掲示用の文章を口に出し、メモにどんどん追加していく。

 熱心なんだね、サーズさん。
 どうでもいいけど、だいぶ昔にそんな感染症があった気がする。

「頼めば朝、昼くらいならご飯は出すのと、どうしても困ってるなら1室貸すぐらいはする。その代わり、ちゃんと働かないと給料減らすって言うのも追加ね。」

「だいぶ緩めにいくんですね。」
「それで働き手がなかったらいやだしね。給料は、最近色々あったから高くても払えるしね。」

「儲からせていただいてます。」
にっこりと笑みを浮かべた。まるでマリンさんのように。

「サーズさん、マリンさんに似てるね。」
「そっ、そんなことありませんって!ギルドマスターはもっと威厳もありますし、私みたいにキョドりませんし……」

「まぁ、あとはよろしくね。」

「はい。ギルドマスターに恥をかかせないよう、ソラさんを逃がさないよう、全力で働かせてもらいましゅ。」
最後の最後に噛み、締まらないなぁと思い、口元が緩む。

「申し訳ありません、申し訳ありません!」
最終的に、私が見えなくなるまでそうやって頭を下げ続けていた。

 うぅ……普通にこれ恥ずかしい。

 ……というか、紹介状の意味は?

———————————————————————

 ソラさんは依頼に集中するために育てるのがめんどくさいので新たに人を雇うことになりました。

 サーズさん、これからも噛みまくるんでしょうね。

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