227 / 681
7章 魔法少女と過去の街
213話 魔法少女は家に呼ぶ
しおりを挟む少し前の話をしよう。
私が買い物をするため、街に繰り出した時のこと。
たまたま私の……もとい、テレスさんのお店に寄ったんだけど、その時にネルと会った。
「ソラさん……ですよね?お久しぶりです!」
と、嬉しそうに私のところへ寄ってくる。
「久しぶり、ネル。やっぱりオーラが違うね。流石は領主の娘。」
「そういうのはやめてくださいー。」
私のお腹に、柔らかいグーパンチがやってくる。パンチと言っても、楽しそうな感じでやってるのでよしとする。
ネルってこんな性格だっけ。まぁいいや。
こういうノリの人、私の近くにいないからいいね。何回も言うけど、ネルならこの街を任せてもいいと思う。接しやすいし、人のこと考えてくれる。完璧だ。
店の中で話そうと言って、ネルを連れて店に入る。ネルはアイスを1つ頼んだ。
「週に1度の楽しみです」といって、スプーンで掬って美味しそうに頬に手を添える。
「そういえばソラさん。冒険者ギルドの裏に作ったと言っていた家に、綺麗なお花が咲いていたのですが、何かあったのですか?」
私に向かって聞いているのに、顔はアイスに向いている。
「見た目が地味だったから、何か追加したいなーって。あ、そうだ。」
「どうしました?」
「そこまで大きな花は無いけど、ロアと一緒に花、見にこない?それで花を見ながら飲み物飲んだり、サンドイッチ食べたり。」
いつの間にか私の顔を見ているネルは、少し悩んだ末にゆっくり喋り出す。
桜の1つでもあったらいいのにね。
「野外での食事は……1度お父様にお話を付けないといけません。今日、聞いてみることにします。」
「そう?じゃあ待ってるよ。」
こうして、花見の可能性が少し浮上してきた。
そして話は現在に戻る。
こほん。そろそろ本題に入ろう。
それからネルは「許可をいただきました」と喜びながら言った。
人によってははしたないと言われるかもしれないけど、動きの端々には上品さが見える。
この、なんとなく近づきやすさと近づきにくさを兼ね備えた凄さは、話してみないと分からないよね。
そして、本日が花見の日。
「ロアってネルと会うのっていつぶり?」
「少し前ですね。お花を見にきたみたいで、その時に会いました。」
私が作った野外タイプの擬似冷房の近くで、談笑をする。
結構最近会ったんだ。
ネルってまぁまぁ自由だよね。アニメとかで城から出してもらえない世間知らずのお嬢様設定あるけど、そんな感じだと思ってた。
本で恋を知り、恋を求めたお嬢様。
言葉で聞いたことと目で見たことが全然違って外の世界に出てみたくなったお嬢様。
さすがにこれは誇張しすぎ?
これなんの話だっけ。
「あ、ネルだ。おーい!」
丘をせっせと登るネルの姿が目に映る。
「ソラ、さん。来ましたよ……」
「うん、いらっしゃい。っていうか、お付きの人とかに送ってもらえばよかったんじゃない?」
薄く汗をかいているネルにそう言葉をかける。
「友人と遊ぶのに、わざわざ家を出す必要はありません。お父様も、信用できる相手だと分かっているので許可も出しているんです。」
私からハンカチを借りると、そう言いながら額を拭う。
「こっち来て。外暑かったでしょ。」
冷房のところまで案内する。
ただでさえ暑いのに、外で運動したらとんでもなく疲れる。
ネルには一杯奢ってあげよう。
ジュースを。
「はぁ~、生き返りますね……」
扇風機の前でアーー、ってするみたいにして声を出していた。
冷房の作り方は簡単。
奥に風属性の核石、手前に氷属性の核石をセットするだけ。
ちなみに、属性付きの核石は結構な値が張るから買う際は注意してね。
「気になっていたんですが、その子は誰でしょうか?」
「……ツララ。」
「ツララさん?ちゃん?ですか。」
「奴隷だけど奴隷じゃないから、友達みたいに接してくれたらいいよ。」
私が補足説明を入れると、「了解しました」と言ってジュースを飲み始める。
レンの実ジュースは酸っぱいけど、さっぱりしてて夏にちょうどいい。みんなも夏になったら、レンの実のジュースを飲もう。
「私はフェルネール・ブリスレイ。ロアとソラさんのお友達です。」
「領主の娘ってのも追加で。」
「酷いですよ、ソラさん。これでも私、権力はできるだけ使わないようにしているのですよ。」
両手を腰に持ってきて、胸を張っている。
「じゃあそろそろ花でも見に行く?」
「そうしましょう。私、ここに来るまでの間、極力花は見なかったのです!」
元気に立ち上がり、ロアと共に日陰から出る。
暑くはないけど日差しがキツイ……
新しい魔法でも創る?
SPを100使って、アイスシールド。
これがあれば、日差し対策は完璧だ。
「お、いい感じなんじゃない?」
頭上に円形の氷の盾が現れ、見事に日差しをカットしてくれる。
これ、みんなのところにもやれるかな?
魔導法で魔力をマークし、その魔力の頭上を守るよう設定し、3つアイスシールドを出す。
1回強度確認してみよう。
「ファイボルト。」
巨炎が盾を包み、ボロボロとかけさせていく。
さすがにこれはダメか…………いや?この盾、溶けてはない。
なら炎だったら?
「ファイア。」
ボルトを消滅させ、炎だけで攻撃を試す。炎は、盾を包むが溶かす気配は一向にない。
「完全炎体制完備って、なかなかの高性能?」
ステッキで軽く殴ると、見事に割れたのはまた別の話。
「ソラお姉ちゃん、これなんですか?」
「暑いと思って、一応やってみたんだけど。」
「主、ひんやりする!」
「ソラさんってこんな魔法も使えたんですね!お父様にご報告しなければ……」
「しなくていい!」
互いに面白おかしく話をし、お花見が始まる。ネルに花の名前やら値段やら、色々質問攻めにされたり、段差に詰まったたりした。
なんか遠足行った時も転けてなかった?とも思った。
まぁ、なんやかんや楽しい1日だった。
花見のシーンはやらないのって?それは私の記憶にだけあればいいの。
———————————————————————
一向に減らないSPを相手に、現在格闘中です。
SPの必要性がこれから薄くなる気がします。SP、増やしすぎましたね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
109
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる