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7章 魔法少女と過去の街

209話 魔法少女は情報を吐かせる

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「それで、なんで暗殺者グループなんか作ったの?」
「本題はどこへ?」
呆れ返った恵理が、そんな声を上げた。

「ままっ、これも一応本題の1つなんだから。」
そう言って話を続けた。

 っていうか、私的に1番気になる内容だったりするんだよね。
 戦って直接感じた思いと、過去の話。それを鑑みると、恵理がそんなことする理由は無い。

 転生後の話は教えてくれなかったから、ここで聞くのが1番ってことだ。

「………帰る方法を、探してたの。」
「日本にってこと?」
分かりきってはいるけど、一応聞いておく。

「うん。これ、見て。」
首にかかった楕円のペンダントに視線を落とす。

 ペンダント……?これになにかあるのかな。

「ちょっとの間、手錠が解けたらいいのに……」
はぁっとため息を吐き、口頭で説明しようと口を開いた。

 私の魔法も、そこまで便利なものはない。
 そういう便利な魔法欲しいなぁ、普通に。

「このペンダント、家族の写真が入ってるの。」
「日本の物?」
「もちろんね。死ぬ寸前に、握ってたみたい。」
そう言って、懐かしそうに、そして苦しそうな表情を浮かべた。

「あなたは何かないの?私の場合、服は売り払ったからこれ以外無いけど。」
「……私?ゼロだよ。強いて言うなら、朝ご飯に食べた食パンが胃の中にあった。」

「それ、持ってきたと言うよりただの消化じゃ……?」
複雑そうに顔を歪めていた。

「私、転生した瞬間こんな服装しててね。なーんにもない。高校の制服も、教科書も、なんにもね。」
ちぎれ掛けのフードをこの際いっそちぎり、魔法で燃やす。その後、コートを脱いで魔法少女服を見せる。

 流石に、このくらい打ち明けないとね。信頼を勝ち取るために、このくらいね。

「何そのふざけた格好。」
「……‥ちょっと殴っていい?」
そう言う冗談は置いといて、椅子に座って息を整える。ちゃんとコートは着たよ。

「細かいことは置いといて。今度こそ本題入ろう。」
「はいはい。そもそも、元から喋るつもりだった。別に世界征服とかを企んでたわけでもないし。」
そう言って、もし手錠が無かったら両手を頭上に挙げてそうなポーズをとる。

 というか、いつの間にこんな話になったんだっけ?あ、暗殺者やってる理由か。

「こほん。じゃあ、知ってる限りの情報を吐いてもらうよ。」
「ちょっと待って。1つ認識してて欲しいことがある。私は主犯じゃない。許可を出しただけ。」

「分かった。そこも考慮するよ。」
「ありがとう」と一言言い、情報を語り始めた。

「私の暗殺チームの暗殺者には、特に固有名はない。だから抽象的になるけど、1人で逃げたあの黒服の男、あいつが主犯。あいつは『この国、ひいてはこの街の利益になる』といって、『その全てを任せと欲しい』と言った。私も黒服は信用してたし、実力もあった。実行され、驚きはしたけど理由があると思ってた。」
「待って!主である恵理が、把握してないのはおかしくない?」

「そこは、私も悪いと思ってる。軽率な判断だった。」
唇を噛み締め、悔しそうに言った。

 いくら頭がキレても、所詮は子供の浅知恵ってことね。いや、私も子供なんだけどさ。

 本物の化け物は潜み従い、機会を窺う。

「でも、次第にことが大きくなってきた。本当はもう目的を達成させている黒服を、私は降格処分だけで済ませようとしていた。」

「この話で、黒服ってやつが十分やばい奴だってことが分かった。今度会ったら吹っ飛ばしてくるよ。」
自慢のステッキをちらつかせ、笑ってみせる。

「好きにしたら?」
「そっけなーい。」
不満そうな顔をした恵理にそうとだけ言い、そろそろ帰ろうかと扉へ向かう。

「もう行くの?」
「行って欲しくないの?」

「そういうわけじゃないけど、聞いてみただけ。」 「そうかそうか、もう少しだけい………」
「いいから。」
私はブーブーと文句を言うと、止められる様子がないので仕方なく外に出た。

 恵理、結構な訳ありだったね。あと私の家族の話でドン引きしてたし。
 人の過去を笑うなんて、酷い人だよ。笑われてはないけどさ。

「遅かったな。」
「ごめん。女子トークに花を咲かせてね。」

「犯罪者と意気投合するなんて、常人のそれじゃないな。」
「褒め言葉として受け取っとくよ。」
そう言い、足早にここを去る。

「で、どんな情報だった?」

「今めんどくさいから、今度でいい?」
「いいわけあるか。」
「え、でも時間が……これからギルドに行かないと……」

「駄、目、だ!」
そう強い言われたので、渋々話し始めた。

 全てを話し終わった時、私らしくもなく結構簡潔にまとめられて自信が湧く。

「微妙だな。」
「酷くない!?」
思ったよりの酷評で、項垂れる。そう、orzだ。

「ソラにではない。信用できるのかが微妙なんだ。」

「信用できると思うよ、私は。」
疑心に満ちた表情で考えるフィリオに、スパッとそう言う。

「…………ソラが言うなら、信じてみてもいいかもしれないな。」
深く悩んだ末、そう言って私の横に並んだ。

 あれ?案外簡単に説得できた。

 まぁいっか、と楽観しながら、刑務所を出る。フィリオが、パズール元領主に敬礼を1度し、出ていたのも確認した。

 そんなに偉い人なのかな、パズールさんって。1回見てみたいかも。
 でも、そう言う人に限ってやばい人の可能性もある。

 フィリオの先祖って言ってたし、大丈夫だとは思うけど。

 そんなこんなで今日も午前が終わり、ギルドの予定時間をとっくに過ぎた1時に、私は森の奥でフィリオと2人で歩いていた。

 やましいことはないからね!?

———————————————————————

 結局約束に遅れるソラさんでした。ちなみにですが、ツララはロアに任せています。

 それにしても黒服…‥何か怪しいですね。
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