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7章 魔法少女と過去の街
208話 魔法少女は恵理の元へ
しおりを挟む大掃除が終わり、その翌日。
私は郊外に設置された、街が管理している刑務所へと向かった。
刑務所とは、牢屋とかが並べられたああいうのではなく、もっとこう、ドラマでカツ丼食べてそうなああいう部屋を、面会用の部屋にしたみたいな感じ。
それがたくさんある。
出入口なし。あるのは面会時に壊されないよう、耐魔ガラスが設置されているだけ。
何故そんなところに行ってるのかと言うと、それは恵理さんに会うためっ!キランッ。
……まぁはい。恵理さんのところに行くのは、情報を貰うためだ。
ギルド?そんなものあとあと。
って言うのは嘘で、12時に設定してもらった。
ちなみに今は10時越え。
この刑務所は、ガチガチエリートしか就職できない結構すごい所で、関係者以外は有力な貴族や領主の同伴がなければ入れないらしい。
ははっ。すごいところに来ちゃったね。
「あっ、フィリオ。」
郊外なはずなのにそこだけオーラの違う馬車を発見し、フィリオと気づく。
こういうところに領主がいるとか、なんか意外というか合わないと言うか、ね。
「随分と遅かったな、ソラ。」
「ちょっと予定が重なってね。」
フッと一息吐き、フィリオの隣まで歩く。
「そろそろ行くぞ。あの暗殺者も、ソラ以外と話をする気は無いそうだ。」
「そうだろうね。あ、盗聴とかはなしだからね。」
そう警告を1つ入れて、一緒に強固な入口に入っていく。
「そういえばずっと気になってたんだけど。」
「なんだ?」
「口調、領主のそれとは思えないけど。そこのところはどうなの?」
思ってることを言ってみる。
「……はぁ。この口調を他貴族に使っていると思っているのか?仕事は仕事だ。」
そう言い、また口を閉じる。
それ、私のは仕事じゃないってこと?
そう思ったけど、口を噤んだ。
人生で入ることのない場所に入れる私って、実はすごい?
謙遜を無しにすると、実際すごいよね。
刑務所の形は、X型になっている。真ん中は丸型で、少し広めに作られている。
で、残りのX部分が部屋になっている。
今は、その丸のところにいる。
そこには、なんか校長の銅像的なのが中央にあって、少し驚く。
「フィリオ、なにこれ。」
銅像を指差し、首を傾げてみる。
「あぁ。初代パズール領主だ。名はパズール・ブリスレイ。俺の先祖でもあるな。」
「ほへー。」
「伝承では、とても優しく、人情にも厚い善人だったそうだ。」
名を継ぐものとして誇らしい、そう自信がありそうに言い放った。
家名に誇りを持つのもいいけど、早く案内してほしい。
「あぁ、案内だったな。こっちだ。」
そう言われ、右斜め奥に向かって歩き始めた。少しの間、無機質な石造りの道を音を鳴らしながら歩く。
どこまで歩くの、これ。流石に長くない?
そんな風に思っていると、1番奥の部屋にたどり着く。
ようやく着いた?
「ここだ。面会時間は………ソラなら無制限でいいな。」
「それでいいの……」
警備のザルさに嘆息を吐きながら、ガッチガチの扉のドアノブに、手をかける。
5日ぶりのはずなのに、めっちゃ久しぶりな感じがするのはなんでだろうね。
フィリオとの約束で、ここから先の話は盗聴されてない。バリバリ日本語OKということだ。
まぁ自動翻訳だから無理だけど。
こっちは日本語喋れても、向こうは喋れないんだから。
ギシギシと音の鳴る扉の先には、腕のみを拘束された女性がいた。
「久しぶり。」
「……久しぶり。」
俯きながら、恵理さんはそう返す。
「まぁそう身構えないで。ちょっと雑談でもしようか?」
そういいながら、ガラス越しに対面する。
ちょっと窓に触れてみると、確かに硬い。衝撃、魔力、熱、いろんなのに強そう。
「なに?」
ジッと見つめていると、そう言われてしまった。
「なんでもないなんでもない。」
そう返しておく。
少し警戒心が強そうになってる以外、特に変化はないかな。
なに?拷問でもされた?陵辱?
……それとも?
「ちなみに盗聴とかは一切ないからね。領主との約束だから。」
一応、保険程度に何気なく伝えておく。
「ほんと?ならよかった。」
すると、急に警戒モードが切り替えられ、ぐったりと椅子にもたれかかった。
え?何この急な変わりよう。え?
この人、女優向いてるんじゃない?
「空以外の相手には、私は《女王》だから、ボロを出すにはいかないの。」
疲れを滲ませたため息を吐き、そのまま、それで、何の話?と聞いてきた。
「まぁまぁ、まずは雑談しようよ。日本学生の女子トーク。」
「私、成人だけど?」
「そういえば、いつからこの世界に?」
「5年前くらい……」
「中学生っ!?」
思わず大声が出る。
暗殺稼業立ち上げる中学生がどこにいるの!ここにいるよ!なんでだよ!
また脳内が荒れ始める。
「で、空は?」
「数ヶ月前。高2だよ。」
「高校ね。青春は結局訪れなかった。いいなぁ、高校。」
空なんてどこにもないけど、遠い空を見上げるように呟いた。
「そんないいものじゃないよ。学校は片道1時間半、60分くらいの長い授業を5回受けて、また1時間半で帰る。」
「そう聞くとめんどくさそうね。」
夢を壊され、少し目線を落とす。
「どうだった?」
「なにが?」
「家族だよ。」
「好きだった。お父さんも、お母さんも、妹も。みんなで笑って、友達にも恵まれた。」
「良かったね。」
家族のことを思い出し、微笑む恵理さんに、そう一言だけ送る。
「じゃあ、空はどうなの?」
「ちょっと、ね?まぁ始めての女性転生者だし、教えちゃおっかな。」
そう言って、チャールさんにしか教えなかった私の過去を打ち明ける。
今回は、濁しも無し。もちろん盛りも一切なし。ドロドロを完全再現してあげる。
おしどり夫婦のことを一通り話し、私の心境や状態を話した。
父は不倫、母は堕落、離婚後虐待を受け、そのとき実は、母が酒に溺れ、自殺。学校にも迷惑をかけ、その学校ではいじめられ、親クラスメイト含め、今まで褒められた瑠璃色の髪は悪魔と呼ばれる。
壮絶な一生を語った。
「……聞くんじゃなかった。演技がリアルすぎる……女優目指したら?」
「それ、さっき私が恵理さんに思ったことだけど。」
「ねぇ空。さんとかいらないから。」
項垂れる恵理さんが、キッパリと言った。そこから沈黙が続き、少し経って恵理が口を開く。
「その髪、地毛なんだ。」
「まぁね。」
そんな話を30分くらい話していると、そろそろフィリオにも悪いと思ってきたので、本題に入ることにする。
「で、本題のなんだけど、いい?」
「もちろん。」
いたずらっ子のような笑みを貼り、話し合いが始まった。
———————————————————————
ソラさんの過去エピソードを知る人が増えました。あらゆる不幸のハッピーセットですね。(矛盾)
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