魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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7章 魔法少女と過去の街

閑話 龍神

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 髭を蓄え、毅然な表情で空を飛ぶ老人が1柱、空にいた。よく見ればまだ若さも感じられるが、頭は完全な白髪で、年齢はなんとも言えない。

 彼の名は龍神ルー。定期集会が終了し、今まさに帰宅途中である。

 龍神は空を飛び、あちこち飛んでいけるため、一定の住処を作らないと言われているが、実はそんなことはない。

 神聖な高い山に住処を構え……というわけではなく、異世界だけあって空中要塞のような、天空の島に住んでいた。

 そう、ラ○ュタはあったのだ。

 そんなことはどうでもいいとして、彼はあの会議で危惧している事がひとつあった。
 それは、龍および竜の絶滅。

 龍というものは数が少なく、竜というものも滅多にみられるものではない。
 そのため、絶対的な強者として君臨し、猛威を奮っている。

 だが、その一方で1人でも格上がいたとしたらどうだろうか。
 数が少ない龍にとって、1匹でも欠けたら大幅な損失となる。

 その龍が2匹も、ほとんど同時にやられてしまっている。
 しかも、能力が無くなった状態で。(片方は無理矢理奪い取ったもので、もう片方が譲渡したものということを、龍神は知らない)

 そのため、ある禁忌を起こそうとしていた。

 禁忌の名を———という。

 このままでは龍が滅んでしまう。ならば、危険な存在を消せばいい。
 龍神は自身の住処に戻り、地面に足をついて一息つく。

「…………この世界を、変えねば………」
ボソッと一言だけ漏らし、風化し崩れ、自然の一部と化した神殿に足を運んだ。

 神の住む場所には、必ず神殿が必要だ。その神を讃えるため、崇めるために作られ、いつしか壊れた時、神は死ぬ。
 そして新たな神が現れる。

 が、今のところ死んだものは現れていない。

 1人でも覚えていれば、神殿が本当の意味で壊れることは無い。

「……来れ、龍陣よ。」
龍の得意とする脈流法により、印の刻まれた異次元の門を作り出す。やがてそれは数を増やしていき、6つになっていた。6つの門は龍神を囲み、それぞれが反発するようにバチバチと光を散らす。

「………この世界は、龍の世界は、崩させはしない。」
この世の脈流全てに繋がり、力が暴発する。

「…………む……」
力が抑えきれず、思わず声が漏れ出る。

 いくら神とはいえ、世界の力そのものである脈流に触れることは難しい。

「少し、本気を出そう。」
辺りがブワッと風のようなものが広がり、魔力の圧で空間が軋む。

 龍神を囲んだ6つの門が転移し、世界を覆った。

 でも、それは誰にも見えない。強大すぎる魔力のせいで、なぜか逆に視認することが不可能になってしまっている。

「……あと数日、そうすれば……世界は変わる。」
小さく呟き、踵を返した。

 これは人神も霊神も、魔神ですら知らない。
 龍神の独断行動。

 龍を救いたいだけの、龍神の親心のようなものかもしれない。

 そして龍神は帰っていく。自分の住処へと。

————————————

 一方他の神たちはというと、いつも通りの生活に戻っていた。

 魔神はダサいTシャツを身につけて、城でゲームをするという、神とは思えない生活をし、霊神は自身の村でのほほんと暮らし、人神は新たな拠点となる地を見つけるため、旅に出ていた。

 次に目指すのは別大陸。魔力が薄い海を遠目から見つけ、そこを目指していた。

 これは魔法少女が暗殺者と戦っている時のことである。

 龍神が起こした禁忌に気づくわけでもなく、ただ拠点を探し歩く。
 歩くと言っても、遥か上空をだが。

「面倒くさい。魔力が滲み出る設定とか、今時はやらないって。そろそろ余も、そっち方面の魔力操作にも慣れないと……」
と、自身の花園と神殿で収納魔法の限界を感じながら呟く。

 1000年に1度とはいえ、神なら何度も何度もやる羽目になる。
 魔神は楽しくやっているし、龍神はその必要がない。霊神は自分の好きに動いている。

 監視の時だって、美人店員をやりたいとゴネ始め、魔法少女の通うという怪しげな何でも屋のような店に派遣させることになった。
 自分が楽しければオーケーの考えの持ち主だ。

「はぁ………面倒だ。」
今日も人神は、1人寂しく海に向かって歩き続ける。

————————————

 数日が経ち、魔法少女が暗殺者の拠点に乗り込んだ頃、龍神の計画は完璧に練られていた。

 あとはきっかけさえあれば、今すぐにでも世界を変えられる。

 そのきっかけとは、理に触れるような大規模な魔法、および魔導。
 そして、その状態で楔を打つ必要がある。

 この禁忌を使えば、多くの者が死に、生きるべき人間が消え、種の存在すら無かったことになりかねない。
 生きる者が死に、死ぬ者が生きるかもしれない。

 そんな大きな変化を起こさないため、世界の運命に抗えるような、意志や魔力が強力な誰かを楔としてこの世界に打ちつけ、大幅な改変を防ぐ必要がある。

 前者はもう達成された。後は楔を作るだけ。

 世界が変化するのは、もう目と鼻の先。
 龍神の名の下に、今禁忌が犯されようとしている。

 その禁忌の名は時間遡行。

———————————————————————

 はい、すいません。また閑話です。はい、申し訳ないです。はい。
 早く本編進めろって話ですよね、はい。次回からは本編です。はい。

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