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6章 魔法少女と奴隷商の国

閑話 陽動組

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 ソラとの合流後、彼ら4人は陽動組としてソラとは違う行動を進めていた。
 その行動というのはソラの発案だが。

「ソラは今日の明朝、暗殺者の拠点に乗り込むそうよ。」
「それはあいつからもう聞いた。具体案を出してくれ、レイティー。」
悪態のような言葉を吐き、唯一の女性冒険者の方を見つめた。

 彼はウェント。ソラと共にこの国へ調査に来た冒険者の1人である。

 その相手である女性はレイティー。同じく調査に来た冒険者であり、彼女は魔導具士だ。美しい外見とは裏腹に、少し荒い口調の女性である。

 残りの2人はライとトイン。幼い見た目の少年と口数の少ない男の2人組。よく連んでいるという。

 ライの方は、エルフと人間のハーフであり、見た目に反して20を超えている。
 トインは普通の人間であり、冒険者仲間として2人の仲は良さそうに見える。

「ソラの言っていた通りでしょう。裏で暴れる。それだけじゃない。」
「うむ。腕の見せ所だ。」
「薬の調合、頑張りましたよ。」
3人は意気揚々に、そう語る。

「呑気だよなぁ?あのソラがやられてんだぞ?そんな簡単にいくと思ってるのか?」

「アンタ、何言ってるの?別にワタシたちは勝つ必要なんて無いのよ?注意を引ければ、それで成功。」
「……それはそうだな。」
バツが悪そうに呟く。

 その後、ソラに伝えられた場所に集まると、少し離れた裏手に潜入する。
 ツララは1歩下がらせ、人が消えたらソラに言われた通り動かせる。1人だと危険が多いことと、レイティーの母性本能でツララの行動が決まった。

「それでは、やりますか?」
いくつもの薬品入りの瓶を指にはめ、感触を確かめるように振る。

「えぇ。魔導具の用意はできてるわ。」
いつもの道具、八卦路を手に持つ。少しサイクがされているように見える。

 他の面々も槌鎌や大剣を構え、技を撃つ準備をしている。

 これは閑話だが、この世界で優秀とされるのは魔導具の使い方に長けている人物だ。
 そのため、大抵の武器や防具には核石が埋め込まれ、魔導具として使われている。

 もちろん、普通の金属製のものもあるが。

 人間が空力を無くし、弱いながらも魔法を手にし、魔力の操作を手に入れた。そうして作られた魔導具があるおかげで、弱い人間は魔物と対峙できる。

 レイティーのような専用職は都の宮殿など、要所や要人の護衛に重宝されることが多い。
 つまるところ、レイティーはこの中で1番有能ということだ。

 ちなみに、トインの大剣やウェントの槌鎌は魔導具の1種である。

 冒険者の基本は、基礎体力を作り、弱い魔物を剣1本で倒せるように訓練し、技術を磨き、Cランクを超えたら魔導具を手にし、職を変えるというものであり、2人もその定石に沿って動いていた。

 4人の準備は完了し、レイティーは腕を前に伸ばす。
 よく見ると、いつもとは違って各角にお札のようなものが貼ってあった。

「空よ、我が望みを叶え、力を与えたまえ。
 地よ、我が願いに応え、力を分けたまえ。
 天よ、我が思いを力に変え、眼前の敵を討ち滅ぼさん!放て!邪なる思いをかき消し、善なる心を守る息吹よ!『ポータルレーザー』!」
強い力により、お札がすべて燃え尽きるようにして消える。八卦路はガタガタと震え、今にも壊れそうになっている。

 空、地、天。全ての理に触れ、力の一部を貰う。それがこの1級最上位魔導具に数えられる魔導具の1つ、札も含めた魔導具である。

 1つあれば国を消し飛ばすこともできる代わり、使用者の魔力の根源に触れるため、危険がある。

 魔力が無くなったり、体の機能一部損傷したりと、多くの副作用の可能性がある。

 光が四方八方に分裂し、そこで球体を成していく。その球体が、更に線となり、新たな球体を作る。
 その姿は、まるで蜘蛛の巣のよう。

 半径2メートル辺りが全て埋まり、いつしか八卦路のは光の塊に変化していた。

「いくわよ、ワタシの最大奥義。」
この世界の魔法の欠点、構築時間の長さ故の効率の悪さ。ここまでの魔導(魔導具から出る魔法のこと)となると、魔導具ですらその影響を受ける。

 繋がった球体全てがレイディーの手元に集まり、そして魔導は放たれた。
 高速の光の柱と形容できるような見た目の魔導が、一直線に地面に突き刺さり、轟音が鳴る。

「用意しなさい。しっかりしないと、死ぬかもしれないわよ。」
怯えの表情を好戦的な笑みで抑え、苦し紛れにそう呟いた。

「ぼくも、本気で行きますよ。」
「接近戦に、注意。」
「トインも、気をつけてくださいね。」
小さく言葉を紡ぐ。1人もかけないように、それぞれが配慮する。

 大量の暗殺者が出てくる。この場では誰も知らないが、《軍団蜂》や《特攻蜂》以外の番号付きの部隊が全員出てきていた。
 人数で言えば、《黒蜂》の半数を超える。

「爆裂薬!霧薬!」
赤やオレンジの合わさったマグマのような液体を投擲し、被せるように雲のようなものが入った瓶も投擲する。

「使いたく無いんだけどな。……鎌華!槌投!」

「では、参る。大車輪!」
2人が前に出て、暗殺者達を薙ぎ払っていく。突然のことで分からないのか、いつもの俊敏な動きは無くなっていた。

 それはそうだ。
 突然災害級の光線の後、爆発が起き、そのまま霧で何も見えなくなったところで剣戟……と言うのも馬鹿らしくなるほどに武器が振るわれていく。

 暗殺者は奇襲するのは慣れていても、されるのは慣れていないようだ。

 そんな激戦の後、ソラは拠点への侵入を開始する。

 拠点内はとてつもない緊張感で満たされ、相手の気持ちを揺さぶるために弱い人物も設置されていた。
 ソラが感じたがらんとした雰囲気は、ただの罠。

 これが、《女王》こと恵理との戦いの前の話である。

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 本当に閑話が多いですね。
 書くことが少ないからですね。本編も後書きも。
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