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6章 魔法少女と奴隷商の国
198話 魔法少女と《軍団蜂》
しおりを挟む地龍の魔法やスキルをフル発動させ、何とか一撃目の奇襲を防ぎきった。
「何この数の暴力……」
冷や汗と脂汗の混ざったようなものが、だらりと垂れる。
地龍スキルの強固な鱗を纏った魔力壁を付けた、土槍。太めにして、5本下から生やす。
そのせいで、女王の間がぐっちゃぐちゃになってる。いきなり穴だらけ。
可哀想にね。
《女王》は苦い表情をしていた。
「岩槍!」
土槍を変化させ、30センチ代の尖った岩を土槍から放ちまくる。キュインッ、キュインッ、と、とてつもない速度だ。
さっすが地龍。やばすぎでしょ。
私のステータスと合わさって、凄いことになってて笑えない。
私は苦笑いしつつ、そう思う。
あ、笑ってた。てへっ。
「近づけません!」
「死傷者多数!」
「放っておけ!今は目の前のことだ!」
黒マスクをした指令官のようなくノ一が、まるでボールペンのちっこいバネみたいに、予測不能な跳躍をしながらそう言い放つ。
うわぁ、仲間見捨てるなんてひどーい。それをやったのは私だけど。
ま、流石のプロも私の奇天烈攻撃には意表を突かれるってことですわ。
それでも10人くらいしか倒れてないし……まるで弾幕ゲーム風に避けてく。
「攻撃方法変えなきゃな」と、小声で呟く。
立て篭もり作戦は続行し、岩槍を止める。
今だ、と言わんばかりに50人くらいの暗殺者が私の頭上目がけて飛んでくる。
残りは、隙間を狙ってる。
まずは多勢を葬ろう。
そうして構えたのは相棒のミョルスカイ。
「軌道修正、完了。出力調整、100%。……魔弾装填、発射準備オーケー。」
ブツブツと、詠唱するように言葉を発する。一文字一文字に力を込め、言葉を紡ぐ。
「トール、射出。発射まで、3、2、1……」
バチバチと雷が荒れ狂う。定期的に点検してるはずのミョルスカイが、今にも壊れそうに見えた。
「発射!」
刹那。ドゴォォーーーンッ!!と、空気を切り裂くように轟音がなる。その次に聞こえてくるのは、バチバチバチッ!という電撃音。そして、とてつもないGと風。
いや、Gっていうのは冷蔵庫裏とかにいる、1匹見たら~的な謳い文句の虫のことじゃないよ?
重力だから。そこんとこ、よろしく。
周りをよく見ると、地龍の魔力壁をも突破して土槍はボッコボコに崩れていた。
「————————————!!」
誰かが何か叫んでいたのを見たけど、なんと言ってるか全く分からない。
音と光のせいで何が起きてるか全く分からない……
これが過ぎるまで五感がほとんど機能しない。
「なんなんですか?あれは!チートじゃないですか。」
ミョルスカイをステッキに収納していると、《女王》がそんな恨み言のような物を吐いていた。
あなたに言われたくありませんよーだ。チートがチートって言うんじゃありませーん。
「ふぅ。こんなもんかな。……魔力消費が凄い。3分の1以上持ってかれた……」
魔力水を片手に、息を吐いた。
「48名ピッタリ死亡。各自、持ち場で備えろ!」
指令官みたいな人が状況判断後、指示をする。その姿は、焦りが滲んでるように見えた。
私もちょっとやりすぎたかな?
一掃しすぎた感は否めない。
ま、まぁ?これは仕方ないことですし?
向こうから仕掛けてきたんだから、仕方ないでしょ。
ルルー○ュだって言ってたよね。
撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ。ってね。
ってことは、私はレールガンを撃たれる覚悟があるってことなの……か?
いや、撃たれたくない。
「下がれ!盾は崩れた。あれは何発も撃てるような物じゃない!」
体制を立て直させる指令官。
流石プロの技は違う。的確だね。
ま、あと何発か撃てるけど。
そんな余裕ぶっこいてたら、残りの暗殺者達がぐるぐると私の周りを走り回った。
撹乱?いや……
違う、そう思った時には、大量の毒刃が投擲されていた。
「はっ?こんなの避けられるわけ………」
急いで跳躍する……と見せかけて、私はぐるっと方向転換してステッキを地面に向けた。
各種地龍魔法×一級建築魔法
一見なんの関連性もないように見えるけど、まぁ見てなって。
地面の一部が隆起する。それがウネウネと動き出し、隙のない家と化す。
土槍じゃ隙間が多いからね。家を作ってみた。
一級建築魔法を使えば、構想があれば一瞬で組み立てしてくれる。
便利なことだ。
「なっ?本当に人間か?」
指令官はそんな酷いことを言ってきた。
「人間だよ!この姿見てよ。人間以外の何者でもないよ!」
「どうでもいい!」
うわひどっ。この人、私嫌いだ。
もういいや。いちいち魔法使うのもめんどくさいし。
暗黒弓ー、万属剣ー!
煙突を出現させ、そこから雨のように大量の魔法を降らせた。
魔力付与してあるから、1個ずつなら動かせるよ。
「私の魔力総量を舐めないでもらいたいっ!」
そんな謎の自慢と共に、大量の矢と剣が放たれていた。
もうこの家もいっか。
そのまま外に出たら危険だし、頭上に私よりひと回り大きい土板作るか。よし、そうしよう。
「上ばっか見てたら、足元すくわれるよ。」
にこやかな笑みでそう言ってやり、すかさず足をかけて躓かせる。
1名様、ごあんなーい。
「ウィンド!」
エアリスリップのスリップ部分をレジストし、風部分だけを発射させる。
こう言うのにも使える魔法分解は神と言っても過言じゃないね。
おっと。また1人やられた。
このままネチネチ戦法続けよう。
片腕が常に塞がってるのは痛いけど。
あれだけ大口叩いたけど、ここまで魔法を使うと魔力もやばい。
魔力水をちまちま飲んで回復させてるけど、1本目はもう終わりそう。
数の暴力には、数で対処しないのがきついね。
「おらおら~!汚物は消毒だー!」
小物感溢れるセリフを叫びながら、ノリノリで魔法を放ち続ける。
案外楽しいね、これ。
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《軍団蜂》は流石に簡単にやられます。
だってポニテとかボブの人レベルの人が集まってるだけですから。
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