206 / 681
6章 魔法少女と奴隷商の国
195話 魔法少女は諦める
しおりを挟むレモネードもどきを片手に、私はエレベーターを見上げる。
「うぅ~む。どうしたものかね。」
ズズズという効果音と共に、そう一言呟く。
これだから嫌なんだよ。こんなエレベーターを作る変人の考えることなんて分からない。
なに?私の方が変人だって?
いい?私が変人なんじゃなくて、神様の趣味がおかしいの。アーユーオーケー?
イエスかはい以外選択肢はないよ。
「似たような話、何回するつもりなんだろう。」
自分でも呆れてくる。
でもなぁ。もうどうしよもないんだよね。
結構ヤバめな状況なのに、呑気にストローに口をつけていると、何かツーーッという甲高い機械音のようなものが響いた。
「えっ、はっ?何?」
慌てて立ち上がり、その拍子でレモネードもどきはこぼれ、グラスは割れた。焦りで少し目を泳がせて辺りを見回す。
赤い紋章が光ってる?
何かが反応してるとか……まさか、ボス?
『あー、あー、テステス。聴こえていますが、侵入者さん?外でもここでも、好き放題やってくださっているそうで。』
次いで、清楚系お嬢様と言った感じの声が聞こえてくる。
はっ?……テステス?やっぱり……いや、そこはどうでもいい。今重要なのは、敵に私のことがバレてるってことだ。
『私は《女王》。知っての通り、《黒蜂》のボスです。以後、お見知り置きを。』
「え?《女王》?《黒蜂》?」
聞きなれない単語に、首を傾げる。
『説明する義理はないですよ。それも、敵に。あなたには、苦しみに溺れて死んでもらいます。絶対に。』
殺意の篭った言葉を言い放たれ、私の耳は痺れる。
何、これ?私がビビって??そんな、はずはない……と思う。
でも、ここからでも実力差を感じる。
「いやいやいや、私は私。神様パワーを使えばなんとかなる。」
そう自らを鼓舞し、エレベーターを睨む。
万能感知で見えないのがなんだ。もうバレてる。コソコソ行く必要はない。
本気の本気、マジのマジだ。
私が負ける義理は……ないといえば嘘になるけど、負けるとは思ってない。
これは調子に乗ってるんじゃなくて、確信。
勝ってみせる、フラグブレイカーとは私のことだ。
自称、というのをボソッと付け足す。
「やっぱり、ゴリ押しが1番だね。」
右手にステッキを握り直し、大きく深呼吸を挟む。魔力が集まり、槍をつくようにしてステッキを突き出す。
「おりゃぁぁぁぁぁっ!!」
思いっきり叫ぶ。その声と一緒に響くのは、ドゴォォーーーッ!という破壊音。
「舐めてもらったら困るよっ!」
大きく穴の空いたエレベーターを通り、更に魔法でドカドカ壊していく。
器物損壊?不法侵入?この世界にそんな法は無い!訳ではないけど関係ない!
フィリオの力でなんとかしてもらおう。
またフィリオの不安の種が増えたのである。
「方向は……分からない。落下死は避けたいから斜めに壊していこうかな。」
そろそろステッキのみはキツイので、物質変化で柔らかくしてから刀に持ち替えて斬っていく。
ひぃー、疲れる。この作業後どのくらいだろう。
目を細めて下を見る。何でできてるかさっぱり分からない。
「まぁいい。進めるんだから進もう。強行突破は最強、はっきり分かる。」
何せ今回は準備万端。レールガン2発分という大量の魔力水をライに調合してもらった。
材料はアボルデルの村の最奥にある地下洞窟。最奥と言っても徒歩で行けるレベル。朝から夕方くらいかかるかも……だけど、まぁ行ける。魔物もいないしね。
そこの奥にあった魔力溜まりの原因の魔力水。核石が膨張して岩から取れることで魔物に変化する。その時魔力の保有量が多いと、ヌチャヌチャ生物が生まれる。
うっ、想像しただけで気持ち悪い。
あのなんとも言えない吐き気を覚える姿を思い出し、口を抑える。
ごほん。話を戻そう。
その魔力水をライに渡し、効果を増やしてもらった。
だから、レールガンは何発か撃てる。
まぁ、使い所は考えないといけないけどね。
「光槍光槍光槍っ!」
適当に流星光槍をぶっ放し、どんどん床を削っていく。
これ、地龍でもギリギリくらいの硬度あるけど、《女王》って人はどれだけ強いの。怖くなってきた……いや、だから考えないようにしないと。
うん、いける。
「混合弾っ!」
最後の1発を放ち終え、轟音と共に床が大きく揺れる。
うおっ、出口……かな?危なっ…!
床にミシミシと亀裂が入り、視界がぐらっと揺れる。それに遅れて、体が落下していることに気づいた。
「ちょ、まっ、落ちるなぁぁー!」
そんな、無駄だと分かりきってることを叫びながら落下する。
床の崩れ落ちる音が鳴る。
「痛た…‥くはない。ステータスはやっぱりありがたい……」
落下した腰をさすりながら立ち上がる。
完全に失敗した。変な風に降りなきゃよかった。
もっとこう、普通に?
なに?アバウトすぎるって?知らないよ。
そんなことを考えながら前を見ると、そこにはたくさんの暗殺者が、ナイフやらなんらやらを構えて立っていた。
陽動作戦、失敗みたいだ。
「もういい!どうとでもなれ!」
そう叫びながら、ステッキを振るった。
————————————
「ふぅ。一体なんなのでしょうね、あの人物は。」
侵入者に一言浴びせたのち、女王の間でため息を吐く女性がいた。
《女王》だ。
「軽々倒す辺り、なかなかの実力者でしょうが……この街では見かけませんし。」
顎に指を添えて考えている。
この少女のことをよく知らない《女王》は、怪奇の目で少女を見ている。
一貫しない行動、よく分からない言動、一挙手一投足に不信感を抱く。
「私が対応する他、ありませんか。」
首から下がった翡翠色のペンダントを握りしめ、隣の部下に指示を出す。
「あの人物に突破手段はないはずです。バレているのだから、無理矢理にでも侵入すると考えられる。連携を取りつつ、降りてきたところで仕留めなさい!」
「了解しました。」
部下の1人が頷き、14番と27番をもう1度配置する。
今度こそ、確実に仕留められるという確信を持ちながら。
———————————————————————
なんか途中グダグダな感じになったような気もするようなしないような感じですが、次回から戦い漬けです。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる