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6章 魔法少女と奴隷商の国
193話 魔法少女は侵入する
しおりを挟む「これ、どうしよう。」
目の前に転がった、4人の死体(多分……?)をステッキでツンツンしながらそう漏らす。
死体ツンツンなんて、死者を冒涜してるんじゃないかって言われるかもだけど、暗殺者だからセーフセーフ。
セーフじゃない?セーフだよ。いいね?
画面の前のみんなに、ミョルスカイを向ける。
「はぁ。ネタは置いてきたはずなのにね。」
自分の脳内に嫌気がさし、ステッキを腰に挿す。
ここからは全く分からない、未開の大地。迷宮みたいなもの。
それが、後から来るはずのツララのためにも、印をつけとかなきゃいけない。
物質変化っと。赤チョークからのバッテンマーク。
「ここにつけても意味なくない?」
どうでもいいことに気がついてしまったので、忘却の彼方へ送ってやる。
やって悪いことなんて、世の中あんまりない。
後悔先に立たず。やっておかないと、後から後悔しても遅いしね。
謎の理論を唱え、暗殺者の拠点という名の『迷宮』に侵入していく。
「まぁいきなり入るのもあれですし、準備運動でも………すいません、行きます。」
どこからか圧のようなものが見えた気がして、身震いをする。
まさか、顔パスないと通れないとか無いよね……警備はザルだけど、ボスの所とかは厳しい……
うーん、その辺も後々考えていかないとなぁ。
前世の知識を振り絞り、うんうんと唸りながら歩いていく。
「何者だ、貴様ァ!?見張りはどうした!」
「あちゃー。バレちゃったか。」
うんうん唸ってたせい?まぁどっちみち気絶させてさよならだけど。
「何者だと聞いている!」
「うるさいなー。それを聞いて答える人間がいると思ってるの?無駄だと思わない?あっ、下っ端だからわかんないかー。」
適当に煽って、隙をついて倒す作戦に移行。ニマニマと笑みを浮かべて、煽り散らす。
こんな所で、レイティーさん直伝煽り術を使うとは思いもしなかったよ。
役に立つんだね、ウェントをからかう以外にも。
「……ッ!?何…、黙れ!」
「図星?ねぇ、もしかして図星?」
「違う!」
「へぇ~、違うんだ。じゃあ、なんでこんな所で警備してるのかな~?雑用だよねぇ?あっ、もしかして、怒ってる?怒っちゃってる?」
ニマニマ顔は継続、身振り手振りも加えて、突く勢いで指を差す。
沸点が低いなぁー。あ、やば。脳内まで煽りモードになってた。
影響つよ……気をつけないと、余計めんどくさくなりそう。
「死ね!」
「ボキャ貧とはこのことだね。」
スルッと攻撃を回避し、無心でステッキを後頭部に向けて振り下ろす。
ナイスシュート!
見事に後頭部にヒットし、ホームラン!無事気絶に成功させました!
全然無心じゃなかった。
「これ、脊椎とか折っちゃって無いよね?」
一瞬不安になり、脈に指を当ててみる。
あ、よかった。生きてる生きてる。
「ちょっと静かにしておかないと、こんな感じで襲って来るかもしれないしね。」
チョークで跡を付けながら慎重に進んでいく。
それにしても……道が分かんない。これ、迷うんじゃないの?
万能感知が使えないのが痛い。
どうしようかと、絶賛迷子になりながら考える。それは遅かったかもしれない。
今のところ、分かれ道が4個ぐらいあった気がする。しかも、ボスとかどこにいるか分からない。
侵入に気づかれてない……と信じたいけど、確定したわけでも無いから、不安が残る。
「あ、そうだ。魔力を循環させよう。」
妙案が浮かぶ。場所の都合上、最低限の声しか出してない。
エアリスリップを、魔法分解で水の部分だけ分解して、魔力を風の流れにそって全方向に流す。
そうすれば、私の魔力が循環して万能感知が使えるようになる。
そもそも、万能感知ができない理由は完治する魔力がないからだ。
ほとんどの物は、魔力が宿ってる。
でも、出入り口でシャットアウトされてる。
「あ、だからレイタースタートの威力が、中からだと低かったのか。」
あの時の謎が解けて、少しスッキリした。
やったね、また1つ賢くなった。
「エアリスリップ。」
小声で呟く。
最近、案外詠唱破棄が高性能なことに気がついたんだよね。
ほら。戦闘中に詠唱したたらその瞬間ドカンだし、こんな中で長々詠唱したたらバレちゃう。
そもそも、詠唱が長いっていうのも魔法が弱いとされる一因だし…‥その節は、大変申し訳ありませんでした。
かつて、微妙なスキルだと思った自分を恥じたい。
魔法分解は、自分に使うにも相手に使うにも便利なのは、今も昔も変わらないことだ。
なんの話だっけ。
あ、そうそう。魔力を循環させるって話か。
「もうそろそろいいかな?」
色々考えてるうちに、少し時間が経っていたので万能感知で確認してみる。
見づらいけど…‥成功!
うっすらとした地図が完成し、ヤッホイと喜ぶ。
「やったね私。やればできる!」
万能感知に視線を傾けけながら、出来るだけ抑えめな声で喜ぶ。
人…‥明らかに少ない。陽動効果が出たか、それとも……考えないようにしよう。
成功して、人が少ない。そう考えよう。
不安な気持ちを、グッと押し固める。
「ちょっと情報欲しいな~。」
少しだけ大きな声で呟いてみる。後ろにいる暗殺者を、油断させるために。
まぁ喋ったことは事実だけど。
気配察知と万能感知の同時使い。地味に大変だけど、そこんところは頑張る。
気配察知にて、ナイフが肉薄するのを感じる。
「見え見えだよ。」
ステッキをくるっと取り出し、トールを出して受け止める。
避けて何かに当たって、警報でも鳴られたら嫌だからね。
え?そんなもの異世界にないって?可能性はあるよ。そもそも、ここのボスの正体、地味にだけど分かった気がする。
「《女王》に手を出す気か?やめておけ。お前は、お世辞にも強いとは見えない。侵入できたのは、事件の混乱に生じてだろう。そもそも、女王の間に行けるのは、この赤の紋章を道の奥の魔導具に翳さなければならない。」
「すごーい。ペラペラと情報喋ってくれるー。」
ここまでバカだと、私までバカになってくる。
え?なんだって?《女王》?赤の紋章?
吐かせる必要すらない。
こいつ、絶対新入りでしょ。
「ありがとね。勝手に情報吐いてくれて。手間が省けたよ。」
「…‥なんだ?」
そう疑問の声が上がった時、神速にて蹴り飛ばした。
相変わらず、「カハッ」という乾いた嗚咽を出す。みんな、どうしてそうも……って、それは私もか。
「はっはっはっは」と1人で笑いながら、隅っこに縛っとく。
動かれたら困るしね。
———————————————————————
側から見たら、ただの不審者なソラさんです。
勝手に侵入してきて、人をバンバン倒して。暗殺者じゃなければ即逮捕ですね。
まだ犯人が暗殺者たちとは限りませんし。(9割黒)
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