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6章 魔法少女と奴隷商の国
191話 魔法少女は相談する
しおりを挟む屋根裏からお届けします、魔法少女です。
ただいま、魔法少女は宿屋の屋根裏(下にはある冒険者4人がいる)にいる。
何故かって?
では、前回のあらすじをしよう。
1人、いるはずもない画面の先のみんなに説明する。
魔法少女、暗殺者に殺されかける。
魔法少女、なんとかなる。
魔法少女、バレないように逃げる。
魔法少女、合流したい。
今ここ。
あらすじじゃないって?知らないよ、あらすじの定義なんて曖昧でしょ?
「今から、ここに潜入したいと思います。」
誰も聞こえない小さな声で、独りごちる。
刀でスパッと四角形の穴を開けた。
話し合いをしてる?気づいてないみたい。
「ソラをどう探すか……ツララちゃんはどう思う?」
「……分からない。」
小さい声、暗い雰囲気。見てられない。
うわ、やばい。入っていいの、これ。
怖い怖い。どうすればいいのかな?いや、どうすればいいのかな?
なんで2回言ったんだろう。
私も知らない。なら誰も知らない。
じゃないよっ!
……覚悟を、決めよう。
ゆっくりと脚をかけ、宙ぶらりんの状態になる。
「やぁ、こんばんわ。」
鉄棒とかで足をかけて反対向きになるアレをやる。そしてキャラを変え、適当な挨拶をしてみる。
「………はぁっ!?」
「うわっ。」
目の前にレイティーさんがいて、「あ、場所ミスった」と思った。
「……詳しいことはツッコミきれないが……おい、なんでそんなところにいるんだ。」
「そうだ。何故、屋根裏から?」
「頭に血が昇りますよ。」
そう言われつつ、くるっと1回転して着地した。
ナイス着地。飛び込み競技でトップ取れるよ。嘘だけど。
「まぁ色々あったの。」
「主ー!」
そう私が堂々と言うと、ツララが半べそ……いや、ガチ泣きしながら大声を上げて抱きついてくる。
「ツララ?ごめんごめん、心配させちゃった?」
「主っ、主ぃ……」
鼻水がべっとり付く感触があるけど、今くらいは許そう。グスッ、グスッと鼻を啜る音がして、この子は手放すまいと誓う。
調教度、今どのくらいなんだろう。
まぁ、今それを確認するのは野暮ってものだね。
「それにしても、あの出血量で生きてるのはおかしくないかしら?」
気を取り直したのか、ツララに抱きしめられる私を見てそう呟いた。
「あぁあれ。ヒール。全部私の血だけど、その瞬間に治して受け止めた。これぞ肉壁。」
「ちょっと何言ってるか分からないわ。」
しれっとスルーされた感は否めないが、今は気分がいいので見逃す。
ツッコミも、今日は一旦休業しよう。
「流石の私も死ぬかと思ったね。」
「逆に死んでないのがおかしいのよ。いや、死んじゃダメだけど。」
「それはいいとして……」
「よくないでしょう!」
あれ?ツッコミ逆転してない?
「なんで私がそんなことなったのかというと……」
そうして、私は今までにあったことを適当に説明した。
東商でなんやかんやあったこととか、さっきまたなんやかんやあったこととか。
なんやかんやしか言ってないけど、実際そうなんだし仕方ない。
「お前、どんな生活してるんだよ。」
「こんな生活。」
「それは見たら分かる。」
適度に漫才を挟みつつ、ボケ役に徹する。
「まぁそんなわけで、私は東商の暗殺者に狙われてるわけですよ。色々あって、居場所も特定したから明日行こうと思ってまして……」
「判断が早すぎるっ!」
説明口調で遊んでたら。盛大なツッコミを入れられた。
いやぁ、判断が早いと言われましても、特に考えることとかないし、と言うか混乱してるいま突撃するのが1番いいと言うか。
「大声出さない。ツララが驚くでしょ。」
特に驚きはしてなさそうだけど、適当に撫でつつウェントを諌める。
「誰のせいだ。」
「……自分の心?」
「……いい加減そのキャラをやめてくれないか?手が出そうだ。」
「アンタの場合、反撃で沈むんじゃないかしら?」
「うるせぇな。お前まで乗っかるな。」
とうとう止めろとのお達しがきたので、仕方なーく元に戻る。
「で、4人には陽動役として動いてほしい。」
「揺動役、ですか?」
小首を傾げるライ。
「そう。流石にあんなの相手にしながら突撃しようものなら、本当に死ぬかもしれない。私と暗殺者って相性が悪いから、適当に気を逸らさせてくれればいい。」
「そうは言ってもな、陽動なんてしたことは無いぞ。」
「そこら辺は、まぁ……ふぁいとー。」
「軽いな、おい。」
「そういうツッコミは無しで。」
ようやく真面目な話になったのに、話を変えられてしまった。
わたしゃ悲しいよ……
目頭を抑え、泣くふりをする。
「ツララは最終兵器。隠れといて、いざという時に隙をついてもらう。」
「うん。」
私の無い胸あたりに頭を当てながら、そう呟く。
能ある鷹は爪を隠す。
脳ある魔法少女は爪(ツララの)を隠す。
いざという時がないように行動するつもりだけど、完璧にいかないのが人生。
壮大に行ってみたけど、まぁ要するに保険だ。
「えっと、陽動?レイティーさんの魔道具でもブッパしとけばいいんじゃない?十分脅威だと思うし、私も似たようなの一緒に裏手から撃っとくから。」
「人手を分散させるってことね。」
「そういうこと。」
「了解した。引き受けよう。」
「そうですね。4人で行けば、ソラさん1人分くらいの実力にはなるんじゃないでしょうか。」
「行けばいいんだろ。」
ウェントだけは渋々といった感じだけだ、全員から承諾を得た。
と、いうことで。私は明日から襲撃作戦を実行したいと思う!
よっ、パチパチパチー。
拍手が足りないよー。それじゃあア○パ○マンは出てこないよ。
ネタはさておき、ガチの対人戦はここの世界で初めてと言って過言じゃない。
だから、気を引き締めていこう。
———————————————————————
困ったら漫才、はっきりわかんだね。
この言葉、人前で使うのは控えましょう。
私は大丈夫です。話す友人はいませんから。
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