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6章 魔法少女と奴隷商の国
187話 魔法少女と話し合い
しおりを挟むツララを静かにさせ、私の右斜め後ろにちょこんと座らせて話し合いを始めた。
「で、いきなりだけど……どう思う?」
「東商だな。どうにもきな臭い。……そもそも、そこの獣人はなんだ?」
「ツララだよ。」
レイティーさんの真面目な雰囲気を切り裂いて、私の声が響く。
「そういうことじゃない。」
「じゃあどういうこと?」
「漫才しに来たわけじゃ無いんだぞ……どこで拾ってきたって言ってんだ。」
呆れたような目で、バカ丸出しのセリフを吐く。
それ、さっき言ったよね?耳、いや頭大丈夫?
「おい、聞こえてるぞ。」
「心の声を聞くなんて……最低!」
「お前が喋っただけだろ!」
漫才はこのくらいにして、私もゆっくりと目を閉じて雰囲気を醸し出す。
「奴隷だよ。質問とかは受け付けない。ただし、この子は人と同じように扱って。何かしたら、命はないと思った方がいいよ。」
レイティーさん含め、全員に威圧をかける。目を広く開き、鋭い眼光を放つ。魔力付与で、重圧もかけておけば、さらにグッド。
これだけやれば、変なことする人もいないでしょう。
「分かっている。これほど敵に回したく無い人物の機嫌を損ねるような真似を、しようはずがない。」
「トインの言う通り、大丈夫です。」
安心の2人の言葉に続いて、残りの2人も「安心しなさい、ソラ。」や「するわけないだろ」という声も聞こえる。
ま、元からこの人達がそんなことするとは思ってない。私の観察眼は、そこまで鈍ってはない。(魔法じゃないほう)
「じゃ、話し合いを続けよう。」
この空気を潰すほど、私も落ちぶれてはいないので、キリッとした面持ちで言葉を繋ぐ。
「え、えぇ。そうね。」
「はいっ、ぼくも東商が怪しいと感じます。怪しい視線を感じました。」
「そうだな。やはり、東商を危険視した方がよいだろう。」
「私もそう思う。」
満場一致(今回は私も入ってる)で、東商がやばいということで決まった。
「じゃあ、明日からの予定は決まりね。東商を調べ上げましょう。一言半句も見逃してはだめよ!」
レイティーさんは、大声で机をダンっと叩く。
「っ!?」
ツララがビクッと耳を動かした。突然の音には弱いのかもしれない。
「大丈夫、怖くないから。」
「……うん。」
まだ淀みなく応答はできてないけど、長い目で見ていこう。
話し合いも一旦の区切りもついた。
つまらない話し合いの中待たせちゃったし、ツララに肉焼でも奢ってあげないとね。
「相手の一挙手一投足にも気を配りなさい。明日から、休みはないと思いなさい!」
決めポーズをとり、最後に綺麗に締め括られたと思いきや、乱入者が現れた。
「レイティーさんがリーダーのように振る舞うのは、ぼくはおかしいと思います!」
ライだ。
「そうだ。ここにいる全員、立場は同じはずだろ?」
「そういう役回りがいた方がいいでしょう?アンタには向かないわ。」
「ならぼくがやりますよ。」
「否。代ろう。」
「じゃあ私が。」
「「「「無理」」」」
「あ、はい。」
ダメでもやめろでもなく、無理。はい、そうですか。私は何もできないただの置き魔法少女というわけですか、そうですか。
ダ○ョウ倶楽部的なノリはダメでしたか。そうですか。
「……元気。」
ツララが小さく呟き、背中をポンと叩いてくれる。チラッとその顔を拝むと、少し顔を赤くした天使の姿がそこにはあった。
流石獣人、神ががかってる。いや、獣がかってる。全然上手くない。
「ありがとう。」
そう一言だけ告げて、会話に戻る。
「こんな話はどうでもいいわ。要するに、明日から忙しいってことよ。」
「そんなこと分かってる。話も終わったんだったら、そろそろお暇させてもらう。」
「別にいいわ。アンタはいなくても変わらないし。」
「酷いとは思わないのか?」
「えぇ、微塵も。」
ニヤリと笑みを浮かべながら、ウェントに言い放つ。
というか、もうボケていい時間なの?
「ぼくは今日1日休んでおきますね。疲れも取れてませんし。」
そうして、各々が自由に行動し始めた。
よし、私も帰ろうかな。帰ると言っても、宿屋ここだけど。
「ツララ、ちょっと出かけよう。」
「……うん。」
私もツララを引き連れ、一旦この宿屋から退出した。レイティーさんとトインは置いてきた。
ウェントってどこか行く場所とかあったのかな?出ていったけど。
……ま、どうでもいいか。
「………どこ行く?」
「その辺。適当に昼ごはんも買っていくけど、なにか食べたいのある?」
「肉っ!」
出会ってから1番大きい声を聞いたような気がする。
食べ物で釣るのが1番ですか。やっぱり、そうですよね。
よく分からない魔法少女じゃなくて、美味しいことが分かりきってる肉の方がいいよね。
「じゃあ買ってあげる。」
「うん。」
「あ、その服ボロボロだし、新しいの買うよ。好きなの選んでいいからね。」
「……いいの?」
「もちろん。」
行き先も決まり、私達も行動を開始する。
明日から忙しくなるなぁ。
また殺されかけたりしないよね?
この前1人逃したし、絶対やばいってこれ。
一抹の不安を抱え、最後の自由行動を開始した。
———————————————————————
ステータス
名前 ツララ
年齢 15歳
種族 氷狼族
レベル 28
攻撃620 防御390 素早さ500
魔法力320 魔力350
装備 魔力増強の指輪 付与の髪留め
魔法 氷結 氷華 雪礫 氷爪 氷瀑 氷槍
スキル スピード補正 物理上昇
魔法少女の庇護 超人体力 忍耐 獣圧
調教度 レベル3
そろそろのんびり編は終了です。多分、きっと。
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