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6章 魔法少女と奴隷商の国
184話 魔法少女は奴隷を買う
しおりを挟むニコニコとしているお姉さん。私が思ってたのとは全く違う人だけど、笑顔の裏に何かを感じるのは気のせい……かな?
まぁ、合言葉を言えば分かるよね。
「例のアレ、ある?」
お姉さんの耳元で、そう呟く。普通の人に聞かれては都合が悪いための行動なんだと思う。
これはイントネーションや間も重要らしい。
例の・アレ・・ある?くらいの空白がいいらしい。
「こっちに来な。」
目がキッと引き締まり、黒いカーテンの先を指差す。
なんかキョロキョロ周り見てる。まぁ見られちゃダメだしね。
カーテンをくぐるとそこは予想通り暗く、揺らめく蝋燭の火がちらちらと見える。
「奴隷はこの先。獣人亜人、動物や魔物は勿論、人間だって揃ってる。」
「……へぇ。」
私は気づかれないよう、辺りを見回す。
ガン、ガンガンッ、ドンドンドンッ、ギャァァァッなど、耳をすませば聞こえてくる。
聞こえたくない音だなぁ。
「好きに見なさい。あたしがいる限り、いくらでも見ていいわ。奴隷用品もあるから、買いたければどうぞ。」
「うん、ありがとう。」
1番奥の部屋、大量の檻と鳴き声、鼻をつんざく嫌な匂い。
ほんとに色々ある。これが奴隷商……なんか怖い。多分、一生関わっちゃいけないような気がする。
「性奴隷ならこっちの陽狼族。胸や陰部が立派に育つ。そして全員美男美女。うってつけです。護衛や肉壁としてなら、魔物、情報伝達なら鳥…種類は様々。」
トントン拍子に話が進み、言葉を整理するのにやっとになる。
え、えー……?そんなマシンガントークされても、私の耳は二つしかないし、私の脳は1つだよ。
そんな一方的な会話を数分続けると、奥の奥、影に隠れた場所に何かを見つける。
檻の中で、唸り声が聞こえる。今にも噛みついてきそうな、怒りで満ちた瞳孔をしている。
元から切長の目なのか、キリッとした印象がある。
白寄りの銀髪、そして短髪。手入れされてないからかボサボサだけど、洗えば綺麗になるのは目に見える。
「あれは何?パッと見良さそうな気もするけど。」
「あぁ、アレ。」
嫌そうに目を細め、説明を始める。
「雪狼族の女の子供。顔と体はいいけど、性格が荒すぎる。人間を襲うから忌み嫌われ、こうして奴隷となる。」
「そんな悪いものなの?」
「見てれば分かる。」
黙って見つめると、「グルゥゥゥゥ……ガウッ!」と獣のように吠える。
「これでも2日、飯を抜いた。それでもこの元気。1度、性奴隷として買った変人がこいつにフ○ラでもさせてアソコを食い千切られたとか。」
お笑い種だ、とおかしそうに笑う。
フェ○とか、何そのセクハラ。
見た目的には私は好き。この中で、1番いいのはこの子かもしれない。
特にケモ耳。後ろから少し覗く尻尾とか、もふりたい。
「おすすめはできない。こんなのを買うなんて、変人しかいない。」
「じゃ、私は変人だね。私、この子買うから。」
「……そ、銀貨10枚。」
そう言って手を差し出す。
「8枚じゃだめ?こっちの奴隷道具も買ってくから。」
「……分かった。隷属の魔法印を付けるから、こっちに来て。」
奴隷用の魔道具を少しか買い、雪狼族?の入った檻を運ぶお姉さんに着いていく。
グルルルグルルル唸ってる。
ほーら、怖くないよ怖くない。
「主の血と魔力、奴隷の血と魔力、そして魔法印。それがあれば隷属の契約を繋げられる。」
無表情で布で巻かれたナイフを渡し、血を出すように言われる。
いや、今の私がナイフ程度で傷つくかな?
普通に傷つくわ、これ。この前東商でやられたばっかだった。
もちろん、あの後忘れ去られたヒールで治しましたとも。
指をナイフで薄く切り、焼き印でもするのかって感じの鉄製の印鑑(?)に落とす。
そして、氷狼族の指からも血をとる。
「あとはこれを押すだけ。」
そう言われて指定された箇所(胸部)に印を押す。
「……ア、アァァァァァァッ!!」
「えっ!?」
突然涙をこぼしながら泣き始めた。しかもめっちゃ痛そうに。
「魔法印は体の奥深くまで根を張るから、その分痛い。抵抗が強ければ強いほど、痛みが増す。」
銀貨13枚を払うと、裏口を通して返された。リードに繋がれた氷狼族と共に。
「グルゥゥゥゥ……」
私を見て唸る。
「死ねっ死ね!」
私を引っかきにかかる。が、私の防御力が高すぎるおかげで、びくともしない。
時は流れ、翌日。宿屋にて。
「どうしつけよう……」
頭を抱えていた。
今も絶賛超警戒中のこの子、なんかいいスキルなかったかな……
スキル欄に目を通す。
「身体激化、水竜之加護……って、調教?」
謎スキルを見つけた。眉を曲げ、説明を見た。
「名の通りってわけね。」
ここで、本格的にこのスキルを解説しようと思う。
この前見た説明じゃ分からなかったことも、鑑定眼で見てみたおかげで分かるようになった。
まず、私が奴隷を使う分にはレベルとステータスが加算されるとのこと。
さすが魔法使いの奴隷。
調教は常時スキルらしくて、これを持った状態で調教度(信頼や好感など)を上げると、上昇規模が上がるらしい。
これは、できるだけ早めの方がいいらしい。
「結構便利なんだ、このスキル。奴隷にしか効果ないってのは考えものだけど、奴隷に対しては効果覿面だ。」
そして、チラッと雪狼族に目を向ける。
雪狼族って言いにくいし、名前とかないのかな。
ふと疑問に思い、聞いてみる。
「ねぇ、名前は?」
「……ない。」
「じゃあ、名前付けよう。あったほうがいいでしょ。」
「……?」
短いけど、なんとなく会話ができた。
雪狼族だよね。雪に関係すること……氷、女の子……雹……
「ツララ、とかどう?」
「ツララ……」
「よし、決まりね。」
そうして、私は新たな仲間を手に入れるのであった。
調教、すごい大変そう。
買ったはいいものの、その問題がまた浮上する。
———————————————————————
ステータス
名前 ツララ
年齢 15歳
種族 雪狼族
レベル 10
攻撃250 防御180 素早さ230
魔法力110 魔力160
装備 魔力増強の指輪 付与の髪留め
魔法 氷結 氷華 雪礫 氷爪
スキル スピード補正 物理上昇
魔法少女の庇護
調教度 レベル1
果たして、ツララはソラに懐くのでしょうか。
元の種族名である氷狼族は、調べてみたら簡単に出てきたので別の名前に変更しました。
これももし他にあった場合、報告してくれると助かります。
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