魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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6章 魔法少女と奴隷商の国

181話 魔法少女は襲われる

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 人が多い。
 まさか、少女は自分たちの存在に気づいているのでは、と思ってしまう。

 彼女たちは暗殺部隊《黒蜂》の低位に位置する者たちで組まれ、幹部が1人補佐として置かれている。

 今回のターゲットは、少女。
 目の前で衆愚の目を引いている、奇抜な格好をする少女だ。

 目算、15歳ほど。特殊な訓練を受けているそぶりはない。
 だが、動きは完全に逃げている。

 曲がり、曲がり、曲がり———

 側から見れば、迷子のようにしか見えないが、本職の者から見れば人を撒こうとしている動きにしか映らない。
 そう見える時点で、苦戦を強いられる程ではない。

「今回は何秒でヤれるか。」
「今日は負けない。女王にご褒美を頂くのはわたしだ。」

「勝てるとでも?」

「えぇ。貴方たちにそう何度も負けるほど弱くないから。」

「そうですわ。負けるわけにはまいりませんもの。」
各々が、ヤル気を胸に少女を追う。

 1

————————————

 事件です。
 ただいま、4人の変人に追われています。反応は異質で、悪意の力みたいなのを感じる。

 暗殺者暗殺者してるね。
 意味分からない?知らないよ。

 今の私は喋ることもできないので、口を噤んで早歩きをする。

 うわぁ、追いかけてくるよ。変態だね。1人の幼気な魔法少女の跡をつけるなんて。

 ん?私の方が不審者で変態だって?
 ナナナのような物で殴るよ?

 あ、このネタ通じない?

 その後も追いかけっこは続く。鬼(捕まったら殺されるかもしれない)と逃げ(魔法少女)が激しい攻防ならぬ、追逃が繰り広げられる。

 だんだん互いにヒートアップしていき、いつの間にか私は走るに至っていた。

 あれ……人がいない?

 目を細めて辺りを見回すと、本当に誰もいない。
 暗殺者を巻こうとしてたら、一般人を撒いちゃった。ってね。

 なにも上手くない。

 なら、そろそろ相手してもいいんじゃない?

 殺されるかもしれないといえど、ぱっと見弱そうだ。4人くらい、今のステなら余裕だ。
 私だって、VRMMOで有名どころの武器は使ってきた。

 うむ、最近の技術はすごい。昔はVRゴーグルはあれど、仮想空間に意識を飛ばすっていうことはできなかったらしい。
 ま、今となったは何1つできないけど。

「っと、そんなことはどうでもいい。……ふぅ。ここならいいでしょ?早く出てきたら?」
気配は何1つ無いけど、万能感知にははっきり映ってるのでそう言う。

 おーい、出てくれないとただのヤバい人なんだけど?

「やはり、バレていましたか。そこまで露骨に逃げられていては、気づきもしますが。」
リーダー格そうな女性が、無表情で言い放つ。

 この人達が暗殺者……女の人なんだね。

「なんだその目は?」
ギロっと睨みを効かせてくる。

 威圧感が半端ない。

「殺してしまえば関係はないわ。」
「協力、というのは好みませんけれど、さっさと終わらせて女王の元へ帰りましょう。」

 女王?この人達のリーダー?ボス?的な人かな。

 警戒しつつも、相手を探る。ルーヴが、戦闘中も余裕があるなら情報を引き摺り出せって言ってた。
 向こうは戦闘に気がいってるから、チャンスになるって。

「始めましょう。暗殺おたわむれの時間よ。」

 私は完全に油断していた。
 相手の人数はたったの4人。いつも通り何とかなる、そう思っていた。

 この世には、ステータスでは何とかできないこともあったのだと、気付かされる。

 そう、

「……っ!?なっ、消え……」
頬に何かが擦れた。触ると、血が薄く滲む。

 斬られた?この私が?

 理解するのに時間を有する。でも、相手の攻撃は止まらない。

「空中歩行っ!トール!」
一気に空を駆け上がり、雷を分散させる。でも、その隙間を縫うように障害物を使って空に飛び上がる。

 危な……っ、今も……思考が回らない……

 縦横無尽な奇襲攻撃、その場で避けるのが精一杯で、思考を回す余裕がない。

 なにか、打開できるスキルは……

 正確無比な攻撃を、体質でなんとかできるわけがない。
 だからと言って、レールガンでもぶっ放せばこの国は終わる。そもそも避けられる可能性の方が高いまである。

 レベルが上がっても、地龍のレベルを受け継いだだけだから、スキルが増えたわけでもない。

 真横で、光が煌めく。

「危なっ!」
間一髪でナイフを避けた。

 どうすればいい?まともな魔法じゃ避けられるだけ。

 ん?まって、私が負けそうな理由って……見えないからだよね?

 ならなら、姿が見えちゃえば私は勝てるってこと。

 幸いSPは腐るほどある。

 気配察知
一定範囲内の中にいる生命、物質の形を集中することによって発見、探索が可能。

 Ⅲまで上げるとして、必要SPは450。少なめで嬉しい。

「気配察知。」
小声で呟く。

 ‥‥見える。見える!鮮明に見える。
 っと、集中力が……
 でも、今まで視界にポッカリ空白ができるみたいに見えなかった姿が、はっきりと!

「これなら、私が負ける道理は無い!」
地面に思い切り着地する。どれだけ隠れようが、今の私には丸見えだ。

「ここからは、私のターンだよ!」
まず1人。気づかないふりをして、接近してきたところに回し蹴りを食らわす。

「カッ…………ぁっ……」

「次。」
その時には、頭上にもう1人いて……

「地龍魔法、土槍。」
地面から、4本の槍が伸びて突き刺さる。

「あッ………」
血が噴き出る。

 血生臭い……でも、気にしてちゃ殺される。

 それにしても、反撃早いね……私のステの高さがまじまじと見せつけられてる感がある。

「あと2人。」
屋根の上で様子を見てるのが1人、背後に回り込んでるのが1人。

 ちょっと脅かしてやろう。くっくっくっ、驚け驚け。

「気づいてるよ?魔力喰らいー!」
漆黒の煙が立ち込め、女性は「なっ!」と困惑の言葉と共に腕で防ぐ。

 この人達は強いと思う。ま、気配があったらこっちのものだけど。

「ごめんね、ただの見せかけなんだ。」
神速で近づき、混合弾を腹に打ち込む。

「ガ、ぁぁぁ……」
みんな似たようなうめき声を上げて倒れていく。

「最後の1人。どうする?」
そう言い、後ろを振り返る。

「あれ?いない。」
さっきまで屋根で観察していた女性が、突然消えてる。

 あ、そっか。気配察知は私が察知しようと思わないと意識がいかないのか。
 万能感知は色付きの点で見ただけで分かるけど、気配察知は自動的に頭に流れるとか無いわけね。

 気をつけないとなー。と呟き、そそくさと退散する。

 理由?人殺したからに決まってるじゃん。


 その後、近隣住民からの通報で駆けつけた自警団が調査したところ、死亡しているわけでは無かったらしい。
 それを、この時の私は知る由もない。

———————————————————————

 東商編、終了。次回は西商です。
 ネタが本当にありません。暗器、毒薬しか売ってない、特に取り柄のない街なので。

 ちなみに、ソラの前世の世界線は現代より少し未来の話です。
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