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6章 魔法少女と奴隷商の国

173話 魔法少女は遭遇する

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 翌日。早朝から馬車はパッカパッカと馬が走っている。

 何故かと言うと、2日目からは魔物が多くなるからだ。実際、この馬車の周りからまぁまぁな魔物の反応を感じる。

「これ、大丈夫?魔物が並走してるけど。」
隣に座るレイティーさんに聞く。

「魔物?ここからは見えないけど?」
訝しげに私を見る。

 ま、そりゃそうだね。周りにいないものをいるとか突然言い出したら、私も「は?」ってなるもん。

「私はさっき言った通り魔法使い。魔力の流れを読んで、魔物がどこにいるかが分かるの。」
軽く説明すると、いつの間にか全員私を見ていた。それも、驚いたような顔で。

「ぼくは誘引剤を作って呼び寄せるくらいしかできないや。」
「摩訶不思議。魔法とは、不可思議なものだ。」
「勘なんていらないってか。」
「さすが、領主様に呼ばれるだけあるわね。」
口々に私の言葉の異常性を唱えてくる。

 そう、だね。私の考えは普通、おかしいんだよね。魔物なんか感じ取れませんよね。

 そんな風に、魔法少女に全身どっぷり浸かってしまったことを悲しく思ってると、御者さんの悲鳴が聞こえてくる。
 女性だからか、金切り声のようにも聞こえた。

「どうしたっ!」
ウェントが一瞬にして反応し、ドアを蹴破るようにして外に出た。そこには魔物。普通、1人では倒しきれない量。

 魔法少女、やっぱり変だよね。いや、変だから隠すとかは良くない。曝け出していこう、個性。

 一方私は、まだグダグダと思い悩んでいた。

「ソラの言う通りね。疑って悪かったわ、みんなも早く用意しなさい!」
「言われるまでもなき事。」
鎧が擦れる音が聞こえたかと思えば、目の前から消えていた。

 ………って!何事?

 何を今更、と言うツッコミを、今回ばかりは入れて欲しい。

「調合、化合、結合。薬品生成!〈分散毒〉!」
フラスコに入った紫の得体を投擲すると、10数体以上の魔物の中心で割れる。その時。

「ナイスタイミング、トイン!」
何かが一閃を加えた。瞬く間に1匹の魔物が、血潮をあげていた。

「おらぁっ!」
その直後、轟音と共に土が穿たれた。

 えっ、これ私も何かしたほうがいいかな?そうとは言ってもどうすればいいんだろう。

「ワタシも参加しますわ。こんな魔物ども、相手にもなりません。」
八卦路をいくつか繋げたような形をした魔道具を持ち、腕を伸ばす。

「ホーミングレーザー!」
周囲の魔力が集まるのを感じる。その瞬間、いくつものレーザーが放たれ、魔物に迫る。もちろん、逃げる魔物は追いかけられる。

 それでも魔物は倒しきれない、か。やっぱり普通の冒険者が、一気に倒し切るなんてできないのかな。

「くっ、さすがにこれじゃあ倒せないか。」
ウェントが悔しそうに一言呟く。

 よし、私もやってやろうかね。さて、ここまでサボってきたツケが回ってきたってことだね。

「ウェント、そこどいて。」
「はぁ?お前は隠れて……」

 なぁーに言ってんだか。自分が誰に負けたか、まだ分かってないの?

「大丈夫。私は、天下無双の魔法少女だから。」
ウェントの巨大な槌鎌を踏み台にし、跳び上がる。

 目測12、3匹。万能感知。隠れて後5匹。余裕。隠れてるのは、来なければ対処の必要なし、と。

「ソラッ!危険よ、1人でそんな数……」
レイティーさんは手を伸ばし、声を張り上げる。御者さんは怯えているようで、トラウマにならないといいな、と感じる。

 混合弾、流星光槍。各10発ずつ。計20発……ついでにトールも入れとこう。

「心配無いよ。もうすぐ、終わるから。」
ステッキを振る。既に現れていた魔弾たちが、一斉に放たれる。ドドドドドッ、と強い衝撃が起きた後、そこにはボロボロで息耐えた魔物だけだった。

 ふぅーっ、働いた働いた。別に特別苦労したわけじゃないけど。
 でも、ほかの転生者よりかは苦労してるよ?主に服装で!

 もう1ついうと、私は魔導法で魔法を理解して使ってる。スキルを使ってポンっと出てくるわけじゃない、っていうのもある。

 その辺、私の努力が見えるね。

「これが、魔法?」
「まぁ、その一端かな。」
レイティーさんは地面に着地した私を、信じられないような目で見ている。

 そんな風に見ても何も変わらないよ……なんかこそばゆいからやめて。

「苦労して戦った相手。こうもあっさり倒されてしまうとは、驚愕だ。」
「どう言った原理なんですか?調合と組み合わせられますか?」

「ちょっと、ぐいぐい来ないで!」
ステータスゴリ押しで2人を引き剥がし、壊されたドアを一級建築士の私が直してあげていた。 

「これで分かった?私の強さ。魔法は、大抵魔力に依存するから弱く見えるだけ。」
直した後、ついでに御者さんの心のケアをして中に座った。途中、「隣にいてくれませんか?」と愛の告白(?)を貰ったけど、丁重にお断りしてきた。

 だって、気まずいじゃん?

「これからも魔物は増えるだろうけど、ヤバいのが出たら私が相手する。それ以外は、好きに狩っといて。」
「了解した。強き者に従うことも、また一興。」
「俺は好きにさせてもらうぞ。」
そんなこんなで、一応は魔物の脅威も去った。これからまだまだ足止めはされるだろうけど、何とかやっていこう。

 ちなみにレイティーさんは、「ここまで安心できる馬車の旅は無いわ」と言っていた。
 他人任せにする気満々じゃん。いいけど。

 魔道具師レイティーさんの実力は、まだよく分からなかった。
 これからの活躍を期待したい。

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 魔法少女、いきなりの無双ぶり。ほかの方々も頑張ってもらいたいですね。

 時間が死ぬほど無かったので、見直しが不完全ですけど……許してくださいニャン☆(うざい)
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