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6章 魔法少女と奴隷商の国
170話 魔法少女と新依頼
しおりを挟むとんでもない静寂がギルド内を包む。
人っ子一人いない。
何でだろう、そんなことを思いつつ、ギルドの奥に向かって歩き始めた。
「冒険者ランクもついでにあげたいんだけどー!ギルマスーいないのー!」
そんな風に叫んでいると、奥から人影が現れる。
あ、ようやくギルマスが来た……
まったく、遅いよギルマス。
「ようやく来た。要件とランクアップ、早くお願……い……?」
「お前が1番か。書き方が悪かったか?まぁ、ゆっくりしていってくれ。」
そうつらつらと語る男性がいた。青みがかった髪、厳かな雰囲気を纏う服装。
———フィリオだった。
何でここにフィリオがいるの!?えっ、私、ギルマスに呼ばれたよね?
そんな風に困惑していると、フィリオが「あぁ」と納得したように口を開いた。
「今回の任務は重要で、かつ機密事項だ。信頼にたり得る人間にしか話すことができない。だから、人払いをし、俺がここに来た。」
淡々と理由を説明し、薄い笑みを浮かべた。
最初からそれ、言ってよ。断ってたし。っていうか、ほんとに誰もいないんだ。
急ぐ必要、無かったじゃん。
「損した気分……」そんな独り言をこぼしつつ、ギルド内を歩き回った。
「ランクアップの権限は、俺にもある。ほら、ギルドカードを出してくれ。」
「あ、フィリオもやっていいんだ。」
ギルドカードを渡すと、何か細工するように指を動かし、渡してくる。
……何した?何した、今。えっ、細工したよね、絶対。
Aランク冒険者ともなると、見慣れたものだからね。ランクアップの方法とかも。
だからね、分かるの。
「ねぇ、何したの?」
「……?何もしてないが?」
惚ける気らしい。
はいはい、しらばっくれるんだねー。
仕方ない。嘘が露見した頃に問い詰めるとしよう。
「もういいから、もう私はぶらぶらしてていい?集まるまで暇だし。」
「はしゃぎ過ぎなければな。」
一応許可が出たので、好きに遊ぶことにする。
そんなこんなで、いくらかの時が過ぎた。
ギルマスは最初からいたのか、面白そうに笑みを浮かべて部屋から出てきたり、何人もの冒険者が、やってきた。
どれもベテランそうで、凄そうだった。
「領主様がいるが、これは一応機密事項だから同伴しているだけだからな。」
そう始め、依頼について話し始める。
「今回の依頼。それは、小国エンヴェルについてだ。知っての通り、奴隷の商売が有名だな。」
奴隷?なにそれ、奴隷の商売が有名?そんなもの有名でいいの!?
私の困惑をよそに、話は進んでいく。
「周知の事実だろうが、一応説明しておこう。」
そこで説明されたことを、簡単にまとめるとこうなる。
奴隷商の国、エンヴェルは北商、東商、西商、南商、と4つに分かれていて、それぞれ得意とするものが違うらしい。
順に、暴力。暗殺。暗器、毒薬。奴隷。
そしてギルマスは言った。
「魔物襲来の首謀者が、奴隷商の国の奴等の可能性がある」と。
「で、領主の選んだ冒険者達を連れて、潜入調査に入ってもらいたいわけだ。」
そういうと、私合わせて5人のうち1人が、手を上げて聞く。
「この妙な格好した女もその1人なのか?」
「あぁ。そうだとも。」
訝しげな表情になり、私の方を見る。
「こんな奴が武器を振りわせるとは思えないんだが?」
「魔法使いだ。その点は理解してやってくれ。」
「「「魔法使い!?」」」
その言葉に驚く冒険者達。
魔法ってそんな弱い設定なの?こんな便利なのに、人間の魔力適当能力が低いせいで弱く見られるなんて……酷いこともあるもんだね。
「その程度で驚いてちゃ、冒険者なんてやってらんないわよ。」
やる気のなさそうな、気だるげな女性が頬杖をかいてそう言う。
「アンタたち。冒険者をやる上で、イレギュラーがいるくらいでギャーギャー騒いでたら、竜クラスなんてとても相手にできないわよ?少しは落ち着きなさい。」
その言葉に、意義を唱えたいと言わんばかりに表情を険しくするさっきの男。
「少し実力があるからってお高く止まって、『私は大人』アピールか?」
「領主様の前だ。静かにしたまえ。」
「話し合いが成立しないよ。トインの言う通り、静かにしよう?」
やたらと大きい鎧をつけた、髭を蓄えた男と、小柄な少年がそう言った。
なにここ。冒険者ギルドでは絶対喧嘩しないといけないルールとかあるわけ?
そんな脳内ツッコミを入れてる時だった。
「お前が原因なくせに、何で一言も喋らないんだ。」
怒りの矛先が私に向いた。
はぁ?あんたが先に話を広げたんじゃん!何で私がそんなことで八つ当たりされなきゃいけないの?
少し怒りが芽生えたので、口論という暴力を行使することにする。
「私が原因?一言すら喋らず、ただ座ってた私がどう原因になるの?」
「え、は?」
突然言い返され、キョドっている。でも、私は口を閉じない。
「勝手に驚いて、正論言われて、ムキになってうるさくなったお子様が、一丁前に怒らないでくれる?怒るのは勝手だよ?でも、怒りの矛先は間違えないで。」
「その程度にしておけ、ソラ。」
フィリオに止められ、仕方なく口を止めてあげる。
チラッと男を見ると、半泣きになっていた。
ぷっ、魔法少女に言い負かされて、泣きかける大人……、ちょ、笑いが……
耐えきれず、小さく噴き出してしまう。
「何笑ってるんだ!」
「いや、面白くて。」
周りの冒険者たちもくすくすと笑っていて、女性に関しては、腹が捩れるくらいに笑ってた。
「年下に口論で負けて、泣くって……あっはっはっはっはっ!笑い物だわ。」
笑いすぎにより出た涙を拭き、男を見上げる。
「……………」
わなわなとする男は、とうとう限界が来たのかこう叫ぶ。
「決闘しろ!俺より強いことを示してみろ!」
結果、ギルマスフィリオ含め、全員が笑った。
———————————————————————
弱そうですね、この男。
ちなみに名前はウェントです。装備がゴツいのはトイン、少年がライ、女性がレイティーです。
何度戦ったら気が済むんでしょうかね。ちなみに次回はポ○モンに出てくる戦う時のフィールドは出てきません。
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