魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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6章 魔法少女と奴隷商の国

167話 魔法少女は奴隷を見かける

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 人もだいぶ増えてきて、そろそろロア達を帰そうと思ってアパートの方向に歩き出す。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん!こっちのこみちを通れば、近道なんだよ!」
「サキ!勝手に行っちゃダメだよ!ソラお姉ちゃんに迷惑かけちゃうよ!」
ロアは声を張り、サキを叱る。でも、サキは止まらなかった。はぁ、とため息を吐くロア。

 大変だね、お姉ちゃんっていうのも。姉妹も兄弟もいなかったから、姉の大変さをよく知らないんだよね。
 なんて声をかけるのが得策か……

「別に、迷惑とは思ってないからね。後でちゃんと叱ってあげればいいんだし、好きにさせてあげよ?サキも悪気があるわけじゃないんだし。」
「ソラお姉ちゃん……やっぱり、ソラお姉ちゃんは甘々です。………でも、そんなソラお姉ちゃんが大好きです……」

「ん?」
「何でもありません。」
「えー、気になるー」と子供っぽく言ってみると、ロアはおかしそうに笑う。

 何で言ったんだろ。もしかして、悪口とか……?

「サキが心配なので、早く行きませんか?」
「うん、そうだね。」
同意しつつ、サキの走っていった小路を進む。

 サキの位置は魔力感知で把握してる。弱体化が無い私が、その程度のこともできないわけがない。

 他の反応もポツポツあるけど、サキに何かするそぶりもないので、無視をしておく。

「サキー!そんな早く行ったって、私達着いて来れないよー。」
軽く小走りで、少し遠くのサキに声をかけるも、反応がない。

「お姉ちゃん。あれ……」
サキの元に辿り着くと、何故か目の前を指差していた。何かと思い、その方向に目を向けると、そこには2人の人影……いや、1人の人間と、獣人らしき子供がいた。

 何あれ、首輪?しかもボロボロの服に、煤のついた顔。しかもあざだらけ。
 まさか、これ……

「サキ、ロア、声を出さないで。」
2人の口を塞ぎ、小路の脇に入る。横目で観察し、過ぎ去るまで待つ。

「おい、さっさと歩け!」
「……………」

「俺はいつだってお前を、あの掃き溜めに送り返すことだってできるんだぞ!」
「…………ッ!」
そんな短い会話が行われ、獣人のほうは怯えた様子で歩き出した。そのまま小路から2人は出ていき、ホッと胸を撫で下ろした。

 はぁ、危なかった。あのままだったらやばいことになりそうだったし、隠れて正解だったね。

「お姉ちゃん?」
「もう大丈夫だよ。」
手を離し、小路に戻る。

 あれって、もしかしなくても奴隷。あんな悲惨なことになってるんだね、奴隷って。

 さっきの獣人を思い出し、考えてみる。

 私が知ってる奴隷は、アニメとかで見る獣人やら亜人を売ったりするやつで、現実では黒人が白人に捕らえられて、船で運ばれて売られるやつ。

 どの奴隷を見ても、残酷な運命しか残ってない。主人公の奴隷の場合、人生(獣生?)逆転できるかもしれないけど、そんなの少数にも満たない。

「ソラお姉ちゃん、今のは……」
「気にしなくていいよ。ただ、この近く……というより、この小路はあんまり使わない方がいいかな。」
さすがに子供に奴隷を教えるのは教育によろしくないと思い、誤魔化してみる。

「やっぱり、奴隷……だったんですか?」
「えっ!?」
耳元でそう言われる。せっかく誤魔化したのに、既に知っていたことに驚いて声が出た。

「そうなんですね。………サキ!もうこの道は通っちゃダメだよ!」

「えぇ~近道なのにー!」
「危ないから!危険な目に遭うかもしれないのに、近道なんてする必要ないよ!」
何度か口論が続いたけど、少し経ってサキが「はぁーい」と言って、この話は終わった。

 小路を出て、普通の道を通ってアパートに帰した。
 2人にバイバイ、と手を振ると、可愛く振り返してくれた。可愛い。

 気をつけてください、と言われたので、変質者に会わないように帰ろうと思った。

 ん?それは不可能?何言ってんの。え?私自身が変質者だから、既に会ってるようなもの?
 ……黙りなさい。

「それにしても、奴隷……ねぇ。この世界にもやっぱいるんだね、奴隷って。」
ふとあの獣人のことがフラッシュバックし、また呟く。

 あの奴隷も、これから大変そうだね。あんな主人に捕まっちゃって。
 私なら即刻自害だよ、自害。

「人間も残酷だねー。あ、夕ご飯の食材買っておこう。加工品だけは出ないからね。」

 肉なんて出した頃には、ウルフがそのままやってくるからね。何か加工が施されていたら、生成できないんだよ。

 近くのパン屋や肉屋により、美味しそうなパンを一通り買い、収納。新鮮そうな肉を買って、収納する。

「いくら買ったって、無駄になることがないからいいよね。この収納機能。」
独り言のように言い、ステッキを空に上げる。

 やっぱり、魔法少女チートはすごい。見た目は置いといて、神様を除いて最強だよ。

 魔法少女の強さを再確認しながら、冒険者ギルドの裏手を目指して歩く。
 巨大な家が覗き、「すごいもの作っちゃったなぁ」と思いつつ丘を登る。

「この装備、疲れにくくていい。コートさえ羽織ってれば見えないから、永遠にこの服でいいよ。」
1度決意したはずなのに、心が揺らぎまくっている私であった。

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 今回短めです。そろそろ本題にも入る頃。今はまだ前段階なので許してください。
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