魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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6章 魔法少女と奴隷商の国

166話 魔法少女は保留にする

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「で、どうしてここなの?」
レストランを探していたはずの私が今いる場所は、いつもの宿屋のいつもの席。目の前にはエリーがいる。

 どうしてって、そりゃあ……

「「「おいしいから。」」」
3人の声が合わさり、エリーがなんとも言えない複雑な顔をしていた。

「嬉しいよ?ソラたちに美味しいって言ってくれるのは、とっても嬉しいんだけど……レストランを探してたんじゃなかったの?」

「まぁ、そうだけど。」
そう呟きながら、ここに来ることになった成り行きを思い返すことにした。


「ロア、どこ行きたい?」
「特には……ソラお姉ちゃんがいいなら、どこでもいいですよ?」

「お姉ちゃーん!美味しそう美味しそう!」
「サキ、かき氷はご飯を食べたあとだよ。」

「サキはどこか行きたいところは?」

「んー、かき氷っ!」

「……かき氷は場所じゃないよ、サキ?」

 話が一向に進まなかった。どうしようかと考えてると、ロアが口を開いた。

「そっ、ソラお姉ちゃんが、朝言っていた宿屋のご飯でも食べに行きませんか?」

「あっ、それいいね。エリーのご飯は美味しいし。」

「そうなの?行く行く!」


「って感じ。」
「どう言う感じなの!?」
少しカウンターに乗り出し気味に、困惑した様子で言ってくる。

 どういう感じ?こういう感じ。

「美味しいんだからいいでしょ?」
「………ありがと。」
そう呟き、調理に取り掛かる。

 やったー、久々のエリーのご飯だー。まぁ1日ぶりだけど。

「それで、あのお家には他に何を作るんですか?」
ロアが私に聞いてくる。

「そうだね。今のところは保留かな。」
「ですね。今はお花畑で十分ですね。」
そんな会話をしていると、調理中のエリーが驚いたように近づいてきた。パスタと共に。

「完成したの!?昨日の今日だよ?なに、ソラは神様だったりするの?」
「違うよ。神はもっとすごいよ。……私よりも、ずっとね。」
何故だか訝しげに私を見るエリーに私は人間だよ、とジト目で反論する。すると、なにかが吹っ切れたように笑い出し、「はい、注文のトマトパスタ」と言って渡してくる。

「なんで笑うのさ。まぁ、いいけど。今日も美味しそうだね、さっすがエリー。」

「もちろん、私だから。お母さん直伝の味は最高でしょう?あ、2人の分を用意しないとね。」
出されたのは、サンドイッチといった軽食系のもので、サキはそれをバクバクと頬張っていた。

 サキも、大人になったらロアみたいになるのかな?それはそれで可愛いけど、今のサキの元気さが無くなったら、悲しいかも。

 この街に、まだ3ヶ月くらいしか住んでいない私が、そんな未来を想像する。

「でも、ソラお姉ちゃんは本当に神様みたいですよね。ソラお姉ちゃんは、なんでもできちゃいます。」
さっきの話の続きか、ロアがそう口にする。

 確かに魔法少女はチート級だよ?でも、神様とは程遠い。神様の力の一部、他の神からすればイレギュラーかもだけど、それでもまだ弱い。

 人神との戦いで思い知らされた。
 強かった、強すぎた。たった1発蹴りを食らった。それだけで、私は壁にめり込み、血を吐いた。

「私は万能じゃない。できることしかできないよ。」
小さく呟いた。

 『凄い、凄い、有り得ないよ。余をここまで追い詰めるなんて。でもさ、やられるなんてもっと有り得ないんだよ』
 『余の勝ちだ』

 頭の中で木霊する。別に人神は悪い神じゃない。でも、その1戦で刻み込まれた恐怖や苦痛を、忘れることはできなかった。

 そこにあったのは、目に見えないほど遥かに上の、ヒエラルキーの頂点の姿だった。

「今の私じゃ、神様の足元すら見えないよ。」

「ソラ……お姉ちゃん?」
声のトーンが下がった私が気になるのか、心配そうな瞳を向けていた。

「ごめん、暗い話っぽくなっちゃって。ほら、冷めないうちに食べよ。」

「……ソラお姉ちゃん、冷めるものなんてありません。どうしちゃったんですか?ほんとに。」
憂慮な感情が見え、余計な心配をかけちゃったかな、と面目が無くなる。

 神様関連、前世関連の話はあんまり出さないようにしよう。自分の感情がどう動くか、私でも分からなくなっちゃうから。

「色々あって疲れてるだけ。家作りとかもあったし……暑い中、私。よく頑張ったぞー!」
謎のセリフを吐き、パスタを一気に啜る。そしてむせる。

 うん、それはもう勢いよくむせたね。ごほっ、がはっ、はぁ……と咳き込み、トマトソースが飛んだ。

「もっとゆっくり食べな、前も似たようなことあったでしょ?」
「そんなの毎回あったら、たまったもんじゃないよ!こんなこと今を除いて、1度もない!」
力強く訴えると、クスッと笑いをこぼし、「ソラはそうじゃなきゃ」と言う。

「そうですよ、ソラお姉ちゃんは元気が1番です。」
「お姉ちゃんはお姉ちゃんが1番だよ!」

「そうだね。」
ニコッと微笑み、こぼしたソースを拭く。

 そうだね、やっぱり私は今の感じのノリじゃないとね。サキのはよく分からないけど、まぁ私は私でいてねってことだろう。
 よーっし、気を取り直して、パスタでも食べよ。

 そのあとはこぼすことも咳き込む事もなく、安全にパスタを食べ切った。
 その頃には2人も完食し、満足げな表情だった。

「突然お邪魔してごめんね、また来るよ。」
「何も思ってないから大丈夫。どんどん来てね、待ってるから。」
宿屋から出て、2人を家に帰そうと歩き出す。特にやることは無いので、暇つぶしみたいなものになってる。

 ロア達返したら、ほんと何しよう。

———————————————————————

 人神との戦いを思い返すソラ、ボッコボコでしたね。

 ちなみに、神の最強キャラランキングは1位から順に創滅神、ルー、ヴァルディート、エディレン、ミュールです。

 一概には言えませんが、なんの干渉も自身の権能も効かない場所で、正々堂々戦った場合はこうなります。
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