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5章 魔法少女と魔物襲来
閑話 定期神集会(後編)
しおりを挟む「……やはり、多少危険を冒しても殺した方がいい。龍がここまで殺されるなど、言語道断。」
ルーが初めに声を上げた。
エディレンはルーに目を向け、その言葉を脳に整理する。
「創滅神のことはどうする?特異転生者は彼女が転生させた。勝手に殺して、大丈夫?」
そう言って、ルーに目を向ける。
ミュールがエディレンの元までやって来て、肩に手を乗せた。
エディレンは顔を顰めつつ、諦める。
流石、神。とてつもない膂力を持ち、肩を抉るような痛みを感じる。何があっても話すつもりはないらしい。
「そうよぉ?創滅神が怒りでもすれば、ワタクシたちは簡単に潰されちゃうよぉ?」
ニコニコと微笑を浮かべ、ルーを見つめた。
「…………一理ある。」
ルーは小さく頷き、口をまた噤む。先程までの喋りが嘘のように、なにも口を開かなかった。
「はぁ。話が平行線だよ。ボクは殺そうが殺すまいが関係ない。強いて言うなら、様子見かな?」
漆黒の髪を持つ青年、ヴァルディートは不遜な表情で笑っていた。
エディレンは、「ヴァル、もっとちゃんと考えて」もヴァルディートに声をかけると、「ボクはいたって真面目だよ」と返される。
「まぁいい。まとめると、殺す殺さないに1票ずつ、余は監視、ヴァルはほっとく、と。結局のところ、水掛け論ってとこか。」
四神全員の意見が食い違い、全員の妥協点を探るしかなくなった。
エディレンは口に出さないが、さっき自身が転生させた転生者が1人死んだ。
それも、能力が奪われた状態で。
「ま、どうなろうとボクはいいよ。城なんかを壊されちゃったら、怒っちゃうかもしれないけど。」
ニッと口角を上げ、その手を紫紺に染めた。
エディレンは「げっ」と呟き、立体魔法陣を組み立てて、ヴァルディートの紫紺の手を包み込んだ。
「何するの、エディー。」
立体魔法陣を見つめ、エディレンに一瞥をくれる。
「危険すぎるから封じただけ。さっさと話を続けるから。」
「話すって言っても、話すことはないでしょ。意見が一方通行なんだから。」
「だからぁ、それを話し合うって言う話でしょぉー?」
「………………そうだ。妥協点を探るべきだ。」
3対1。話し合いは続行する。
ヴァルディートを除き、エディレン、ミュール、ルーでの話し合いが始まる。
言葉を重ね、譲歩し合い、3人+αの妥協点を探り合っていた。
白熱することはなかったが、ある程度の時間話し合っていた。
その間、ヴァルディートは眠そうに欠伸をするが、エディレンが睨みを効かせてその都度起こした。
「…………………交代で監視体制を敷き、大事があればすぐに対処、場合によっては殺す。…………それが1番か。」
「そうねぇ、それがいいわねぇ。」
ミュールが間伸びした声で同意し、ようやくエディレンの肩から手を離した。
ようやく話の終わりが見えて来たことで、エディレンは一息ついた。
一癖も二癖もあるここでは、エディレンもまともな神のうちに含まれる。この神達のまとめ役は、骨が折れる。
「じゃあ、まず誰が監視する?」
「はいはぁーい、ワタクシがやりますよぉ。」
豊満なバストを揺らし、跳ねながら手を挙げている。
「よし、決まりだ」と手を叩き、そのまま順番を決めていく。
順番は、ミュール、ルー、エディレン、ヴァルディートの順となった。
ミュールは人型である自身が赴き、ルーは龍の持つ特殊な眼で追い、エディレンは転生者の目を盗み見て、ヴァルディートは魔法線を繋げ、自宅のテレビと繋げるという。
「もう決まったね。なら、ボクは一足先に帰らせてもらうよ。」
「えぇ、また今度ねぇ。」
「…………うっかりと国を滅ぼさぬよう、気をつけろ。」
「うるさい。ルーの爺さんこそ、くたばるなよ。」
振り返らず、後ろ向きで手を挙げて帰る。
ようやく静かになり、息を吐く。
「お疲れさまぁ。よく頑張ったわね、レンちゃん。」
「そのレンちゃんっていうの、やめてくれない?普通にエディーとかでいい。」
「えぇー、つれないなぁ。」
いつもニコニコと笑みを貼り付けるミュールを、不思議に思いながら紅茶を飲む。
空という転生者が、なぜか使っていた自身のティーセットを取り出し、紅茶を注いで飲んだ。
久しぶりに飲む紅茶は、より美味しく感じた。
「ねぇ、転生者ってどういう見た目だったのぉ?」
ゆっくりと紅茶を味わっていると、そんな疑問を投げかけられた。
「多少顔は整っていた。海でよく見えなかったけど、何かを恨んでいるような顔をしてた。」
あの日のことを思い出し、浮かんだ特徴を口にする。
「ふーん、もう1人の子は?」
自分で聞いて来たが、反応は薄かった。図太いな、と考えつつも、疑問に答えようと口を開いた。
「……たしか、コートみたいなフード付きの服を被って、中はミュールの布面積よりかはうん倍マシだけど、結構攻めた服だった。」
「気になるわねぇ。1回見てみたいわぁ。」
「いつか会えるんじゃない。彼女、神に会いたがってるし、ミュールにもいつか会いにいくと思うよ。」
そう、にべもなく告げると、「きゃー、ワタクシ、有名人なのかしらぁ」と、訳の分からないことを口にしていた。
ルーはいつの間にか帰宅しており、この場にはエディレンとミュールの2人しかいない。
「いっぱいレンちゃんとお話しできたし、もうワタクシは満足だわぁ。また会いましょう?」
優艶に手を振り、最後まで色香を撒き散らしていた。
1人になったエディレンは、暫く拠点探しに翻弄しなければいけないことを思い出し、1人ため息を吐いた。
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5章、完!
そして明日からは6章の開幕です。
応援ありがとうございます!
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