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5章 魔法少女と魔物襲来
160話 魔法少女は土地を貰う
しおりを挟むグッバイした後、すぐに私は宿屋に戻ろうとした。
その時、目の前にロアの姿が映る。
「ソラお姉ちゃん?」
「ロア?」
私はロアの前に近づき、久しぶり、と笑う。
「久しぶりって、数日ぶりですよ。って、それより、さっきネル様がソラお姉ちゃんを探してたよ?」
「ネルが?」
ここ最近、ネルはよく私を探してる気がする。眉を上げて、なんだろうと考える。
……まさか、フィリオの使い魔ならぬ、使い人っ!?
「じゃあ、ネルと合流してから行くから、また後で。何かあったら、私に言うんだよ?」
「はい。わかりました!」
うんうん、素直でいいことだ。やっぱりロアはこうでなくちゃ。
犯罪じみたセリフだけど、子供は癒されるね。かわいい。
手を振り、ネルを探すことにした。
「うーん、万能感知。」
覚醒の悪影響のせいで、うまく感知できない。まぁ、ネルを見つけるくらいなら余裕だけど。
ネルの魔力反応を見つけ、私はその方向に向けて歩き出す。
えーっと、ネルネルネル……っと。……練って美味しい知育菓子の商品名みたいだね。
「あっ、いた。おーい!」
ネルを見つけたので、手を振ってみる。街の人達とはオーラが違うから、すごく分かりやすい。
「……っ、ソラさん?」
大声を出すのではなく、ゆっくり近づいてくる。
私みたいに、叫んで呼ぶようなまねはしないってことだ……流石は領主の娘。貴族だね。
「ロアが、ネルが私を探してるって言ってたけど、何かあったの?」
近くまで歩いてきたネルに、そう尋ねてみる。
「いえ……別に、探しているわけではないのですが、お父様が、『ソラが逃げたら捕縛してくれ』と仰っていましたので。」
「ほっ、捕縛……?」
捕縛って何?なんで私が捕まえられなくちゃいけないの。
「ソラさんには、ランクアップの他に贈り物があるそうです。なので、もし逃げたら、捕まえてお父様の元へ連れて行くよう言われおります。」
「お金とランク以外、何かあるの?私、武器とか要らないよ?」
「いえ。そういう物では無いと言っていました。」
ならどういう物なの?という気持ちが、無いでもないけど、顔には出さずに相槌を打つ。
「それでは、着いてきてもらいますよ。逃げてはダメですからね?」
しっかりと私の手を掴んでくるあたり、本当に逃す気はないらしい。
やろうと思えば簡単に逃げられるんだけどね。さすがにやめておこう。
主に、私が嫌われないために。
そのまま仕方なく、表彰式で賑やかなこの場所までやってくる。広間みたいなところだけど、人が集って結構邪魔くさい。
「もういないんじゃない?ぱっと見見当たらないし。家に戻った方が……」
「まだいるはずなんですけど……待機部屋にいるのでしょうか?」
部屋というより、ちょっとした空間くらいの場所だったけどね。
まぁ、探していなかったらフィリオの家にでもお邪魔しますか。
「お父様!」
「ネルか。連れてきてくれたのか、ありがとう。」
頭を撫でるフィリオがいた。
いや、いるんかーい!領主さんがこんなとこにいていいの?お家戻りなよ。
その光景を、ただ眺めていた。すると、フィリオがこっちを振り向く。
詰問でもしれそうだ……帰りたい。
「で、なんで逃げたんだ?」
「ちょ、ちょっと、ランクアップに……?」
「嘘ですね。あの方角は、宿屋に向かっていました。」
「や、やだなー」と誤魔化しながら、話を逸らそうと話題を探す。
「はぁ。隠す必要は無い。何もお前を叱ろうというわけじゃないんだ。今回のソラ功績は大きい。何か1つ、俺にできることならなんでもしてやる。」
優しい父親風を出して、話をする。なんだか意外で、少し驚いたような表情になる。
こんなの、フィリオらしくない。‥‥じゃなくて。なんでも、かぁ。
一呼吸置いて、ゆっくりと口を開いた。
「うーん、なら土地をちょうだい。土地。」
フッと笑って、そう言った。
普通に買おうと思ってたけど、貰えるものは貰っとこう。余ったお金は、貯金でもしておけばいい。
「そんなのでいいのか?なんなら屋敷の1つや2つ、用意してやってもいいが。」
「要らないよ、そんなの。あ、ちなみに場所は、冒険者ギルドに近くて、目立ちにくくて、少し広めがいいかな。」
少し条件が多い気がするけど、笑顔で誤魔化す。
「分かった、探しておこう。ギルドの裏手には小高い丘があるからな、そこなら人も少なければ色々な場所にも近い。問題は登りと降りだが、ソラなら大丈夫だろ。」
問題ないと言わんばかりに、良さそうな場所の目処が立って頷いてる。
移動が大変ってこと?問題無いけど、めんどくさくない?いちいちプチ登山しろって?
我が儘言いすぎたって、いいことはないので諦める。フィリオにだって都合はある。タダなだけ感謝しよう。
それから、ここで重要な手続き書みたいなのにサインさせられ、帰宅を許された。
「まったく、余計に疲れたよ。」
「すみません。明日にすればよかったですね。」
申し訳なさそうにするネルに、「大丈夫だよ」と一言かける。
「ここまででいいですよ。あとは1人で帰れます。」
「うん、じゃあね。」
「はい、さようなら!」
元気よく手を振ったあと、歩き出した。
子供っぽさもあるけど、段々大人になっていて……私は嬉しいよ。
初めて会った頃よりも、いろんな意味で大人になってる気がするな。
親のようなことを思いながら、そういえば上着を買い替えたいことを思い出し、いつものお店に向かおうとまた歩き始める。
「ちょっと高くてもいいから、もう少し魔力に耐えられるのが欲しいね。」
どういうのがあるか、頭の中で思い浮かべる。
「よーし、買いに行きますか。」
私は、グーッと大きく上に腕を伸ばした。
———————————————————————
だいぶ前にも言った、服装を変えようって話、ようやく書けます。
より不審者感を出していきますので、よろしくお願いします。
ソラ「もっとマシな見た目ないの?」
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